緊急入院⑦ 三月上旬 肺活量検査
「やっぱり心の準備とか出来なくて。全く寝れてないのもあって身体もキツくて……」
「わかりました。じゃあ、とりあえず点滴治療の方で様子を見ましょうか」
「書類とか含めて色々用意して下さってたのにすいません……」
「いやいや、仕方ないです。それにストレスでも症状が悪化する可能性もありますし。強い恐怖心抱えたままやるよりはいいかもしれません」
この時はもう思考もメンタルもぐちゃぐちゃだった。(まあ、ほぼ寝不足のせい)
あと、血漿交換の準備をしてくれていたのに逃げた自分の不甲斐なさみたいなものがあり、罪悪感で一杯になっていた。何度もごめんなさいした記憶がある。
「その……点滴治療って具体的に何やるんですか?」
「ステロイドバルス療法と、免疫グロブリン療法というものを順に行います。免疫グロブリンは血液の成分に近いものを点滴するので、リスクの説明と同意書を頂きますね。また伺いますので、午前中は肺活量の検査に行ってきて下さい」
とりあえず、点滴で済むと思った途端、罪悪感はあれど心の重荷は一気におりた。
それと同時に自分の選択に対しての不安も襲ってくる。先生の言う通り点滴治療じゃ効果がみられず、症状が悪化していくばかりだったら
……
「わかりました……あの、点滴治療がもし効かなかったら血漿交換をやるとかでも大丈夫ですか?」
「勿論大丈夫です。点滴の方はワンクール一週間
かけて行いますので、一週間後にまた決めましょうか」
「……お願いします」
もし、点滴治療が効かなかったらその時は覚悟決めて血漿交換をしよう。でも、なるべくやりたくないから。っていうかマジやりたくないから点滴でどうにか良くなれー、とひたすら祈るはかりだった。
とりあえず体調的には最悪だったので、先生が去ったあと少しでも寝ようと思ったのだけれど……病棟内のやかましさに加え、看護師さんが来たり、薬剤師さんが来たりと、全く落ち着くことはなく。ウトウトさえできなかった。
「〇〇さん、呼ばれましたので生理機能検査室まで行きましょう」
担当の看護師さんに呼ばれ、別病棟にある検査室まで移動。本当は色々とお話したかったのだけれど、本当に声を出すのがしんどくて会話なんかまともに出来なかった。
(進行上普通に会話しているように書いていますが、医師との会話とかも時間かけて掠れ声で話してます。風邪でめちゃくちゃに喉やられた時みたいに、マジで声出ないッス)
「終わったらまた迎えにきますから、待ってて下さいねー」
そう言い残して、看護師さんはバタバタと戻って行った。
謎の孤独感を感じつつ一人で検査室前で待っていると、名前を呼ばれ検査が始まる。
何か特別な事をするわけでもなく、単純に言われるがままにチューブを咥えて息を吸ったり吐いたりするだけ。
ただ、それだけのことなのだが私はまともに出来なかった
「あー、やっぱり息が漏れちゃいますね。もう一回やりましょうー」
何度かやり直しを行った。というのも、口の筋力の低下によってチューブをうまく咥えることが出来ない。
色々と検査器具を代えてもらったが結局最後まで上手くいかず。
「まあ、仕方ないですねー。これ以上は疲れちゃうと思うのでやめましょう。これもふまえて先生には報告しておきますので」
いつの間にかなんてことない普通のことも出来なくなってたのだなと再認識。ここら辺でやっと現実を見始めた気がする。
よくよく考えたら、ご飯食べれない、声が出ない、目開かない、動作持続出来ないってヤバいですよね。加えて、息苦しさ。
普通に仕事してる場合じゃなかったわ。
ちなみに、肺活量の検査は呼吸筋麻痺の進行状況を見る為の検査のようです。この病気で一番気をつけなきゃいけないのが呼吸の部分なので。
そして、この日の午後から点滴治療が始まる訳ですが……まあ、勿論副作用がない訳がないですよね!
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