第17話 症状の意味………?

「柚梪、おはよう」

「おはよう………ございますぅ」


 翌朝。ふと目が覚めた俺は、カーテン越しから太陽の光が射し込んで来ている事を確認し、隣でぐっすりと眠る柚梪を起こした。


 まだほんのりと顔が赤く、声も弱々しかった。少なくとも、完全に治ったとは断言出来ないのは明確だ。


「まだ辛いか?」

「………昨日よりかは、ちょっとだけマシになりましたけど、まだ体が重いです」

「そっか。じゃあ、ここで寝ててな。体温計とおかゆを持ってくる」

「ありがとう………ございます」


 俺はベットから出て立ち上がると、布団を柚梪の肩までしっかりと被せ、1階のリビングへと降りて行った。


 キッチンで手を洗ってささっとおかゆを作り、お盆の上におかゆ・氷水入りコップ・体温計を乗せて、再び2階へと戻って行く。


「柚梪、おまたせ。まずは体温計ろうか」


 俺はそう言って、柚梪の体を起こすため一旦お盆を床に置く。ちょうど良い高さの棚とかを設置していないため、いた仕方ない。


 柚梪の体を支えながら、そっと体を起こしてあげ、体温計を手渡す。


 柚梪が体温を計っている間に、床に置いたお盆を回収してベットに座り、膝の上にお盆を置く。


 ピピピ……ピピピ……ピピピッと体温計が音を鳴らし、柚梪が結果を確認すると………体温計には37.9℃と表示されていた。


「昨日よりかは、そこそこ下がったけど………また夜になるにつれて上がるだろうな。仕方ない。仕事を休むか」


 柚梪におかゆが入ったお椀と、氷水が入ったコップが乗ったお盆を手渡す。


「熱いから気をつけて」

「はい………ありがとうございます」


 柚梪がおかゆを食べている間に、俺はスマホで仕事仲間に電話をかけ、仕事を休むよう先輩に伝えて貰うようお願いした。


 やがて、柚梪が朝食を終えると、なんとか頑張って着替えて貰う。さすがに柚梪の着替えを俺が全部する訳にはいかない。


 私服に着替えた俺は、リビングまで柚梪を連れて降り、ソファに寝かせた状態でささっと朝食作って腹ごしらえを済ませる。


 近くにある少し大きめな病院が、朝の10時から開くため、時間になるまで柚梪の看病を続けていると、柚梪に新しい変化が出始める。


「うっ………!?」


 苦しそうな声を発した柚梪は、とっさに右手で口を塞いだのだ。


「大丈夫か!? どうした!?」

「なんだか………急に、吐き気がして………」


 寝っ転がっていた柚梪は、体をそっと起こし始める。どうやら、今度は寝っ転がっていると辛いようだ。


 柚梪の背中を優しく撫で下ろし、頃合いを見てビニール袋を1つ持ってくる。


「それにしても、本当に急だな………動けそうか? あと2時間くらいしたら病院に行こうと思うけど………」

「すみません………ちょっと、キツイかもです」


 本当ならば今すぐにでも病院へ連れて行きたい所だが、柚梪が苦しんでいる中、無理に連れて行くのも良くはない。


 よっぽどの重病とかなら話しは別だが、今日は様子を見てみる事にするか。


☆☆☆


 お昼12時3分。俺の肩に体を添えながら、熱と戦う柚梪に視線を向ける。


「柚梪、お昼だからご飯を作ろうと思うけど、何がいい?」

「すみません………ちょっと、食欲が湧かなくて………今は要らないです」


 俺の質問に対し、柚梪は弱々しい声でそう答える。


 何も食べないのは良くないのだが、柚梪が食べたくないと言うなら、それを聞き入れるべきだろう。無理に食べさせた所で、柚梪は美味しく食べられないからな。


 それに、柚梪は吐き気がすると言っていた。せっかく食べた物を吐き出してしまっては意味がないし。


「そうか。なら、ゆっくり休んどけ。水が欲しかったらいつでも言ってな」

「はい………迷惑をかけてしまって、すみません」


 そう言うと、柚梪は体を倒し目を閉じる。そして、1分も経たない間に眠りに入った。


 よっぽど眠たかったのか、それとも急に眠気が差したのかは分からないが………。


「本当に、何が起きているのか分からねぇ。ちょっと調べてみるか」


 俺はそう呟いて、食卓の椅子に腰を下ろしながら、スマホを開く。


 検索アプリで『女性 急に発熱』と検索し、とあるサイトを開いて書かれている文字をスクロールしながら、原因を調べていく。


 そして、俺の目にはある言葉が目に入った。それは………『妊娠』。


「急な熱っぽさ………つわりの吐き気………食欲がない………つわりかどうかは知らないけど、今の所は柚梪と同じ症状だな………」


 俺が目をつけた記事には、女性が妊娠してから0~3週間で起こる症状。そこに書かれている症状と、今の柚梪に起きている症状がほぼほぼ一致しているのだ。


 そして何よりも、この記事に目をつけた最大の理由は………『妊娠0~3週間』と言う事。


「そう言えば、柚梪と子作りをしたのが………結婚初日の夜だった。あれからだいたい2週間弱ほどは経過している………」


 そして俺の脳内に、ある1本の電流が走る………!

 

 その瞬間、俺はソファで眠る柚梪にパッと視線を向けた。そう、ある1つの可能性が思い浮かんだから。それは………


「柚梪が妊娠している可能性がある………? そして今、柚梪の体は………子供を育てるための体になろうとしているのか………?」


 それは、柚梪のお腹の中に………しているかもしれないと言う………可能性があると言う事だ。

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