第2話 断罪の殺しあむ

(どこ、ここ)


 私が目を覚ますとそこは知らない場所だった。


 周りに見えるのは人、人、人。人間が居すぎて気分が悪くなりそうだ。


(うるさい)


 大量の人の声が聞こえて頭が痛い。私は愛用の耳栓を付けて自分の世界に入る。


(こういう時は5W1Hだよね)


 まずはいつ、スマホを確認すると時間は私が気絶してから一時間程が経っているから気絶したのは一時間前。次にどこで、気絶させられたのは路地裏。誰が、それは夏帆。なぜ、そんなの知らない。何を、これは私をになるのか。最後にどのように、あの時確かに痺れを感じた。つまりスタンガンかなにか。


(要するに、あの女が私をここに連れて来た元凶ってことか)


 まぁ、そんなのは今更考え直さなくても分かっていたが。


(問題はなんでこんなことをしたのかと、ここが何処なのかってことだよね)


 辺りを見回した感じ、部屋に特徴もなく、あるのは前方に壇上。そして少し薄暗い。


 周りの人に聞こうにも、軽く見た感じでも状況を理解出来てる人がいる感じはしない。


 全員自分の置かれている状況を理解しているようには見えない。


 私のように孤立している人だったり、他の人と情報交換している人がいたりと、していることは様々だ。


(なら、待つしかないか)


 集められたからには、きっとなにかあるはずだ。ここに集めて全員餓死するのを待つとかなら話は変わってくるけど。


 そして待つこと三十分ぐらいで壇上にスポットライトが当たった。


(やっとか)


 私は耳栓を外して壇上に注目する。


『さてさてさて。皆様お集まりかな?うんうん。みんな居るねよかったよかった』


 周りがざわめき出す。それもそうだ。スポットライトが当たっているのに、壇上には誰もいないのだから。


 それに声も部屋の至る所から機械音声のようなのが聞こえてくる。


『きっとみんななんでここに居るのか分からないよね。ちゃんと説明するから話は最後まで聞いてね』


「うるせぇ。俺をさっさとここから出せ」


(絶対いると思った)


 もちろん知り合いを見つけた訳ではない。話を聞かないで喚いて、周りの妨害をする奴は何処にでもいると思っただけだ。


 自分優先で他人のことなど何も考えない最低な人間。


 ああいう人間がいるから私は人付き合いというとのが好きになれない。


『えっとね、ここには百一人のクズが集められたんだ』


(百、一?)


 その数に疑問を覚える。


「無視してんじゃねぇよ。それに誰がクズだって」


『うるさいなぁ。じゃあ帰っていいよ。君に決めたから』


「は? なにを──」


 うるさかった男は姿を消した。


(そういうやつか)


『さてさて。へぇ。さぁ壇上をご注目ー』


 声がそう言うと、壇上にとある映像が投影された。


 それはさっきの男の個人情報。


 そして……。


『いやぁ、クズだねぇ。小学生を攫ってあんなことやこんなことをしてたなんて。ハレンチー』


 壇上にはさっきの男が小学生の女子を襲っている映像が映し出されている。


『まぁ、こういうことね。ここに集められたクズはみんなこういう罪を抱えている。そしてここを出る時にその罪が世間にばら撒かれる』


(罪……)


 これで百一人の理由が分かった。一人は見せしめ、あれで危機感を募らせる訳だ。


 実際そのせいで周りの人間の目つきが変わった。


 疑惑の目から絶望の目に。


『でも安心して。これからやるゲームに優勝したら罪の公開はない。それに加えてどんな願いも叶えてあげるよ』


 それを聞いた途端に周りの雰囲気が変わった。


 絶望から喜びへ。この声の言う通りここに集められたのはクズだけのようだ。


『さてみんなのやる気も出たところで肝心のルール説明をしようか。ゲームは三戦、最初はバトルロイヤルってことで残りの人数が二十五人になるまでの殺し合いだよ』


「死なないんじゃないのか?」


 アイマスクをした私と同い年ぐらいの女がそんな質問をする。


『もちろん。身体は死なないよ。ただ死んだ判定になるだけ』


(なるほど)


 さっきのうるさい男が消えたことから、そういうことぐらいは簡単に出来るのだろう。


『次は五人ずつによる殺し合い。そして最後に残った五人で殺しあって終わりだよ』


(ただ殺し合うだけ? それだと)


「それ、武道を習ってた人しかチャンスなくないですかぁ?」


 全身を布で覆って身体を震わせている私より少し年上のような女が言う。


『そうだね。だから対等にする為にみんなにはスキルが与えられるよ』


(スキル)


 ゲームなんかでよくある、サポート効果みたいなやつか。


『スキルはみんなの罪を元に選ばれるんだ。さっきの男ならみたいなね』


 小学生を攫って犯していた男なら、そんなスキルが付いても納得する。


「でもそれってスキルを使ったら自分の罪がバレるかもしれないってことですか?」


 マスクをしている少女が控えめに言う。


『そうだよ。だからスキルを使うか使わないかは自由だよ。バレるかもで使わないか、使わないで世間にバレるか』


「使わないで勝てばいい」


 今度は幼い腹話術師が手に付けた猫を通して言う。


『それが出来るならね。まぁこれでだいたいの説明は終わったけどなにか質問ある?』


「願いはほんとになんでも叶いますか?」


 とても可愛い子がビクビクしながら質問する。


『もちろんなんでも。君の罪の証拠を消してくれとかでも叶えられるよ』


「分かりました。そもそもやるしかないんですよね」


(そう。おそらくここに連れてこられた時点で私達に選択肢はない)


 もちろん罪がバレていいなら別だけど、ここに集められた人はみんなバレたら自殺者が出るレベルの罪を抱えているはずだ。


 そしてそれを気にしない人はここに呼ばれていないだろうから、殺るしかない。


『じゃあ始まるよー』


 その掛け声と共に私達は何処かへ飛ばされた。


 心の準備ぐらいはさせて欲しかった。

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