主人公でもなく黒幕でもないモブに転生、でもモブの前世は勇者と魔王の息子らしい。

紅葉司

プロローグ

突然、何かを思い出した。


俺は昨日、ベットで寝たはずだ。

んで、起きたら知らない人になってる……と。


それと、この体の記憶を探った感じ……多分……あの世界だよな。


俺が一年前に買ったゲームだ。ストーリーとしては…平和な現代、魔法なんか存在しない世界で、魔法に目覚めた主人公が同じく魔法を持つヒロイン達と協力し、悪に立ち向かう様なやつだ。


じゃあ、この体は主人公か? 答えはNO。

ヒロイン……は確定でNO。

黒幕……これもNOだ。


じゃあこの体は何なのかというと……ヒロイン殺害ルートで少しだけ主人公と会話したモブキャラだった。


ちなみに、ヒロイン殺害ルートってのは黒幕が1人のヒロインを殺しちまうルートだ。


絶望したよ、こいつに転生したってわかった瞬間。


とりあえず考えるのをやめてベットに寝転がる。

なんでモブなんだ? この事ばかりを考えた。


「あっ……!?」


刹那、頭に激しい頭痛が起きる。割れる様な痛みに俺は思わず頭を抱える。


やがて……その痛みに耐えきれずに俺は意識を失った。


……目を覚ます。

また同じ展開だ。あの時の様に、何かを思い出した。


そしてこの記憶は……モブの前世だった。


モブの前世は勇者と魔王の……息……子?

色々と言いたい事が多い。


まず、何故敵対関係でもある勇者と魔王が結婚している。

そして何故モブの前世は勇者と魔王の息子なんだ?


……ん? お、おい、待てよ……。


「そう……なっちまうのか」


勇者と魔王の力を受け継いでいた。今の俺が、だ。だが全盛期程ではなく、結構弱体化されていた。


「いや、嬉しい……けど!」


何というのだろうか……ちょっと混乱してしまっている。


モブがこんな力持ってもいいのか?

ってか前世勇者と魔王の息子ってどんな設定なんだよ?


「とーーりあえず!」


バンッと手を叩き。

絶対にこの力はバレたらダメだ。主人公の様に隠し生きていかなければ。


「……となると、俺ってちょっとダメだな」


少し俺の性格には難があった。


正義感が高い、人助けをよくしていた。自己犠牲も場合によっちゃする。そんな性格をしていた。


幼い頃からヒーローに憧れていた。それは高校生になっても変わらない。


ま、結果としてはヒーローにはなれなかったんだが。


場合による、場合によるけど! もし、もしだ、人が殺されそうな時、俺は迷わず魔法を使うだろう。


「そうだ、モブの設定を思い出せ」


名前は東雲しののめ才華さいか

えーと……妹と姉と父がいて……。

待て……確か東雲の姓がついていたヒロインが2人いたよな……?


「ま、ままま、まさか……な」


シナリオ守りながら生きるとか無理。


とりあえず下に行く事にする。


親父からうるさいと言われた。


DA☆MA☆RE!


こっちは混乱してるんだ。


やはり、やはりだ。妹と姉はヒロインメンバーだった。

ああもう……なんでこうも面倒な状況ばかり起きるんだ。


まだ妹と姉は魔法に目覚めてはいない。

確か、主人公が妹である清華せいかと姉であるめぐを救おうとした時、主人公がピンチになって……なんやかんやあって覚醒者になったはずだ。


「才華、プリン三つあるし食べる?」

「食べる」


姉からプリンを受け取る。

うむ、とりあえず落ち着く事が大事だ。


「「美味しいな……」」「美味しいですね」


姉、妹、俺と、同じ感想を呟く。


家族の仲は悪くなく、なんなら凄く良い方だ。


「才華はなんで叫んでたの?」

「あ、それは私も気になりましたよ」

「や、特に深い理由はないんだよ……」

「じゃあなんで?」


言い訳を考えよう。

……よし、作戦Gだ。


「ゴキ……ブリが出てね」

「……」

「……嘘だよ、嘘嘘。叫びたい気分だったからだよ」

「それなら良かった」


作戦Gは今後封印しておこう。


「恵お姉ちゃん、後ろにGが……」

「ひゃっ!?」

「まあ嘘ですけど」

「清華……?」

「おっと……これは逃げないとまずそうですね。それでは才華お兄さん、また後で」

「待ちなさい!」


うーん……平和だなぁ。




     「「見つけました」」


静かな夜。各自別の場所で呟く。


      「「私の……」」


「勇者様」          「魔王様」




















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