第5話
目が覚めるとチンカウバインがスースーと寝息を立てていた。
目覚めてもゲームの世界か。
流石に、この世界に転生した事実は認めよう。
今日は休みだ。
この世界は365日が1年で曜日も元の世界と一緒だ。
フィール・バイブレーション
体力レベル 12(+2)
魔力レベル 13(+3)
速力レベル 10
生産レベル 10
知力レベル 77
魅力レベル 123
スキル
『☆秀才』『☆風魔法の才能』『☆イケメン』『☆妖精契約・チンカウバイン【新スキル!】』『剣術:下級』『炎魔法:下級』『水・氷魔法:下級』『風魔法:下級』『土魔法:下級』『聖魔法:下級』『闇魔法:下級』『生産魔法:下級』
内政力
爵位:男爵家の息子
兵力レベル:無し
収入レベル:無し
領地レベル:無し
チンカウバインとの契約がスキルで表示されている。
訓練をしよう。
フィールの体は鍛えればかなり強いが訓練不足だ。
この世界では魔物を倒して強くなるわけではない。
訓練や行動によって強くなる。
魔物と闘う事でも強くなるが、剣を使っていれば剣術が強くなり、魔法を使えば魔法が強くなるといった具合だ。
要するにリアルと同じだ。
元フィールの奴め。
天才だからってサクッと初級スキルまで覚えたら後は何もやらない。
フィールの能力は風魔法以外中級が限界だ。
せめて1つでも中級があれば楽だったんだが。
「おはよう。今日は恋愛相談かな?」
「いや、学園が休みだ。訓練をしたい。鍛えておかないと最悪死ぬからな」
「訓練をするなら風魔法にしよう。私がフィールに憑依して風魔法を使えば私と感覚を共有できるから、今日中に風魔法を中級にはあげられるよ」
「マジでか!」
「うん、今憑依していい?」
「良いぞ」
チンカウバインが俺にキスをした。
その瞬間にチンカウバインが俺に吸い込まれていく。
チンカウバインの意識が俺に流れ込む。
チンカウバインの性格は行動と同じで裏表が無い。
そして、妖精は変わらない存在である事も分かった。
『成功だね。やっぱりフィールとは相性が良いよ』
「食事は必要ないんだな。空気中に放たれた愛の感情がご飯なのか」
食事を食べようとすれば食べられる。
お菓子が好きらしい。
でも、食べなければそれでもいい。
『そう!みんなの愛を浴びたいんだ』
「かなり早いけどまずは食事からだ」
『フィールは異世界からの転生者だったんだね。フィールは相当レアだよ。それに日本のエチエチ文化は私の想像力を膨らませるよ。ラブホテルは愛の為に必要だし、この拘束プレイも、案外Mな子は多いから大量の愛を……』
チンカウバインが頭の中で話を続けるが、俺はBGMのように聞き流した。
反応すると一人で騒ぐ変人になってしまうのだ。
食堂に向かった。
食堂は自分で持って食べるバイキングスタイルだ。
休日でも寮に住む教師と生徒はここで食事をする。
食事が終わると訓練場に向かう。
ゲームだと最初の一カ月は午前・午後・夕方と訓練メニューを選択するだけで訓練が終わり、その後は7日分をまとめて訓練メニューを選択する。
だが、この世界では実際に訓練を積む必要がある。
チンカウバインの魔法知識を使って魔法を使う。
「ハイウインド!」
『風魔法が下級から中級に進化しました』
「一回だけで進化したのか!」
『上級は魔力が少なくて使えないね。魔力を鍛えればすぐに上級になれるよ』
「おお!今日と明日は休みだ!訓練を続けよう!」
『やる気に溢れてるね。でも、訓練よりもこの学園に愛が増えればフィールと私はパワーアップ出来るよ?』
「……今から教師に懺悔室を使わせてもらえるようお願いしてくるか。その上で今日と明日は訓練をする」
俺は教師の元へ向かった。
「ええ、良いですよ。値段設定は考えてありますか?」
速攻で男性教師から許可が下りた。
「値段設定は決めていません。無料では駄目ですか?」
「なるほど、実はフィール君の恋愛相談はいつ始まるのかと、生徒や教師の方から多数質問が寄せられているのです。10万なら払うと、そこで相談ですが、まずは10万ゴールドで始めてみて、半分の5万ゴールドを教会に寄付して欲しいです。大人の事情やら色々あって……」
「妖精と教会のつながりを誇示したりとか、寄付の問題とか色々ありますよね?分かりました。それでやってみましょう」
「ありがとう。フィール君は大人ですね。一応表の理由としては、冷やかし防止と混雑回避、そして教会による護衛費や恵まれない者への施しです」
全部本当の事ではある。
嘘にはならないだろう。
「分かりました。苦情を言われた場合はそう答えます」
「ええ、本当に助かります」
俺はその後、学園の周りを走った。
ダッシュ訓練は体力と速力を上昇させる。
『魔力訓練じゃなく、ダッシュなんだね』
「ダッシュは序盤の定石だ!体力をあげる事ですべての治癒力がアップする。そうすれば魔力の回復力も上がる!最初に上げるべきなのは体力だ!うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
序盤で中級風魔法を使えるようになった今、攻撃力に問題はない。
この方法は序盤に魔力が不足するデメリットもある。
でも、それでもまずは体力なのだ!
