自宅療養 一月末
ということで、視覚神経麻痺という診断を受けた私は会社へと連絡。
医者に仕事はどうすればいいか相談したところ、「あー、有給残ってるなら休んだ方がいいよ。麻痺系は療養が大事だからね」と言われたこともあり、とりあえず一週間ほどのお休みをお願いする。
会社の反応も温かく、"無理せず、治ってから戻ってきな"と休養をもらえた。
(ここから、休みが長引きシフトを崩しまくるのはまた先のお話し)
そして、私の自宅療養が始まる。
まあ、自宅療養といっても処方された薬を内服して安静にするだけだ。
相変わらず複視は激しく、下垂の状態も変わらない為片目での生活だった。当然出来ることは限られ、携帯もまともに触れずゴロゴロしながら時間を過ごす。
強いて言うなら音楽やネットラジオを聴いたりはしていたが、あまり気は紛れなかった。
というのも、またしても視覚神経麻痺の後遺症等をネットで調べるという爆死行為をしてしまった私は、割とメンタル的に落ちてしまっていた。
このまま瞼が下がったままだったらどうしよう……そしたら複視だって治らないし……運転も出来ない、仕事も、ましてや普通の生活だって送れないんじゃないか……
そんなネガティブな思考がグルグルまわって、勝手に一人で沈んでいた。
(みんなも気をつけよう! ネット検索からの自爆行為!)
そんな私にとって、唯一の楽しみは食べることだった。
買い物にも行けない為出前館やUberを使いつつ、いつもの1.5倍くらい食ってた。
"あー、こんな家にいて動きもせず飯だけバクバク食ってたらまた太るなあ"と思いつつも、ホクホクしながら食べ続けていた。
昔から、食べることが大好きだ。
ラーメン、揚げ物、お寿司や牛丼、野菜やお豆腐、豆類だってなんだって好きだ。
この世の食物に基本嫌いなものはなく、自分にとって食べることは娯楽のトップに入る喜びだった。
そして、同じように食べること、飲むことが好きな人は沢山いるだろう。
じゃあ、もしある日突然食べることがまともに出来なくなったら、皆さんは何を思うだろうか。
自宅療養、二日目のお昼ご飯だったかと思う。
大きな唐揚げが四つ入ったご飯大盛りお弁当を目の前に、超ウルトラハッピーテンションで意気揚々と食べ始めた。が、その四口目あたりで私の箸が止まった。
"……あれ? 口が、うまく動かない……"
麻痺している訳ではない。
うまく表現できないのだが、フードファイターがデカ盛りに挑む際、後半になると咀嚼力や飲み込む力が、口周りの筋肉の疲労で落ちてきてしまうらしい。
その状況に近いことが、わずか四口程で起きてしまうというのが私の症状だ。
初めはただの違和感だと思った。ただ、食べ続けていく内に違和感は確信に変わった。
唇に力が入らず、食べ物がこぼれ落ちてくる。噛む力が弱まり、咀嚼できない。舌の動きが悪く、飲み込みづらい。残渣物がやけに残る。
明らかな異変だった。
そして、一時的なものではなく全く改善される様子はない……むしろ、症状はひどくなっていく。そして、頭によぎってしまったこと。
"このまま、二度と口からご飯が食べられなくなるかもしれない"
あの時の私の感情はよく覚えている。
それは単純に、深い絶望だった
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