蝶って目が回らないのか?

りゅう

第1話 蝶って目が回らないのか?

 ふと、気になって検索してみたが誰も興味は無いらしい。


 空を飛ぶ生き物にはいろんなものがあるけれど、その中で蝶が一番飛び方が下手だと思う。だが、見た目が逆に跳び抜けて綺麗だったりするのは何か意図的なものを感じる。

 それにしても、あんなにバタバタ飛んで目が回ったりしないのだろうか? まぁ、単純な構造の複眼なので視覚はあまり重要ではないのかも知れないが、同じ昆虫の蜂とかと比べても安定感がない。いや、目が回るかどうかは平衡感覚だから正しくは目ではないわけだが、上下に大きく動いているのだから視界はブレブレになっているはずだ。どうしてあんな飛び方で飛べるのか不思議に思って、その理由を考えてみた。


可能性1 一瞬しか見ていない


 飛ぶときは、基本あまり見ていない。

 羽を下げたときは羽が邪魔で見にくいので全く見ていない。特に大事な下方の視界が妨げられて見にくいのと、大きな羽を空気を押しのけて振り下げるのに必死でそれどころではない。羽を上げると視界が広がるので、このときだけチラっと周りを見る。羽ばたくと体も上下にブレるが、羽を上げたときの一瞬だけ見るので、その前の一瞬からはブレていない。

 つまり、シャッターを切る様に、飛び飛びに世界を認識している。おおよそフレームレート3fpsくらいだろうか? パラパラ漫画を見ているようなものだ。当然、高速に動くものは認識できない。

 まぁ、人間のまばたきだって一瞬だけど見えてないのに気にしていないのだから、そんなに可笑しなことでもない。ただし、花などに止まっているときは、まばたき無しで見るようなものなので、ちょっと疲れる。


可能性2 思考が高速


 体が小さく、脳細胞というか神経が短い分、思考が人間よりも単純で速い。神経が長く相対的に遅い反応をする人間から見れば蝶の羽ばたきは速いが、逆に蝶から見ればゆっくり羽を動かしているつもりでいるのかもしれない。つまり、自分は優雅に飛んでいるつもりでいる。

 外界もゆっくり動いていると認識しているので、世界は退屈極まりないと思っている。ゆっくり動く動物や人間たちと、完全に止まっている銅像の違いが良くわからない。たまに猫がじゃれてくるが、あまりののろまな動きが可笑しくて仕方ない。だから、猫とは暇つぶしに遊ぶことにしている。


可能性3 実は、目が回っている


 カッコ悪いので、あまり教えたくは無いのだが、実は殆どよくわからないレベルで目が回っている。

 目が回るのでホントはあまり飛びたくない。自分でも、飛ぶのが下手だと自覚している。しかし腹は減る。背羽に腹は代えられないので、花を見つけたら破れかぶれで飛んでいく。もう世間体とか気にしている場合ではない。

 大体花の近くまで来たら、あまり羽ばたかずに滑空気味に降りる。花にたどり着いたら、しばらく飛びたくないのでなるべく長く留まって蜜を吸おうとする。なので、なるべく花が密集している場所を探す。

 すぐに萎れて蜜を吸えなくなる朝顔とか、蝶を呼ぶだけ呼んどいて、それは酷いんじゃないか? 裏切り行為じゃないか? と思っている。

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