第四章 74  聖剣技爆発・目覚めよ新たな神格


「ディード、親父、大丈夫か?!」


 倒れている二人の下へ駆け寄り、声を掛けるが返事がない。俯せに倒れている親父は気を失っているだけだが、仰向けに倒れたディードは胸に大穴が空いている……。彼女の手に触れるとまだ体温がある。あのクソ女にやられたばかりなのだろう。だがこのレベルで負けるとは、あいつはそんなに強いってのか? 親父の状態を鑑定する、麻痺、毒、瀕死…。この毒とは何だ? 親父は兎も角ディードのアリアお手製装備の耐性を破る程の毒…。ちっ、面倒だ! クソ親父を再召喚する。メキアでの経験値が上乗せされるはずだ。


「召喚解除、さあもう一度来やがれ! クソ親父!!」


 一度解除して消えた親父を再召喚。ステータスも上昇している。バッドステータスも消えたな。便利なもんだ。


「おいこら、クソ親父。何があった? アンタをディードを守る為につけたってのに。何一緒にやられてんだ?」


「悪い…、相手は精霊だ…霊力を扱えるかそれ以上の神気がなければ対抗できねえ。しかも大量の水分を体内に撃ち込まれて水分毒って症状にされちまった。お前も一度真夏の暑い日になったことがあるだろうが? あれの更に酷い感じだ。嬢ちゃんはその状態で無理して立ち向かってやられちまったんだ。俺は動けなかったのにな…」


「なるほど…あの水毒って奴か…。ある意味自然現象に近い…、ただの過剰な水分摂取だからな。だからアリアの装備の耐性やらが機能しなかったのか…。だがもう精霊や神相手の手段は考えてある。父さん、自分の体をよく見てみろ」


「んん? なっ…このオーラは?! これはお前の神気が供給されているのか? そうか、ナギトが神気を放った状態で召喚し直した影響か…。相変わらずお前は型破りなことを考えやがるな…」


 これはアーシェスの魔神器の二柱に、持ち主のアーシェスから神気が提供されていたというところに注目して、神気を強烈に込めて召喚魔法を発動したからだ。魂で繋がっているなら、それに神格に宿るヨルムやルティにもこれが出来る可能性は高い。ぶっつけ本番だが、上手くいったようだな。


「さすがに神衣は無理だが、今なら霊力も視認できるはずだ、イヴァを相手に向かわせたが、今のあいつがどれだけのことが出来るのかわからん。援護に向かってくれ。…俺はディードを何とかする…」


「……ああ、任せた。この里の連中も腹立つしよ…、このまま死なせるなんて目覚めが悪すぎるぜ…」


 踵を返すと、親父はイヴァの援護へと向かった。…俺はまだ口から血が流れている、ディードの顔の方に向き直った。


「くそっ……、まさかそんな相手が来やがるとは…。済まないディード…、お前は懸命に俺達との、ここを守る誓いを果たそうとしたんだな……」


 俺のミスだ…、今の彼女なら多少の相手ならどうとでもなると思い込んでいた。PTリーダー失格だ! 後少しでも早く来ていれば……、悔しさと後悔、大事な仲間を失った痛みと怒りで涙が溢れて来る。


「その忌子いみごは里の汚点、勝手に抜け出したと思えばこの様な悪魔や暴漢共を連れて来るとは。おい、人間の貴様はこの忌子の仲間か何かか? ならば責任を取ってあの悪鬼を斃し、ここから立ち去れ。疫病神共が」


 長老の様な杖を持った高齢のエルフが俺の後ろから声を掛けて来た。同時に里の連中からも次々と罵声が飛んで来る。


「そうだ! そいつがこんな奴らを連れて来たせいだ!」


「忌子のせいだ! 死んで清々したぜ!」


 なるほど…、こいつは確かに腹立つな……。理不尽な目に遭いながら、そんな故郷でも命を懸けて守り闘った誇りある人間に向けていい言葉じゃない…。完全に俺の逆鱗に触れやがった。頑迷固陋な里のエルフ達の方を向いて立ち上がる。そして長老らしき奴の杖を持った右手に指先から凍気を込めた魔力を飛ばした。


 ピシィッ! バキキキキッ!!


