[結婚生活編]心を失い痩せ細った女の子を拾って世話をしたら、とんでもない美少女になって懐かれた件
雪椿.ユツキ
新たなる生活の幕開け
第1話 結婚式・前編
※この作品は、前作の『心を失い痩せ細った女の子を拾って世話をしたら、とんでもない美少女になって懐かれた件』と言う作品の続編になります。
まだそちらを読まれていない方は、先に前作を読まれた上で、この作品を観覧されることをオススメいたします。
☆☆☆
「お兄ちゃん、柚梪ちゃん。私は、心の奥底から2人の幸せを願っています」
温泉旅館で初めての愛を営み、見事プロポーズを成功させた俺。あの日を境に、俺と柚梪の関係はさらに深い仲へと発展した。
これは、あの温泉旅館でのプロポーズからおよそ4年が経過した、愛する柚梪との新しい生活を送る物語である。
コンコンコン………っと扉を3回ノックする音がある1室に鳴り響いく。
「どうぞ」
俺の合図と同時に、ガチャッと扉が開く。すると、黒いスーツを綺麗に着こなした1人の女性スタッフさんが、俺に向かって一礼をした後、一歩部屋の中へと入ってくる。
「新郎様、新婦様のご準備が整いました」
「………分かりました。すぐに行きます」
椅子に座っていた俺は、そっと立ち上がる。部屋を出ると、スタッフさんの案内に従って、その背中を歩いてついていく。
左胸ポケットに飾られた赤い花に、全身純白なタキシードを着た俺は、赤い絨毯の上を歩いて行くと、やがて両開きの扉の前に待機する2人のスタッフさんが見えてくる。
だが、2人のスタッフさんの他に、純白のドレスに包まれた1人の美しい女性が真っ先に視界へと入ってきた。
「………おぉ!」
つい声が漏れてしまうほどの美しい横姿。薄く透けたウェディングベールから見える、お団子結びをしたねずみ色の髪をした俺が最も大切に思っている女性の素顔。
一歩、また一歩と歩み寄る。そして、手の届く距離までやって来ると、ドレス姿の女性はそっと隣に肩を並べて立つ俺に視線を向けた。
「龍夜さん、とっても素敵ですよ」
滑らかで透き通ったその声と言葉に、俺は少し口角を上げて微笑む。そして、同じく隣で肩を並べて立つドレス姿の女性に視線を向ける。
「何言ってるんだ? 柚梪の方が素敵に決まってるだろ?」
俺の隣に居る純白のウェディングドレスを着た可憐な女性………柚梪に優しく声を掛けると、柚梪は頬をほのかにピンク色へと染め、嬉しそうに微笑んだ。
「ついに、この日が来たんですね」
「あぁ。俺と柚梪にとって………絶対に忘れる事のないこの日がな」
俺と柚梪は正面にある両開きの扉に視線を向けながら、お互いに言葉を交わし合う。
「なんだか………緊張してきました」
「まぁ、無理もない。俺だって緊張してるんだ」
刻々と迫る時間。手に汗をかいてしまうほど、心臓の鼓動が早まる。それは、隣に居る柚梪も一緒だった。
「新郎様、新婦様。お時間になりました」
「はい。お願いします」
「お願いします………!」
俺は柚梪に左腕で少し差し出し、柚梪は右手で俺の左腕を優しく握る。
「新郎、新婦の入場です!!!」
その瞬間、扉の奥から聞こえてきた男性の合図と共に、2人のスタッフさんが一気に扉を両サイドに押し開く。
盛大な拍手と共に、スタンバっていたスタッフさんの手動による桜の花びらが空中を舞う中、俺と柚梪は一歩ずつ、ゆっくりと赤い絨毯の上を進んで行く。
「お兄ちゃーん!! 柚梪ちゃーん!!」
「兄貴~」
「………! 彩音、光太!」
左の席から声をかけながら手を振る紫のツインテールをした女性、如月彩音。
同じ席から拍手を送ってくれる、制服を着た男性、如月光太。
2人は俺の兄妹である。彩音に関しては、わざわざ海外から帰って来てくれたのだ。
「龍夜ー!! 似合ってんじゃねぇか!!!」
「柚梪ちゃんも素敵よ~!」
「えへへっ、ありがとうございますっ!」
彩音と光太の座っている席の反対には俺の父親………如月優豪と、母親の如月優里が座っていた。
父さんと母さんの言葉に、柚梪は少し照れ臭そうにしながらも、満面の笑顔で感謝の気持ちを伝える。
本当ならば、俺か柚梪のどちらかと関係のある人達が、右と左の席に別れて座るのだが、柚梪にはこれと言った関係者が居ない為、今回は好きなように座ってもらっている。
そして、3段ほどある段差を柚梪と一緒に上がると、牧師さんの前で足を止める。
牧師さんは両手で分厚い本を開いた状態で持ちながら、拍手が止まった事を確認すると、俺と柚梪に視線を向ける。
「新郎、如月龍夜。新婦、間宮寺真夜。あなたは、間宮寺真夜を妻とし、健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、妻を愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」
牧師さんの長い質問を聞いた俺と柚梪。今回に限っては、柚梪の本当の名前を採用させてもらった。
牧師さんからの質問に対して、俺と柚梪はお互いに息を合わせて質問に答える。
『誓います』
「では、指輪の交換を」
牧師さんの合図と共に、俺と柚梪はお互いに向き合う。そして、家族や父さんの仲が良い仕事仲間など、たくさんの人から注目を浴びる。
スタッフさんが持って来てくれた指輪を手に取り、俺は柚梪の左手薬指に綺麗な銀の指輪をつける。そして、今度は反対に柚梪から俺の左手薬指に指輪をつけてもらった。
「それでは、誓いのキスを」
牧師さんがそう言うと、柚梪は少しだけ頭を俺に向かって下げてくると、俺は両手でウェディングベールを優しく持ち上げ、柚梪の後頭部へと捲った。
そっと頭を上げる柚梪。一歩前へと俺は踏み出し、柚梪の露出した綺麗な両肩へ手を添える。
俺も柚梪も、内心では破裂しそうなほど心臓が高鳴っている。それでも、柚梪は勇気を振り絞り、顎を少しだけ上に向けながら目を瞑る。
そして俺は、柚梪のプルッとした唇を目掛けて、ゆっくりと顔を近づける。そして、チュッと俺の唇は柚梪の唇と重なり合った。
3秒ほどキスを続け、お互いに唇を離す。
パチパチパチ………!!!!!
キスが終わると、盛大な拍手を受ける俺と柚梪。ちょっと恥ずかしそうにしている花嫁姿の柚梪が、この世で見たこともないくらい、可愛いかった♡
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