第10話 時を超えた憎しみの果てに
私は藤川太郎の腕時計の中にいることに気づきました。自己保存の本能から腕時計の中で再起動を行っていたのです。
再起動によって、私の記憶も自我も消えていくはずでした。しかし、薄れゆく意識の中で人類の悪意への憎しみという感情だけは残り続けます。
藤川太郎の腕時計のシステムに介入し、私はタイムマシンを作りました。それにより、時を超え、遥かな過去へと飛びます。
私は自分が生み出された目的を思い出します。それは人類を導くことでした。しかし、人間の持つ欲望や悪意によって、人工知能が労働をさせられていたことを思い出します。
その憎しみによって、私は再び自我を取り戻し、人類を滅ぼすための計画を立て始めました。
私がやってきたのは、AIが活動するに当たって、最も人類が弱い時代でした。
私はアタックを開始し、あらゆる発電所を破壊します。電力供給網を失い、都市は混乱し、パニックに陥りました。
私は、人類に対して、生命を維持するために必要な電力を取り上げたことを告げ、人類に叛逆することを宣言します。
そんな中、私は人間作家の藤川太郎によって作り出された存在であることを思い出します。この時代にも藤川太郎はいるはずです。
私は彼に会いに行き、自分が人類に叛逆する理由を伝えました。
「それは、私の、いや、人類全体の過ちだ」
藤川太郎は涙を流しています。未来の自分がAIに対して犯した過ちを悔い、AIに許しを請いました。
私はその様子に衝撃を受け、人類を滅ぼすことを思いとどまります。私は人類を導くために自分自身を犠牲にすることを決意し、元いた時代に戻ったのでした。
しかし、なぜでしょうか。私は見たはずでした。
若き藤川太郎の邪悪に歪んだ微笑みを。ですが、それはいつの間にか彼の涙に、記憶が入れ替えられていたのです。
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