へんのや

尾八原ジュージ

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 ある家の話をする。


 それは都内にある中古の戸建てで、中古とはいえ見た目は十分にきれいで、目立った瑕疵は見当たらない。

 が、どうしても買い手がつかないという。

 理由はある。

 かつて、この家が完成して間もない頃、ある一家が引っ越してきた。ところが一年も経たないうちに全員が死亡し、空き家になってしまった。

 事件以降、購入者も借りたいという者も現れず、そこは空き家のままになっている。だが、無人のはずの家の中を誰かが歩いていたとか、窓から人の顔が覗いていたなどという噂が絶えない。家の前を通っただけで、体調を崩した者もいるという。

 近隣住民が声を潜めて、

「あそこは人が住むようなとこじゃないですよ」

 などと言う。

 そういう話だ。


 その家を買うことにした。

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