第6話 お花見

「若、お呼びですか。」

「弁慶、桜が綺麗だな。」

「桜ですか?」

「そうだ!庭の桜が満開だ!」

若は障子をあけた。庭の真ん中には、満開の一本の桜の木。

「左様ですね。とても綺麗です。」

「そうだろう。初代の頃からずっと、春になると花を咲かせてくれているのだ。」

少しの間、2人で庭の桜を見ていた。

春風に乗って、ひらひらと薄紅色の花びらが舞ってとても風情がある。


弁慶は、閃いた!

「若!今日の昼食は庭でお花見をしながらにいたしませんか?」

「花見か?いいな!頼む。」

「かしこまりました!」


「若!お昼の準備が整いましたよ!」

「ああ、今行く。」

庭には大きなゴザが敷かれ、その上には、唐揚げやサンドイッチ、おにぎり、果物、ジュース、そして、若の大好きな和菓子がたくさん並べられていた。

「うまそうだな、弁慶!」


早速、ゴザのうえに座り、桜を愛でながら、若と弁慶は、2人でお昼ごはんを食べ始めた。

「弁慶、やはりおにぎりの具は鮭がうまいな。」

「左様でございますね。」

「この唐揚げも美味しいな、卵焼きも。弁慶の料理は何を食べてもうまいな。私の好物ばかりだ。いつもありがとう。」

満面の笑みで、若は弁慶にお礼を言った。

「嬉しいです、若!大好きな甘味もご用意致しましたのでどうぞ召し上がってください。」

弁慶はとても嬉しそう。そんな弁慶に、若は紙袋を手渡しながら言った。

「弁慶が昼食の用意している間に、クリームあんみつを買ってきたのだ。」

「本当ですか!?若!私のためにありがとうございます!」

受け取ると、弁慶は美味しそうに食べはじめた。

「若!美味しいです!」

「うんうん、よかった。弁慶が用意してくれた桜餅も美味しいぞ。」

「それはよかったです。他にも水羊羹などたくさんありますから。」

「ありがとう、弁慶。」


ほのぼの時間が過ぎてゆく。

「いいお天気でよかったですな、若!」

「そうだな!桜、綺麗だなあ。庭で食事をとるのもいいものだな。」

「そうですね。よく晴れたあたたかい日に、またお庭でお昼を食べましょう。」

「それは楽しそうだ。弁慶、また頼む。」

「かしこまりました!」


心の中までポカポカしている。

美味しそうに食べる若を、微笑ましく見守る弁慶であった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る