yめにっき

5000円おじさん

第1話 一夜

そこは儚くも見覚えのある河川敷。


今、私はそこのほとりに一人立っている。


ただ、今しがた気づいたことだがどうやら私は一人ではないらしい。


周りからは喧騒が聞こえ、それが中学の友人だと理解しても顔だけはどうにも理解できなかった。


ボールのような何か虚げな物体を手に持っては投げ、そう思ったら蹴っている。


何の競技をしているのかはわからないが、楽しそうな様子なのでそれはそれでいいと思う。


霧がかかる中でもよくここまで元気なものだと感心さえした。


しかし、またこれも今気づいたことだが、私もこの輪の一員らしい。

考えてみればそうだ。


一緒に遊びに来ているのに1人だけ輪から外れるなどあり得ない。そう、あり得ない。


だが、私にこの輪に入っている感覚は無い。


遊ぶ状態も楽しむ感覚も何も感じることができない。


なぜここに集まり、それも中学の頃のように遊んでいるか納得が及ばなかった。


まあそんなものなのかと結論づけ、私は他の感覚に目をやる。


どうやら橋の近くで遊んでいたらしい。


見慣れた橋、茶色を基調とし彩色された橋がすぐそこには見える。


そこはいつもと変わらずに車がひっきりなしに通り、自転車や歩行者が歩道を謳歌する、そんないつも通り。


ただこの時は私は1人の中年男性を認めた。


なんだあのおっさん、ジロジロ見やがって。


そのおっさんはこちらを凝視とまではいかないが、見ている様子がわかる。


ネットには不完全な曲しかない!だから君も積極的に自作の曲をアップロードしていいんだ!


そうおっさんが叫んだ瞬間、私は何故か川に目をやり、流木の上に乗る鶏と何匹かのひよこを見た。










なんだったんだ。

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yめにっき 5000円おじさん @yuiyui-hiraran

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