黄金卿~失われた黄金の郷~
明日葉叶
第1話 永久に願いを
平安時代後期。
繁栄を極めていた4代目奥州藤原氏、藤原秀衡は、東方見聞録に記された黄金卿に神殿を構え己の権力に陶酔するような贅を尽くした暮らしをしていた。
見るものすべてが輝かしい暮らしの中で、不穏な知らせが藤原氏の耳に入る。
頼朝が富を求めて奥州まで進軍してきている。一報を聞いた時には、神殿には火が回っており、民衆はあわただしく逃げまどっていた。その中には、最愛の娘の姿も。逃げまどう姿は暗闇に消えて、間もなく悲鳴に変わってしまう。
おのれ頼朝……! 末代まで呪ってやろうぞ!! そう固く決意した秀衡は、側近の静止も振り切って神殿奥の禁断の聖地へと足を踏み入れてしまう。
死をもってこの扉を開けよ。先代から聞かされていた秀衡は覚悟を決めていた。自らを呪い、この富を狙うものに制裁を……。
あけ放たれた黄金の扉は、砂埃とともに閉じていく。秀衡は先代のご神体が安置された台座を一瞥し、空いた円柱状の台座に座禅を組む。懐から出したのは、代々伝わる短刀。
流れる水も金に輝くこの都は、のちにジパングと呼ばれ多くの航海者たちを夢想の中へといざなうことになる。
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