第21話
「あ!あ!フィール君!ダメえええ!」
俺とアイラが1つに重なり、焚火の炎が影を作って揺れる。
そしてその上をチンカウバインが飛びながら舞う。
チンカウバインの舞は最高潮に達していた。
俺とアイラが落ち着くと、チンカウバインの体が更に輝く。
「32の恋愛ポイントを手に入れたよ!野営2日目は我慢できなかったようだね!流石アイラ、内に秘めた愛は相当なものだよ!……」
チンカウバインは話を続ける。
アイラとの初エチエチはアイラ初回特典で一番ポイントが高く、二回目は32ポイントを手に入れた。
俺本人が直接エチエチイベントを起こせばもっとポイントが手に入るし1回目から3回目くらいまでは特にたくさんのポイントが貰える。
そして処女でウブな方がインパクトが大きいから次の女性とエチエチイベントを起こせと。
アホか、そう簡単に出来るわけが無いだろう!
俺は主人公じゃないんだ。
「アイラ、そろそろ起きよう」
「すー!すー!」
「……眠ってる」
アイラの頬を突っつくが起きない。
「うーん、大きいよ、むにゃむにゃ」
「明日も早い。早く休もう」
「次は学園で何かが起きる気がするよ」
チンカウバインは学園がある方角を見つめていた。
◇
次の日の野営でもアイラと1つになり、3回の野営の後、レディパール学園都市に帰って来た。
夏休みが終わる前に帰ってこれたか。
「凄いよ、行くときは馬車で10日だったのに4日で帰ってこれたね」
「次は早朝出発にして能力値を上げればもっと速くなるかな」
「でも、野営は楽しかったよ」
「アイラは何度も野営をシテ何度も愛を生み出したいよね。分かるよ」
「チンカウバイン、静かにしてくれ」
学園都市に入ると主人公と豚伯爵が揉めていた。
「喧嘩を止めた方がいいのかな?」
「いや、いい」
ストーリーイベントだな。
豚伯爵が豚と酒を買い占めようとして酒と肉の値段が高騰する。
酒池肉林をやろうとしているのだ。
ヒロインの姫騎士経由でそれが王家にバレて豚伯爵は多額の補償金を払う事で事件は終わる。
順調だな。
「邪魔にならないように学園に行こう。ファインのパーティーがいれば大丈夫だ」
俺は学園に入った。
入った瞬間に教師に囲まれた。
「フィール君!すぐに恋愛相談を始めましょう!」
「予約がパンク状態です!」
「故郷に帰った生徒たちが恋占いの事を話した結果、この学園に多くの人が訪れました!」
「今は新スキルどころじゃないね!僕の出番だよ!」
「おお!やってくれますか!」
「もちろんだよ!行こう!」
チンカウバインは無駄にくるくると回りながら飛んでいった。
「気になる事があるんだ。学園の中を回って来る。アイラは部屋で休もう」
「うん、おんぶされてただけなのに胸と腰が痛くて」
腰は、野営の時に痛くなったんだろう。
「寮の前まで送ろう」
「ありがと」
アイラを送った後、学園を迷いなく進む。
ゲームでは夏休み終わりと共に訓練が追加される。
俺は闇魔法研究部の部屋をノックした。
「ど、どちらさまあ?」
「いえ、不思議な魔力を感じたので気になってしまって」
「ふぃ、フィール君!す、少しお待ちください!」
ガサゴソと音が聞こえ、1人の女性生徒が顔を出す。
「どうぞお」
13人の女性が黒いローブを着ており、薄暗さもあって一瞬幽霊のように見えた
中に入るとビーカーでコーヒーを淹れている。
部屋の奥には物の山が出来ており、黒い幕で覆われていた。
物の話題には触れない方がいいだろう。
「ふぃ、フィール君は、不思議な魔力が気になった、の、のよね?」
「そ、そうですね」
「「ヒソヒソヒソヒソ」」
「フィール君に実験台に」
「で、でも、失敗したらまずいでしょ」
「失敗しても魔力供給を止めれば大丈夫、ポーションを用意しておいて回復させればいいから」
「あの!何かあれば言って貰って大丈夫です!」
「「ひいい!」」
「あ、ごめんなさい。驚かせてしまいました」
「その、実は、闇魔法で作った影と闘って欲しくて、でも」
「分かりました。やります」
「でも、フィール君に、フィール君の迷惑になるから、無、無理よねやっぱり、う、うふふふ」
「やるって言ってるでしょ」
「やるって言ったわ」
「はい!やってみます!」
「う、うふふ、で、でも、髪の毛を貰ったり、魔力を流して貰ったり、あや、怪しい事をしているように、見、見えるわ」
俺は紙の毛を風魔法で斬った。
「髪の毛はこれでいいですか?魔力はどこに流せばいいでしょう?」
女性が目を見開いた。
「い、いいのね。髪の毛は、じゅ、十分よ。じゃ、じゃあ、この玉に魔力をな、流して」
俺は魔力を流した。
「あ、後は、訓練場に行って、私達の魔力で出来た影と、た、戦って欲しいの」
「分かりました。行きましょう」
「つ、ついに実験が進むわ!」
「こ、これで念願の」
「早くいきましょう!フィール君の気が変わらない内に!」
【訓練場】
訓練場に向かうと黒いローブを着た13人をみんなが避ける。
だが離れつつも観察を続ける。
大きな魔法陣の巻物を4人がかりで広げて俺の髪の毛と弾を置いた。
そして13人で怪しい詠唱を始めた。
魔法陣から影が出来て黒い俺の影が魔法陣から出現した。
ざわざわざわざわ!
「やべえ、黒魔術の奴らだぜ」
「ああ、いつも怪しい実験をしているらしい。あの影も怖すぎる」
「魂とか吸われてないか?フィールは大丈夫なのか?」
「しー、失礼だわ、様子を見てから決めても遅くないと思うの」
「ああ、見守ろうぜ」
俺は剣を構える。
この影は俺の意識を投影した分身体だ。
俺より弱く、活動時間も限られるが、自分自身と闘う経験は俺の能力値を大きく引き上げる。
ゲームのボーナス訓練、影訓練、来たああああああ!
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