第41話

 食べ物に夢中になってる私たちに、何人か果敢に声をかけてきた貴族もいたけど、おべっかか、私やルカを婿入り(私は男装中)させて紐付きになりたいとか、お抱えは無理でも拠点を自領にとか、自分たちに利益を得るための話だったのでばっさりお断りした。

 貴族的には婉曲にすべきだけど、冒険者なので空気は読まないよ。


 王族は少しだけ参加して下がっちゃったので、主催の公爵がいろんな人に娘自慢と冒険者の有用性を語ってる。


 冒険者のイメージアップさせたいってことはこのままジュリーさんの活動を続けさせる気かな。結構迷惑。


「ジュリエッタ嬢に非はなくとも元王太子をうまく導けなかったと言う失点と、妃教育も受けていたことから他国の高位貴族に嫁がせるわけにもいかないとなると、修道院に行くか領地に引き篭もるかしかないだろう。修道院に入れさせたくない親心はわからぬではないがね」


 うーん。領地経営を手伝うか家庭教師とかの仕事はダメなのか?


「導けなかったのは教師や側近の責任じゃない?」

 未成年のお嬢様に責任押し付けるなって思うけど、将来の王妃の教育ってそう言うもの?


「浮気王子の責任を取れって、キ○玉でも潰せば良かったのか」


 あ、子種を死滅させたらまずいか。血筋残さなきゃ。


「お前その顔で下品よなぁ」

「浮気なんて下半身で生きてるからでしょ」


 そもそも純愛とか真実の愛って言うなら、その相手の立場を守るためにも、先に婚約者に誠意を見せて解消しなよって話。


「あー、まぁ俺はしないから俺にキレるな」

「キレてないしー、ただ浮気を相手の責任にするのはムカつくよねーって」


 スッとケーキを山盛り差し出すルカ、私のことを良くわかってる。

 横で素知らぬ顔で私とルカと同じくらい食べてるアウルがちょっと面白い。


 ちなみにジュリーさん、マグナムを後ろにつけて、父親の公爵について挨拶回りしてるけど、貼り付けた笑顔が怖い。

 彼女も冒険者として活動を始めたら貴族的付き合いは望んでなかっただろうに。

 考え方は貴族のままだから抜けない方が彼女のためではあるけどね。


 爆炎たちが高位貴族に絡まれてる。

 いちおう、白夜の仲間が付いてるので無理強いとかは無理だけど、嫌そうなので言われてそうなこと予想できる。


「俺の前で口説くのがドアホウなんだわ」

 ギルマスは「はー」とため息付いてから休出に向かった。

「あの人はあれで世話好きですからね」

「あんなガサツそうなのに甘やかしてくる」

 そばにいてくれるアウルも大概優しいけど。


 Cランクくらいだと将来に迷いがあるからお抱えの勧誘に揺らぐかもだけど、定年退職みたいなのが早いし、微妙だよねぇ。

 

「あ、これ唐揚げで食べたい」

 ルカがお肉をもぐもぐしながら言う。

「唐揚げ?」

 アウルは唐揚げを知らないようだ。

 揚げ焼きみたいなのはあるけど違うんだよね。

「油にドボンして特製ソースで」

 ジューシーな蒸し鶏は美味しいけど、ルカちゃん、揚げ物で食べたいらしい。

「ドラゴンの時教えてくれるかな」

「ドラゴンはステーキだよ。唐揚げは鳥かウサギがいい」

「用意させるよ」

 アウルってあんまり喋ったことなかったし、無口なイメージだったけど、わりと気さくなお兄ちゃんだったんだね。


 この場は冒険者を労う程で、貴族たちのマウンティング会場なので、飽きた冒険者たちが料理に集まり始めた。


「うめぇ!」

「上品な味ってやつだなぁ」


 街の屋台は大雑把な味の濃いのが多いからね。


「二度と食えんだろうから記念煮しっかり食うぞ」

 私たちみたいなのいた!

 

「おい。散らかして食うなよ!貴族の前だ。マナーは守れ!」

 ギルドの職員たちが必死に言い聞かせてる。


 そもそも平民ので冒険者を呼んだんだから多少は覚悟しておけよってね。


 娘自慢を王宮できるやっちゃう公爵もアレだし、それに付き合わされてる貴族も冒険者も正直面倒だ。

 日当も出ないのに!

 あの日の対価で今日は別じゃん。

 依頼やってた方が儲かるよ。


 はー、帰りたいと思ってたら遠くでお祖父様とベン兄さんが「大人しくしてろ」って口パクで伝えてきたよ。


 この後も拘束されてるのブルー。


「んが!」

 ルカがケーキを口に突っ込んできた。

「何も考えず、うまいのをいっぱい食べろ」

 口に入ったお酒入り生クリームがめっちゃ美味しい!!ほのかなアルコールとちょっとフルーティーなようで後味がスモーキー。

 ホールでゲットしたい!!

「リュカ、これどこにあったの?」

 指差した先にはアウルがガッツリ皿に持ってる姿。

 残り二ピース・・・。

「追加を頼もうか?」

「ついでに作った人が知りたい」

 お抱えのシェフを持つのはまだ先だけど、大きなうち作ったら雇いたい。


 待ってる間に食べたパイも美味い。


「追加入ります」

 コックコート姿の少年がケーキトレーを取り替えている。


「あの!このケーキを作ったのはどなたですか?」

 思わず真正面から聞いちゃったよ。

「え?これは王都のカフェビリジアンのケーキです」

 まさかのお取り寄せぇ!

「教えてくれてありがとう」

 可愛い少年にチップを弾んでしまいたいところだけど王宮でのそれは禁止だ。

 公爵のパーティだから、公爵家の息がかかってるかな。普通に買う分にはいいか。


 新しい方もアウルと半分こで食べた。

 ほんのり具合がちょうどいい生クリーム。この生クリームに埋まりたい。




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