セカンドラブ

晶洞 晶

セカンドラブ

 “愛”


 おそらく全ての人が素晴らしいと同意するであろうそれ。


 友愛、親愛、敬愛、博愛、情愛、様々な愛の形が存在する中、最も有名なのは“恋愛”。すなわち恋であろう。


 その中に“初恋”というものがある。


 初めての恋、初めての愛、だからか多くの人が言葉を残した。


 その全てが自分に当てはまるわけではない。共感できるわけでもない。


 ただ、この言葉は真であると彼は思う。


 “初恋は実らない”


 とても有名な言葉だ。


 きっと皆が聞いたことがある言葉で、聞いた時はそんなことはない、と否定する言葉。


 けれど多くの人が恋に破れ、後からその意味を知る。


 それは特別なのだと。


 “ファーストラブ”


 初めてなのだ。


 初めて誰かを愛おしく思う。


 初めて全力で誰かを愛する。


 初めてだから全てが純粋で、愛おしく、美しい。


 そして、愛する人に夢中になる。


 愛する人が全てで、その笑顔が自分の命とすら思えてしまう。


 それはとても幸せなことで、価値があることで、美しいもの。



 でも


 だからこそ駄目なのだ。


 初めてだから加減がわからない。


 それ以外が見えなくなってしまう。


 初めての愛に狂うのだ。


 二人の世界が全てで、周りなんてものは見えなくて、愛だけがあればいいと、それだけがあれば生きていける、そう思えてしまう。だから、だから――



 愛する人の素顔すらも見えなくなってしまう。



 彼はそうなった人間の一人で、結果大きな傷を残し、縛られている。


『好きです』


 だから彼はもう、それに返すものを持たないのだ。


 そう、彼はまだ――


 “セカンドラブ”を知らない。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――


ご安心を。読んでいて辛くなるようなドロッドロのラブコメではありません。

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