第2話

 私は田舎者だ。


 私は、県庁所在地とはいえ田園風景が広がり、夏になると、そこらじゅうの田んぼでカエルが一晩中泣き続ける様な、四国のある街で環境で育った。


 二十歳の春に東京に出てきた私にとっては、東京という街は、華やかで魅力に溢れる場所であった。私はそろそろ六十歳になるので、人生の2/3は東京で暮らしてきた事になる。


 特に、工業高専という特殊な学校で十五歳から二十歳を過ごしてきた私にとっては、本当に新鮮な街だった。何が特殊かと言うと、全校生徒数は五学年で約七百人位であっただろうか。そのうち女学生は十人前後。そんな環境で、意気盛んな青春時代真っ最中の男子学生が、どうな感じになってしまうかは、皆さんの想像にお任せする。また、男子学生は全寮制の学校で四人部屋であったので、男臭さに困る事は全く無かった。そんな環境で育った私が、いきなり東京にやってきたのである。


 大多数の女子が群れをなして歩いているのを初めて見たし、電車には急行やら特急やらの種類も有るし、田舎で特急に乗るには、必ず特急券を買い求めなければならなかった環境に育った私は、乗っても良いのか? 乗るとどうやって支払うのか? 等を考え、ひとつふたつ電車を見送る日々が続いていた様に思う。


 東京での最初の生活も寮生活。四十年間の福利厚生は酷いもので、またしてもひとり生活は叶わず。冷暖房完備の無い六畳の部屋で、先輩と二人の生活をスタートするのであった。

 さて、そんな意気盛んな私も特急電車に無事に乗れるようになり、バブル時代の東京の様々な場所で。夜な夜な遊んでいた様に思う。今まで手にする事が無かった金額のお金が、給料と言う形で全て自分のものとなるのだから、田舎者には全く抑えがきかない。当時は風俗営業法といった法律も無かったので、今思えばよくもあんな所が有ったもんだ! と関心もしてしまう。(この辺の武勇伝は後日...)


 そんな私もふとしたきっかけである女性と会うことになる。今の妻である。この出会いからは、とにかく品行方正に努め、今の幸せな生活を迎える事になった。


 この続きは次回

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