十五話 『愚痴話』

あの、衝撃的な告白から三日が経った。



前まではうざったくて女好きだと思っていた春人が男が好きな上に、相手が彼女持ちだと言うことを知って同情してしまった。



しかも相手は双子の姉だ。近くでイチャイチャしているのを見ているのは辛いだろう。身内のイチャイチャとか1番見たくないのに。



「(……そう思うと何かかわいいかも)」



春人の意外な一面を見てカナはほんわかとした気持ちになっていたし、あれもこれも全部和馬という男を忘れるためにしていることだと思うと愛しささえ覚えてきた。



「……性格悪いわ、あんた」



まぁ、そのことを本人に伝えたらこう言われてしまったわけだが。カナ自身も性格が悪いことは自覚しているが、春人には言われたくはない。



「あんたも性格が悪いからお互い様よ。……それよりもさ、今回のパーティー春香ちゃんも来るらしいじゃない!」



今までこういったパーティーには不参加だった春香が何故か今回のパーティーに参加することになったのだ。噂では父親が参加させないようにしていたとか。



「ああ、そうさ。親父は過保護だからな。春香にだけ特別扱いさ」



「……特別扱い……?春香ちゃんにだけ高いものを買ってくるとか?それとも……」



「それもあるけど……まぁ、春香が羨ましいと思った時期は少しだけあるけど、電話を断られたぐらいでヘリコプターで学校に乗り込んでくるような馬鹿な父親に特別扱い……というか、執着されたくはないから逆に今は春香には感謝してるよ。父親の部分だけは。和馬とはささっと別れろって思ってるけど」



「……へ、ヘリコプターって…春香ちゃんブチギレだったんじゃないの?」



「ああ、ブチギレてた。あの日以来、部下が親父抑えてるらしいけど」



「……うわ……っ。引くわ……」



春人と春香の父親――ハンサムでカッコいい、と思っていたのにこんなところでイメージが崩れてしまうなんて……。



「俺も引いた。だからあの時は心の底から安心したよ。ああ、執着されなくて良かったーってね!」



「……そ、そう……」



確かにカナも思ってしまいそうだ。ヘリコプターで学校に乗り込んできて娘に会いに来るとか怖い以外の何者でもないし、恥ずかしさしかないだろう。



「にしてもさー、お前はいいの?透だっけ?そいつに恋心抱いてるんだろ?透って奴はうちの担任の茜先生に恋心を向けてるみたいって言ってたけど」



「え?ええ、そうね。私は絶対に振り向かせてみせるわ!だって十年間も片思いしてたのよ?今更諦められるわけがないじゃない!」



「……ふーん。俺は十年間じゃなくて三年前だから年季が違うな」



「…三年前なんだ。つまり、中二から……?」



「うん。まあ、そんな感じかな。いやー、懐かしいなぁ」



恋をして、恋人になって結婚して、そして家族になる。男同士だと子供ができないが、それでも一生一緒にいるのならそれが一番幸せだと思う。



それに子供ができなくても幸せな家庭を築く方法はいくらでもあるはずだ。



「でも、あんたが好きな人は……彼女がいる上に双子の姉。……辛かったでしょうね?」



「そうだな。だからささっと別れてくれなきゃ俺はいつまでも春香と……」



「………」



気持ちはカナにもわかる。ボロが出てくるぐらいなら。離れて嫌っているふりをする方がずっと楽だし、傷つかない方法かもしれない。



「そうね。私も茜先生のこと嫌いだから。……先生としては尊敬してるけど」



「ふーん。ま、恋敵なんだから当然だよな。……あ、そろそろ寝るか。明日、パーティとかいう面倒くさいことしねーといけねーし。しかも春香と和馬まで来るし……」



「どんまい。でも、春香ちゃんのこと溺愛してる父親がいるんだから氷室君、近づけないんじゃ?」



「……言われてみればそうかもしれねーな」



……春人はそう言つつ、自分の部屋へと帰っていった。

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