第12話 真実
森の中を転ばないように気を付けながら、さっきの男を探す。夜だから周りが見えにくいけど、目を凝らせばいける。
「…………――っ」
っ、声が聞こえる。苦しげに唸っているような声だ。腕とか吹き飛んでいないよね、大丈夫だよね。
怖がりながらも声が聞こえた方に行くと、地面に蹲っている人影が見えてきた。
「あ、見つけた」
木の影、縄が足に絡まり倒れてる男性を見つけた。怪我をしているようには見えない、ただ倒れているだけかな。それには安心だけど、話と違う。
怪我をしていないみたいだし、人ますはいいか。早く罠を外して広場に行かないと。
「あの、大丈夫ですか? 今すぐに来てほしいので立ち上がってほしいんですが」
「お前は、何者だ」
「ただの通りすがりの記憶消失者です」
「意味が分からん」
俺の事は本当にどうでもいいんだよ。記憶が無いから説明も出来ないし、今の俺の立場も詳しく話す事が出来ない。俺自身、理解出来ていないし。
見たところ、大きな怪我はない。足首に縄が引っかかってしまっているから赤くなっているけど。
一応他の個所も確認してみるけど、他に拘束されているところはない。
紐を張って、ひっかけさせたのか? 暗いからこそできる簡易的な罠だな。
「縄は解きました、早く立ち上がってください。神を呼び出してほしいのです」
「っ、は? どういうことだ」
地面に伏せていた男性が起き上がり、俺に目を合わせてきた。
転んだ拍子にフードが取れたのか、顔を初めてみる事が出来たけど、特にこれといって飛び抜けた何かがある訳では無い。失礼だけど、本当にただの一般人って印象。
こんな一般人が、神を呼び出す事が出来るなんて……。
「詳しく話す事が出来ません。俺も理解が出来ていないので」
「意味が分からん」
「俺もわからないです。でも、今はハンさんを信じるしかありません」
「ハンさん?」
「俺の隣にいた女性です」
振り向きハンさんの方に行こうとするも、男性が考え込んでいて歩きだしてくれない。時間がないのに、早く歩き出してよ。
「お前、どこで――……」
「―――――え?」
☆
森の中を走り、広場に向かう。
男性が話していた事がもし本当の事なのなら、確かに今までの言動や行動は納得がいく。でも、この一瞬で色々聞きたい事が増えすぎた。
早く今の事態を解決し、ハンさんに話を聞かないと。
「っ、なんだ、この音」
「わかりません。ですが、ハンさんが何かをしているのは間違いないです。早く行きましょう。神同士でも、力関係はありそうですし。なにより、ハンさんは今、力を時の神に取られています。今はただの妖の力しかないはずなんです」
「な、なるほど…………」
草木をかき分け走り続けていると、前方から爆発音が聞こえてきた。
派手に色々やらかしているみたいだけど、ハンさんは力を失っているはず。どうやって神を相手にこのような音を出しているのか。
「急ぎましょう」
「あぁ!!」
森を抜けると、目の前にはありえない光景。いや、ハンさんの性格を考えると、なんとなくあり得るような光景でもあるような気がする。
「…………ハンさん」
「おぉ、来たか。待っておったぞ」
余裕そうですね、時間がないとか焦りながら言っていたのが嘘みたいだ。
今、俺達の目の前に広がっている光景は、ハンさんが圧倒的有利な状況だった。
「なんで、アース様が地面に身体を埋めているんですか? 神が地面に落ちていいのですか?」
「いいんじゃいかのぉ」
「よくはないだろ貴様!!! さっさと出さんか!!! 地面に起爆装置を隠しておくなど卑怯だぞ!!」
あぁ、それでさっきの爆発音か。いつ埋めたの、いつここまでの罠を仕掛けたの。未来でも見えていたの? いや、見えていてもおかしくはない。もう深く考えないようにしよう。
「ですが、起爆装置をセットしていたところで、上に浮かんでいた神をどうやって地上に?」
「そこは、童の特技を生かしたまでじゃよ」
「特技? ですか?」
あ、やばっ。なんか、嫌な笑み。これは、結構残酷なことをしたという事がわかる。うん、わかる。
「何が特技だ。我に向けて何本も木をなぎ倒し逃げ道を封じ、上に跳んだかと思えば目にもとまらぬ速さで我を蹴り落とそうとし。避けようとした瞬間、何故か背後から図ったかのように突風。顔を逸らした瞬間、目に砂を投げ込まれ、動揺しているうちにかかと落し!! 地面に足を付けた瞬間に起爆装置発動。何とか爆風に煽られながらも避けると、どこから吹っ飛んできたのか丸太が顔面に。バランスを崩し落ちるとそこは、起爆装置で開いた穴がありはまり。すぐさま貴様が隙間を埋めるように上から土を降らせたのだろう!!」
長文説明、ありがとうございます。
というか、特技? これは特技なのか? 何が何かがわからない。
「早く、時の神を呼んでほしいんじゃがのぉ」
「あ、そうだ。すいません、ハンさんの言う通り、早く時の神を呼び出してください」
後ろにいる男性に声をかけると、困惑しながらもすぐに反応し儀式を始めてくれた。
あ、儀式用の捧げものも準備しないと。
「おや、これは…………」
「え…………」
男性が儀式を始めた瞬間、何故か時の神ではなく、世界の神に異変が。もしかして――……
「ここに来て、まだ諦めていなかったらしいのぉ」
ハンさんのこの言い方、やっぱり!!
この男! 現状を利用し、世界の神を制圧しようとしている!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます