第23話

「結構イカついの頼んだな、ちゃんと食べれるんか?」

「私、いつもここ来たらこれ食べるんよ、今日はめっちゃお腹もすいてるし」

遠回しに嫌味のように聞こえたが、多分この子は純粋にお腹が空いていると言っているだけなんだろう。

「慧悟って、何処の出身なん?何かたまに関西弁変よね?」

「俺は高校まで徳島でそれから大阪、やっぱりちょっと変な時あるやんな?自分でもそう思う時あるんよ」

「うーん。そんなに目立ってないと思うけど、関西人からしたら、そんな風に感じたから聞いただけ」

昨日会ったばかりの女の子に見抜かれてしまうのなら、多分他の接している人間には田舎者が調子に乗って、関西弁を話していると思われているのだろうか、急に恥ずかしくなった。

「あやは大阪の出身なんか?地元大阪やったら実家の方がお金浮いて助かるんちゃん?」

「私の地元はね、大阪の枚方って所、でも専門行くのが決まった時にこっちに出て来た。枚方遠いし、何にもないからね」

この時この子がまだ専門学生なのだということを初めて知った。

「あやは何歳なん?成人してるやんな?」

未成年の家に転がり込むのではないかと怖くなった。もし訴えられたら完全に負けそうな気がした。

「大丈夫、私専門入ったん遅かったから今年で21歳やで、学校の子から年上やから姉さんて呼ばれてる」

「俺の学校にも年上の人おったわ、確かに兄さんて呼んでたな」

少しホッとしたのと、やはりこの子の語尾には「笑」という文字がついているような気がした。それにつられている自分も解った。


「専門行くまでは何してたん?」

「高校出てからはフリーターしててお金も貯まったし家出て学校通い出したかなー」

「意外と偉いんやな姉さんわ」

「その呼び方止めてよ」

あやは姉さんと呼ばれる事があまり好きではないのだろう、始めて語尾に「笑」と言う文字がついてこなかった。もうこのあだ名で呼ぶのは止めにしようと思った。

お互いの話をしている間に頼んだおうどんが運ばれて来た。

定員が持って来た器に僕は驚愕した。こんなに大きな器で運ばれてくるうどんを初めて見たし、食べ切れるのか不安になって来た。

定員が僕らの前に器を置いた時に中身を見て安心した。器は恐ろしく大きかったが中身は普通の量だった。

「なぁ、なんでこんなに器大きいん?」

「えー知らなーい、何かでもめっちゃ食べた気がしてよくない?」

そうゆうものなのかと思ったが、目の前に置かれたカツカレーのおうどんはとても美味しそうだった。

無言で食事に夢中になった。僕もそうだがあやも食事中にはあまり話さないタイプだった。2人とも黙々とうどんをたいらげていた。僕が食べ終わって直ぐくらいにあやも完食した。

「凄いな、俺ちょっと食べ切れるか心配やったのに、全部食べれたんやな」

「うん、美味しいもん、ここのおうどん」

あっ、そやなうんうんと心の中で頷いた。

「ほな、食べたし家いこうかー」

「ありがとう。ほなお会計してくるな」

レジに行きお会計をしたら2000円を超えていた。うどん2杯で2000円を超えたのは驚いた。地元の近くの香川県なら2人で700円くらいなのに。

「ご馳走でしたー」といい2人で店を出て行った。

「美味しかったねー。そういえば慧悟、今日お酒飲んでないんちゃうん?そこのコンビニで買って行こ、家もう直ぐそこやし」

「ありがとう。あやは酒いらんのか?ついでに買うよ?」

「あー私、仕事以外では飲まんようにしてて、だから大丈夫」

毎日客の相手をしながら無理に酒を飲んでいるのだろうか?夜の職業も身を削ってお金を稼いでいるのだなと少し夜の仕事を舐めていた自分が愚かに思えた。

コンビニでチューハイを3本ほど買い、あやは明日の朝ごはんと言いサンドイッチを買った。

家に向かう途中に、もし家に誰かいて袋叩きにあうのではないかと気が張っていたが道中喋っているあやを見ているとそれは無いなと感じた。

あやの家はオートロックが付いていて女の子が生活するには安全そうな家だった。

「ねぇ、ねぇ、慧悟これ見て!見て!」

だいたい部屋の番号を押す所に鍵穴が付いていてそれを回せば入り口が開くただそれだけの事で何を見てと言われているのか解らなかった。

「それ来客があった時に押すボタンやろ?なんかあるん?鍵入れて開けたらええやん」

「これさ。0、1、2、3だけやたら汚れてない?」

確かによく見るとそこだけ黒ずんでいた、だからどうしたと言う話なのだが。

「0、1、2、3、てな押すと鍵なくても勝手にオートロック開くねん」

いやそれオートロックの意味無いし、絶対他人に教えたらあかんやつやんと思いながら話を聞いた。

「私この前気になって押してみたらな、開いてん、みんなこれで入ってるんかな?」

「いや、知らんけど入ってる奴もおるやろ?気をつけなあかんで」

あやはエレベーターに乗ると5階のボタンを押した。自分が前住んでいた家は4階だったので少し負けた気がして嫌になったが、そんなことを今考えている自分はもっと嫌だった。

エレベーターをら降りると部屋は突き当たりの角部屋だった。

「掃除したんやけど、まだ汚いかも。まぁ気にせず上がってね」

僕の中ではまだ警戒は完全に解けている訳ではなく、道中の会話で無いと思うが、ドアを開けた瞬間、屈強な男達にボコボコにされみぐるみを剥がされるのではないかと、密かに考えていた。

ドアが開く、緊張の一瞬だった。











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