第19話 俺の可愛い嫁

 夜の22時頃。ソファの上に座ってスマホを眺める俺と、俺の膝を枕にしてソファに寝っ転がっている柚梪。


 あれから特に熱が上がる事はなく、少しだけ柚梪も元気を取り戻しつつあるようだ。


「あの、龍夜さん」


 柚梪は仰向けになってスマホを眺める俺の顔を見上げると、俺の名前を呼ぶ。


「なんだ?」

「えっと、私が本当に妊娠しているのか分かるのって………いつくらいになるんですか?」

「あぁ、その事についてちょうど調べてたところだ」


 俺がスマホを眺めていたのは、本当に柚梪が妊娠しているのかどうかが確かめられる時期についてだった。


 サイトを開いたり、実際に妊娠した事のある女性の呟きを片っ端から見ていたのだ。


「今はまだ妊娠超初期。柚梪が妊娠してるかどうかは分からないな」

「そうなんですか………?」

「あぁ、妊娠してるかどうかは検査薬ってのを使うらしいんだけど、上手く反応しない事があるらしいな」


 詳しい事は俺にも分からない。ただ、もし柚梪が妊娠していたとしても、子作りからまだ2週間弱なため、『妊娠超初期』となる。


 妊娠超初期の間は、妊娠しているかどうかの反応が上手く出ない。妊娠超初期に出てくる症状と同じ症状が出てきたとしても、実際は妊娠していなかったと言う女性の呟きも見た。


「検査薬が使えるのは、早くても3週間後からのようだ。だから、もう少し様子を見てみようか。それと、検査薬も少し注文しとこうか」


 俺は手慣れた手つきでネットショッピングのアプリを開き、妊娠の検査薬を3つほど注文した。


 注文が終わると、俺はスマホの電源を切ってテーブルに置き、俺の膝に頭を乗せ仰向けになっている柚梪の頭を撫で撫でする。


「えへへ~、ゴロゴロゴロ~♪︎」

「………猫かよ」


 頭を撫でられる柚梪は、嬉しそうに微笑む。


「とりあえず柚梪、今後も………もしかしたら色んな症状が出てくるかもしれないから、何かあったらすぐに言えよ」

「はいっ♡ 症状って………どんなのが出たりするんですか?」

「う~ん………食欲が引いたり湧いたり、お昼とかに眠たくなったり、あとは母乳が出始めたりとかかな」

「母乳………」


 柚梪には女性の中でも比較的に大きく膨らんだ胸がある。だから、母乳が出始めてもおかしくはない。


 逆に………その豊満な胸に俺の理性が何回壊されかけたことか………。特に記憶があるのは、柚梪の方からお風呂に乗り込んで来た事だな。


 あの時は本当に理性を壊されかけた。何せ、固くなった俺の大切な物が柚梪の太もも辺りに当たるほどだ。本当に焦ったぞ………。


「龍夜さん………私の胸からは、母乳って出るんですかね………?」


 すると、何やら柚梪が心配そうな顔をしてそう俺に問いかけてくる。


「あぁ、柚梪の胸は………その、まぁ大きい方だからな。出るとは思うぞ」

「もし、出なかったら………どうやって赤ちゃんにご飯をあげれば………」

「そこは大丈夫だ。母乳が出ない人用に、ミルクを作る粉がお店に売ってあるんだ。だから、そんなに気にしなくてもいいぞ」

「そ、そうなんですか………それなら、安心です」


 柚梪は胸に手を当てて、ほっと一安心する。


 世の中には、柚梪みたいに胸が膨らんでいる人ばかりとは限らない。だから、粉を溶かして作る赤ちゃん用のミルクが売ってあるんだ。


 柚梪の胸から母乳が出なくても、その粉を買えば赤ちゃんにご飯を与える事が出来る。


「まぁ、柚梪の胸から母乳が出てくれれば、その分粉を買うお金を節約出来るんだけどな」


 そう、ミルクの粉を買うと言う事は………それだけお金が必要と言う事だ。お金を使わずに済むならば、それに越した事はない。


「それで、柚梪。具合はどうだ? 熱は上がってなかったけど」

「はいっ、だいぶ良い感じですよ。少なくとも、料理くらいは出来るかと」

「そうか。なら、明日の朝には治ってるかもな」


 妊娠の可能性がある場合、薬はなるべく服用しない方が良いと書かれてあったから、解熱剤とかを使ってないが、特に問題はなさそうで安心だ。


「そもそも、こんなに嫁が可愛いんだから………産まれて来る赤ちゃんは3倍可愛いだろうなぁ」

「むぅっ、それって龍夜さんから見て私より3倍可愛いって事ですか? 確かに、赤ちゃんは可愛いかもしれませんけど、なんだかショックな感じがします」


 プクッと頬を膨らませた柚梪は、視線を俺の顔から家の天井へと向けた。そんなふてくしたかのような柚梪に、俺はほのかに微笑む。


「何言ってんだ。柚梪が可愛い事に変わりはねぇだろ。4年前からずっと、俺の宝物は柚梪だけなんだからよ」


 その言葉は聞いた柚梪は、「ズルイですぅ」と小さく呟きながら、頬をピンク色にポッと染めた。


 ふてくしてからの照れを披露した柚梪の顔は、スマホで写真を撮って保存しておきたいほど可愛いらしかった。


「よーしっ、ご馳走さま! 今日も柚梪の可愛い顔が見れたから、良い夢を見れそうだっ」

「ちょっ………何ですかそれ………うぅ、龍夜さんのイジワルっ!!」


 再びプクッと頬を膨らませ、眉を寄せ顔をピンク色から赤く染める柚梪。


 今夜も甘い時間を堪能出来て、俺は大満足だ。

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