聖城の元へ集う赤旗団の貴族達

明武士

プロローグ

ソールヴェスト=グローウチェスター帝国, 帝都ヴァルストーグリムの貴族街のとのある一家のマンションにて:

....................


「んんんっ.........」


時計アラームが鳴る前に微睡みから覚醒したのはいいけど、なんかまだ怠くて眠気が抜けきっていない感じだな。これは困るぞ。

でも、小鳥のさえずりに耳を傾けながらこの気持ちいい朝の陽光はいつまで浴びていても飽きることのない爽やかな感じを味わえるのは嫌いじゃない。


まあ、朝早く起きること自体、苦手なのは変わらないけど。


トントン、トントン!

「アデワラーお坊ちゃま、もうお目覚めになられましたでしょうか?」


キャロラインか。真面目で仕事熱心な、我が家が誇る一流のメイドは、今日もこの部屋へ歩いてくるまでの一連の動作に不自由なく元気で俺を起こしにきてくれた。

的確で正確無比なのは彼女のいいところ。


「おう。入っていいよ」

「かしこまりました」


カチャ―。

部屋に入ってくるのは、淡くて薄い金髪を後ろにリング状として三つ編みに結い上げている少女。俺のと正反対な白い肌をしており、赤ちゃんのような幼い容姿ながらもきちんとした10代後半の美しさが醸し出される美貌の持ち主だ。


「ふふふ....やっとこの一大事の記念すべき日がやってきましたね、お坊ちゃま」

「ああ...。そうね。言われてみればなんか緊張してきた。毎日にイメージトレーニングまでして備えたつもりなのに、結局は何の役にも立っていないな、あははは...」


こればかりは嘘ではない。やっとこの日がきたなって再認識させられた途端、急に両掌に汗が滲み出て胸もドキドキし始めちゃった。


ぎゅう~

「...キャロライン?」


ゆっくりとだが、俺の腰かけているこのベッドのすぐ隣へ、彼女がちょこんと腰を下ろして、俺の側に座った。肩と肩が触れそうなほど、近くにいるキャロラインは、至近距離で俺と目線を合わせて、ドキッとなるような可憐で、それでいて控えめな表情で優しく微笑みながら膝に置いている自分の左手を取った。いや、正確にはぎゅっときつく握った方が正しい表現か。


彼女の手が気持ちいいぐらいに温かくて赤ちゃんみたいに弾力もあるし、身体と身体が触れそうなほど近いし、それになんかいい匂いもしてくるしで、変な気持ちになりつつも別のことに意識を集中して考えないようにしておく、うん。


「勇気を持って下さいね、坊ちゃま。貴方はお一人じゃありませんよ?ウィンチェスター様もご一緒じゃないですか。彼とその妹がいらっしゃったら、何事に対しても力強いお助けになるかと存じますよ?」


.....うん。

確かにそうだ。

彼らがいれば、何でも乗り越えていきそうな感じになれるのも否めない。

よしー!気合をー!


「確かに、キャロラインの言う通りだね。じゃ、頭を切り替えて、さっそく朝食を取りに行くぞ!」

「了解しました。では、シャーツをお脱げになって下さいませんか?」

心なしか、その丸っこい宝石のような大きな碧眼の目を向けてきながら少しはにかみながらほんのりと顔を赤くしている彼女がそう言ってきた。気のせいか、ちょっとだけ悪戯っこのようなやんちゃな表情にも見える?


ま、またそれかーー!?

もう、これで何度目になって注意することになるのやら.....


「もう、キャロライン!言ったでしょう?俺も去年の十月から15歳になったばかりだから、これからは自分で着替えると言ったではないか?」

もう恥ずかしいよ、もう!


15歳にもなったし、同年代のお前みたいな綺麗な女の子に着替えを手伝ってもらうのはもう勘弁してくれ。.....なんか、こっちの心臓がすこしドキドキと鳴り出したんだけど、別にお前を好きになったわけじゃないからね!


ただ、容姿の整ったお人形さんみたいなお前に着替えを手伝われると、健全な男の子としての俺の身体が持たないよ.........



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