『怒涛の生徒会長選挙』編
第49話 生徒会長選挙の作戦会議
「作戦会議を開始する」
「待って……」
昼休みの教室で、堂々と作戦会議を開くやつがどこにいるんだ……。
お前は悪い意味で俺の期待をいつも裏切らないんだね、楽々浦。
「待たん!! あたしは生徒会長になる!!」
「いや、普通に選挙があるから……」
お弁当を食べ終わって、楽々浦は急にまるで事実であるかのように、自分は生徒会長になる、と宣言した。
どうにかこうにかと心の中で使用するための異なる表現を探したのだが、楽々浦は的確に、『生徒会長になる』という添削のしようのない、事実確認のような意思表示をした。
実にシンプルで横暴だ。
「いいんじゃない〜?」
「少将ならいけんじゃない?」
「貴様らはもっとやる気を出せ!! 東雲くんだってツッコミを入れてるぞ!!」
「突っ込ませてるのはお前だがな!!」
誰も好きで昼御飯を食べながらツッコミを入れてる訳ではない。
そこでうふふと笑ってる真白さん、少しは心配してくれてもバチは当たらないぞ?
「とりあえず、東雲くんを生徒会長選挙対策執行部参謀総長に任命する!」
「待って……普通に覚えられないから」
「じゃ、少尉で」
「それ降格されてないか!?」
「少尉はもともと少尉だろう?」
「かけるくん、それフォローになってない……」
俺はつい、楽々浦にも少尉呼ばわりされるのか……そう思うとなぜかもどかしい。
いつものように、
作戦会議が教室で行われた
五月に生徒会長選挙をやるのは、入学してまだ一ヶ月くらいしか経っていない一年生にとって不利とは思うが、二年生との一年間のハンデはどれくらい経っても縮まらないから、どうしようもないことなのだろう。
なので、ゴールデンウィーク明けに生徒会長選挙は無情にも開催されようとしている。
お前はすでに生徒会長みたいなものなんじゃない? っていうツッコミを抑えて、とりあえず待ったをかけたが、意味がなかった。
楽々浦はさらに増長し、俺まで巻き込んだ。さらにやる気のなさそうな三宮とかけるくんに発破をかけて、俺のツッコミを褒めてくれた。
ただ一点だけ、楽々浦は間違っている。
俺は別にやる気があって突っ込んでいるわけではない。
むしろ止めようとさえしてるのに、なぜ俺の意図が伝わらないの?
「佐藤くん! お前もお弁当食べてないでなんか喋りなさい!」
「ぐふッ……!!」
そう、実は佐藤も一緒に昼御飯を食べるようになったのだ。
楽々浦に急に話しかけられて、佐藤は吹き出しそうになるのを必死にこらえた。実に健気だ。
三宮の前の席は佐藤が座っていて、つい最近、『お前ら、仲間はずれするなよ!』と、半泣きで言ってきたから、こうやって、昼休みの時間を共有するようになった。
六人の机をくっつけたら、青春の代名詞のようなスペースが確保された。
確かに、楽々浦たちは内輪ノリみたいなところがあって、必然的に真白の隣にいる佐藤は相対的に寂しい立ち位置になる。俺でもたまについていけない、というか、ずっとついていけてない。
なにかと出てくる佐藤だが、みんな『佐藤』と呼んでるから、下の名前はまだ知らない。
そういえば、真白が何も言ってなかったら、佐藤がロミオをやっていたんだね……。
今更だけど、あの時の俺はすでに真白に惚れているから、真白の勇気ある申告によって助かったと言ってもいい。
「「「「……!」」」」
「なんだ? お前ら、どうしたの?」
「東雲くん! あたしの頭も触っていいぞ!」
「いや、触らないし、普通に弁当箱片付けろ」
「少尉、またラブラブになったな」
「かけるくんは何を言ってるんだ?」
「そういう自覚がないんだ〜」
「自覚?」
「し、東雲、お前はいつこんなことが出来るようになったんだ……」
「なにがだよ、佐藤」
「凪くん……ちょっと恥ずかしいかも……」
真白のほうに向くと、右手の下にある栗色の髪に少し遮られている彼女の顔は、桜色に染まりきった。
「あっ……」
しまった……いつものように感謝する気持ちを伝えるために、真白の頭を撫でていたのが気づかなかった。
「作戦会議を続けよう」
「東雲くん、話題を逸らすな!」
「少尉、男は男らしく堂々と照れたほうがいいぞ?」
「やっと自覚したんだ〜」
「東雲は参謀総長らしく戦略的撤退を選んだんだね……」
違う!
俺は断じて気恥しさに耐えられなくなったわけではない!
真白、お前だけは分かってくれるよね!
「凪くんの……照れ屋さん♡」
うん、知ってた……最近の真白は悪魔だ……。
「とりあえず、楽々浦を生徒会長にすればいいのか?」
「自信ありげだな! 東雲くんよ!」
「お前を見てると、こっちもなぜか自信が出てくるんだよね」
「あはは、褒めすぎ!」
「いや、褒めてない……あと、真白、ほんとに褒めてないから、浮気とか疑わないで?」
ほんとに、最近の真白は可愛すぎるくらい表情が豊かだ。
ほら、今も訝しげな瞳で笑顔を浮かべながら俺を見ているじゃないか。
大丈夫、楽々浦に関しては、そういうことはないから。
「東雲くん、真白ちゃんに作ってもらった弁当はまだ食べ終わらないのか!?」
なぜなら、彼女はこうやって俺を
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ゴールデンウィークの話は書籍化したら書きます!!
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