第42話

「ん、んん!はひ!」


 リンカに抱き着いて体を撫で続けた。


「リンカ、キスだけでもしていいか?」

「だめ、はぎいいいい!」


「じゃあ、1つになるのは」

「もっと、だめえええ!」


 リンカが可愛い。

 恥ずかしがるけど頑なに約束は守ってくれる。

 

 頑張って両手で顔を隠すけど、顔以外が全部無防備になっている。


「ん、ふう、ふ、あ!」

「リンカ、可愛いから、もっと本気で行くな」

「こ、これ以上なんて、はあ、はあ、嘘よ」


「出来るんだなあ」

「こ、これ以上なんて」

「試してみるか?キスと1つになる以外全部OKだもんな?」


「……」

「……」

「いいわよ。約束は守るわ」

「うん、バイブレーション!」


 リンカの弱い部分を振動させた。


「ああああああああああああああああああああああ!」

「リンカ、バイブレーションよりもキスや1つになった方がよくないか?」


「負け、ないいい!いいいいい!」

「リンカと、もっと先まで行きたい」

「ダメえええええ!」


 リンカが気を失った。




 ◇




「ううん、こ、ここは」

「リンカ、ごめん、気絶させてしまった」

「キスと1つになる以外何をしてもいいって言ったわ。フィールは悪くない」


「え?もっとバイブレーションしてもいいのか?」

「そ、それは、約束だけど……困るわ」


 俺はリンカに抱き着いた。


「バイブレーションは使わない」

「優しいのね」

「我慢している。本当はもっとシタい」

「スルのは、困るわ」


 俺は、攻撃の手を緩めた。

 それでも、リンカはよく、手で顔を隠した。




 ◇




 俺とリンカは3日間ラブハウスで過ごしたが、結局最後まで1つになる事は無かった。

 

 バスケットに入った食事が空になり、チンカウバインが戻って来ると服を受け取って2人で外に出る。


 女子生徒がリンカに抱き着いた。


「ごめんね!リンカにばかり無理をさせたからリンカを危ない目に合わせたわ!」

「私達、もっと訓練を頑張るわ!次同じことがあっても一緒に戦うわ!リンカほどじゃなくても強くなるよ!」


「皆のせいじゃないわ。私の努力不足よ。さあ、私はもう大丈夫だから」

「でも、顔が赤いわ!」

「まだ熱があるんじゃ!」


「だ、大丈夫よ!」

「ラブハウスは精神を安定させる為なのか、気温が温かいんだ。ほら、寒いと心が冷えるだろ?」

「そ、そうなの!」


「早く温かい所に行きましょう!」


 リンカが引っ張られていく。


 そして、入れ違うようにアイラが俺に抱き着いた。

 リンカは俺とアイラを見て驚いたように目を見開いたが、そのまま女子生徒に連れられていった。



 アイラが抱き着いたまま小声で言った。



「フィール、食事は食べたの?」

「まだだ」

「一緒に食べたら、2人でラブハウスに行こ。リンカとシナかったんだよね?体が熱いんだよね?」


 アイラの柔らかい体。


 温かい体温。


 甘い声に、逆らえない。


「……分かった」


 俺は、アイラと一緒に食事を食べて、アイラと一緒にラブハウスに入った。


 チンカウバインは2人の上で飛びながらフィギュアスケートのように舞ったが、キレが悪かった。

 リンカと1つにならなかった為、舞に身が入らないようだ。


 分かりやすい奴だ。




 ◇




 俺はアイラと1つになり、ラブハウスを出ると、ゴレムズが外に引きずり出されていた。


 どうやらゴレムズの弟子が人質に取られ、降参したようだ。


「わ、ワシが、し、指示をした。弟子は孤児をせ、洗脳して騙しただけじゃ。弟子は悪くない。死刑になるのはワシだけで十分じゃ」


 ゴレムズは震える声で言った。


 脱水症状になり、数日閉じ込められて衰弱している。

 その哀れな姿に、手をあげる者は1人もいなかった。


 マーリンがゴレムズに駆け寄り、お湯を飲ませる。


「ゴレムズ、何故ワシを狙った!?」

「……エリートのマーリンに、ワシの気持ちは分からん」

「ワシはエリートではない。ワシはただの魔法バカじゃ」


「ただの魔法バカなだけで学園長にはなれん。落ちこぼれのワシとは違う」

「……違う、ゴレムズ、お前は評価されていたんじゃ!」

「どちらにせよもう、終わりじゃ、ワシは死刑になる。じゃが、弟子は悪くない。弟子の面倒を見て欲しい」


 雪の上でよろよろとゴレムズが土下座した。


「分かった。出来る限りの事はする。ゴレムズを連れて行き、食事と、温かい部屋を用意するんじゃ」


 ゴレムズが連れて行かれると、マーリンは元気が無いまま、雪が舞う空を見上げた。

 

 そしてその場を去った。


 ゴレムズは、悪人ではないのかもしれない。

 むしろ繊細で、傷つきやすく、心が弱いだけだったのかもしれない。




 事件は解決した。

 街を襲った盗賊はすべて討伐され、拠点はすべて焼かれた。


 ゴレムズと俺は、王都に呼ばれた。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る