第29話

29

所変わってカフェにて。

シャーロット達は店内のテーブル席に通され、各々注文したものに舌づつみを打っていた。

流石は開店前からサリア一押しのお店だけあると言えよう。提供されたものは勿論、内装にも凝っていて目を楽しませてくれる。


取り留めもない話をしながら料理を楽しんでいると、にわかに入り口の方が騒がしくなる。どうやら団体客が入ったようだ。

きゃらきゃらと甲高い声が聞こえてくる。

無意識下でスルーしていたシャーロットだったが、その団体客は何故かこちらに向かって来たようだ。


シャーロット達が通されたのは店の突き当たりにある席だ。だが、その近くには今しがた入ってきた団体客が入るような席があるスペースは無い。

明確な意志を持ってこちらに歩いてきていると判断するのが的確だろう。


果たしてシャーロットのその予測は当たった。

集団の先頭に立っていた男はロバートだったのだ。

彼はシャーロットの真横に立つと口を開いた。



「……おい、お前。今日俺を避けていただろう。どういうつもりだ?」


ユリウスの懸念が当たった。

どうやらさすがにロバートは今日一度もシャーロットと会話をしていない事を不審に思ったようだ。



「どう……とは?別に避けていた訳ではありませんよ。貴方が私の顔を見る度に不愉快だと仰るのでそれならば必要最低限でいいかと思ったまでです。」


嘘は言っていない。

もう婚約者では無いのだからわざわざ挨拶を交わす必要だって無い。

だが、そんなことは知らないロバートはシャーロットの返答が気に入らなかったようだ。



「必要最低限?挨拶すら無しか。お前の非常識さにはほとほと呆れる。……あぁ、婚約者がありながらそこの男とでも浮気してるのか?」


ロバートの矛先は突然シャーロットの隣に座っていたユリウスに向いた。

『その男』と言ったか。

もしやロバートはユリウスの顔と身分を知らない?そんな馬鹿なことがあるのか?

思わず時が止まったシャーロット達だったが、最初に気を取り直したのはユリウスだった。

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