いつかきっと
柚木の家に来てから何日たっただろうか?この家に居ると時間が流れるのが早く感じてしまう。
「柚木、学校まで後何日だっけ?」
最近どれくらい時間が経ったのか分からなくなっている。これもうつ病の弊害なのだろうか?そんなことを思っていると柚木が答えてくれた。
「ん?えーっとねー…明日から学校だね」
「そうか。明日から学校か…え?明日から?」
俺の聞き間違いか?
「うん。明日からだね」
どうやら聞き間違いでは無いらしい。
「まずい…」
俺は小さくそう呟く。
「ん?何が?」
そんな俺の呟きを聞いて柚木がそう声をかけてくる。
「いや、その…課題がひとつも終わってない…」
完全に失念していた。どうしよう…
「え?!あぁそっか…」
「まずいぞ…どうしよう…」
今から全力でやれば間に合うか?今は午後12時過ぎ。ここから一睡もせずにすれば何とか…いや、無理だ。各教科の担任が出てきた課題には答えが付いていなかった。絶対に間に合わない。
「仕方ないなー。緋月、私の宿題写していいよ」
柚木がそんなことを言った。
「…いいのか?」
正直見させて貰えるのなら見せてもらいたい。
「しょうがなく、だよ?」
「た、助かる」
「じゃ、私の部屋行こ」
「え?」
柚木も行くのか?今から課題をするとして、いくら答えがあるからと言っていつ終わるかも分からない課題に柚木を付き合わせる訳には行かない。
「え?じゃないよ。早くしないと間に合わないよ?」
「い、いや、そう言う意味じゃなくて…別に一緒に居なくてもいいんだぞ?いつ終わるかも分からないし…」
もしかしたら朝方までかかるかもしれない。今日は寝れないな…
「いいよ。一緒に居る」
「…」
意味がわからなかった。どうしてそんなに俺と居たがるんだ?
「…一緒に居ないと緋月がどこかに行っちゃうような気がするから」
柚木が小声でそう言った。
「柚木…」
それに俺は何も言えない。
「ほら、断言してくれない」
柚木の責めるような目から顔を背けてしまう。そう、断言なんて出来ない。いつ俺がこの家を出ていくかなんて俺にも分からないんだから。3人は迷惑じゃないと言ってくれているが少なくとも金銭面では迷惑をかけている。ご飯を1人分多く作ったり洗濯も回してもらったり。俺の負担なんてほとんどない。この家の人達は俺に家事をさせてくれない。ただ居候させてもらうだけなんて…俺は必要とされているのだろうか?
「…」
やはり俺は黙っていることしか出来ない。
「…まぁ今はそれでいいよ。でもいつか絶対に言ってもらうから。私の傍から絶対に離れないって」
「…あぁ、いつかはきっと」
それは果たされる約束なのだろうか?今の俺には全く分からない。
「ん。じゃあほら、早く行こ」
「そうだな」
俺たちは柚木の部屋に移動して課題を始めた。
結局課題が終わったのは午前2時頃だった。次の日、遅刻しそうになった所を由紀さんに起こされて慌てて学校へ行った。
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