ダンジョンに行かなければ魔力が足りなくても問題はない。
「はあ、はあ、はあ、はあ」
『お疲れ様。もう少し休んだ方がいいよ』
「そうする。休んだら食事にしよう」
食堂に向かうと、主人公のファインと3人のヒロインが楽しそうに会話をしていた。
ファインが俺に気づいて手を振る。
俺が手を振り返すと3人のヒロインが俺に頭を下げた。
他の生徒は俺を励ましてくれた。
「よお!妖精と一緒だと大変だと思うけど頑張れよ」
どうやら俺の悪役貴族ポジションは完全に解消されたようだ。
更に妖精と契約出来た事で俺の悪いイメージは払しょくされた。
何かあったらチンカウバインのせいにも出来るか。
実際そうなんだけど。
俺が食事を取りに行こうとすると教師に囲まれた。
「フィール君、すぐに恋愛相談の件を進めましょう」
「まずは教師を実験台にして事をすすめるのです」
「実際にやってみるまで何が起きるか分かりません。実際に懺悔室を使って、私達教師陣が並び、10万ゴールドを支払い、チンカウバインが恋を見定めるのです!」
『いいねえ!いいよ!もっとみんな積極的に愛を求めるのが正しい姿だよね!』
みんな恋人が欲しいのか。
教師陣は皆若くて見た目もいい。
でも、真面目そうな人が多い。
遠慮しすぎて恋が進まない気がする。
「分かりました。食事が終わってから、魔力が切れるまでやってみましょう。それと、出来れば訓練も同時に進めたいので、訓練の時間は出来るだけ話しかけないようにして欲しいです。恋占いには魔力を使います。体力を上げないと回復力が間に合わないかもしれませんので」
「分かりました。皆さん聞きましたね!今日と明日はフィール君の恋愛相談実験を行います!実験が終わらない限り皆さんの恋愛相談はずっと始まりません!邪魔をしないようにお願いします!!」
真面目そうな教師が大きな声で言った。
必死だな。
食事が終わると俺はすぐに懺悔室に向かった。
シスター服を着た女性生徒が10万ゴールドを受け取り懺悔室に案内される。
女性教師が入って来た。
「そ、それでは、お、お願いします!」
俺の肩に乗ったチンカウバインが飛んで教師の頭に触れる。
「君は、学園生に猛アタックを受けているね」
「な、何故それを!」
「その男性生徒の卒業後に、愛を受け入れるだけでいいよ。私に言われた事を今すぐ言いに行こう。後1年で、愛は叶うよ」
「ありがとうございました!すぐに動きます!」
女性教師は懺悔室を出た後走って行った。
全力ダッシュだと!
「次の方、どうぞ!」
マッチョ教師が現れた。
「俺は剣術にしか能の無い人間だ。こんな俺でも恋が出来るのか?」
「いつも左の席で仕事をしている魔法教師は、ちらちらと君を見ているね。今の想いをその人に伝えよう」
「だ、だが俺は、な、何といえばいいか」
「僕に言われた事をそのまま言えばいいよ」
「わ、分かりました。あ、ありがとうございました」
マッチョは汗をかきながら懺悔室を後にした。
どんだけ緊張してるんだよ。
「魔力を貰うよ。チュ!」
チンカウバインは俺の魔力を吸い取りつつ恋愛相談を続けるが、すぐに中断された。
「うえ、車で酔ったように具合が悪い」
「魔力不足だね、お疲れ様。時間差で愛の花は咲き始めるよ。そうなれば私とフィールの力は増していく。みんな幸せになれるね」
確かに、今日は充実していた。
ダッシュをして苦しかったけど、頑張れば能力の上昇がステータスに現れる。
恋愛相談も、皆の役に立ちながら魔力の訓練が出来た。
「少し休んだら、訓練をして今日は休もう」
「この世界は頑張れば報われるし感謝が返って来る。フィールが思うようにやってみよう」
「よっし!やるぞ!ゲームの序盤は重要だ!」
1日訓練して思った。
これなら続けられそうだ。
学園生活は3年間だ。
ゲームと同じで全部の能力値をカンストさせたい。
俺は休日の2日間、訓練と恋愛相談を続けた。
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