第2話 汽笛の音

 汽笛の音と共にアルフォードはため息をついていた。

 一か月前の卒業式でアルフォードは自由を手に入れ、幼少の頃からの夢を叶えるはずだった。

 しかし、夢は夢であり叶わないのもまたこの世の常である。

 魔法使いに送られる赤手紙。

 これの意味するところは、国からのお達しであり魔法使いとして現代に地位を確立したのであれば同時にこれに応える義務が生じる。

 そこにアルフォードの意思は関係なく強制であるため、こうして目的地への電車を探しているのだ。

 それも内容が内容だ。

 アルフォードの自由は消えてなくなったのと等しい。

 「はあ、なんで僕だけ」

 肩を外さんばかりに落胆するアルフォードだが現実がそれで変わるわけではない。

 「それなら、もう逃げてしまおうか」

 そう一筋の光を見出した矢先、アルフォードの視界を黒い影が遮る。

 黒いマント着こなし、フードを深く被る女性。

 それはまるでアルフォードの不吉な予感が形を成して現れたかのようだった。

 「君がアルフォード・ブライアスくん?」

 「えっ、あ、はい」

 「良かったー。時間ギリギリだよ」

 電車の汽笛が鳴り、アルフォードは女性に手を引かれるまま電車に乗り込む。

 後ろで電車のドアが閉まる音が聞こえたところでアルフォードは手を引っ張り女性の足を止める。

 「あの、あなたは誰なんですか?」

 女性はふと我に返り、アルフォードに向き直る。

 「あーごめん」

 そう言って女性がフードを外すのと同時に、アルフォードは幼少の頃に見た母親の姿を女性に重ねた。

 「私はリーナ・クレー。今日から君の上司になることになった」

 そう、アルフォードに最初から逃げる選択肢などなかったのだ。もし、逃げることがあったのならアルフォードの母が地の果てまで追いかけてきて、鎖に繋いででも引き戻されるのだから……。

 

 

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