「ぐ、おあああっ!! 杖が、腕が氷漬けに……?!、ぐお…、ぎ、……!」


 ジジイの胸ぐらを掴む。


「テメーが長老か何かか…? お前らの下らん排他的な風習のせいで、こいつ、ディードはずっと苦しんで来たんだ。それでもこの里は故郷…、それを守りに来たってのに。双子の後産まれが忌子だと?! お前ら全員馬鹿なのか? そんな根拠の欠片もない、古代文明的なクソな言い伝えか何か知らねえが、ふざけた名前まで付けやがって! これ以上ディードを侮辱するってんなら…、聞け、クズエルフ共!!! テメーらを先に森ごと消滅させてやろうか!!!」


 ゴゴオオオオオオオッ!!!


 強烈な神気覇気による、威圧をエルフの森全体に飛ばす! 気絶する者や腰を抜かし失禁する者などで、里中が一瞬で混乱・恐慌状態になる。


「ひぃいいいいっ!! あ、悪鬼じゃ…、しかもアストラリア様の姿と似ている…! コイツは偽の法律を出した奴に違いない!!」


「どんだけ都合がいい脳の構造をしてやがる。いい加減黙れ、クソジジイ……。今の俺は怒りで神格が大爆発しそうなんだよ…!」


「は…はひぃ……」


「テメーらみたいなクズは森ごと消滅させてやりたいがな……。それは里を命懸けで守ろうとしたディードの決心を無駄にすることになる。だからクソジジイ、お前のその二度と解けない氷の腕一本で勘弁しておいてやる。だが…、彼女があのクソ精霊に勝ったら今迄のことを里の老若男女全て、地面に頭を擦りつけて懇切丁寧に心の底から謝罪しろ、いいな!!! そして俺がアストラリアの偽物とかほざいていたな? 俺の名はカーズ、全ての神々と女神アストラリアの神格を受け継いだ、特異点と言われる存在だ。閉鎖的な里に閉じ籠っている引きニートの臆病者共が調子に乗るんじゃねーぞ。今の条件を飲めないのなら…、俺が直々にこの里を地図から消してやるからな……!」


「は、はは、はぃ、はいっ! しかしイヤミーナは既に死んでいるのではないのですかな? 死者にあの相手を討てるとでも…? そんな奇蹟が起こせるのですか?」


 まあこいつら腹立つし、そう言うとは思っていた。そして先程からアヤに念話を飛ばしているが、応答がない。まだあの神鉄の大聖堂の中なのだろう。仕方ない…、アヤには後から幾らでも怒られよう。ディードはこんなところで死んでいいやつじゃない。それにこれは俺の油断が招いた事態だ。全責任は俺にある。ならば迷っている場合じゃない。彼女の魂が輪廻の輪を通ってしまうと手遅れだ。もう既に覚悟は決まっている。


「黙れって言ってんだよ…、クソジジイ。今度は左手も同じにしてやろうか? いいだろう、じゃあ見せてやるよ、その奇蹟を!!!」


 振り向き、ディードの亡骸の側に膝を着いて座る。


 ザシュッ!


 左手のみ神気を消してから腰の後ろからアストラリアナイフを抜き、右手首を斬りつける。そして溢れ出る血液をディードの胸の損傷部分にボトボトと大量に流し込む。アヤの時と同じで神気は全力で燃え盛っているが、あの時よりも遥かに強力だ。二度と使うまいとは思っていたが…、今は迷っている時間はない!!! ナイフを戻し、祈りを捧げる様に両手を組み、目を閉じて脳裏に浮かぶ祝詞を唱える。


「我が名はカーズ。全ての神々に、正義と公平を司る女神アストラリアの神格を受け継ぎし者。この者に我が心血を通して神格を与え、使徒と成さん! 新たな永き生を我が傍らで享受せよ! ここに血の盟約を完了する!!!」


 カッ!!! ドオオオオオオオオオオオーーンン!!!!!


 夜の暗い天上から光の柱が降り注ぎ、ディードの体を包む! その地面から体が浮き上がり、全身が輝く! これは…、アヤの時とは違う……。俺の力があの時よりも大きくなったからなのか……? ディードの傷が塞がり、バトルマジックドレスや装備が修復され、鮮やかなエメラルドグリーンに輝き始める。そして既に全身から緑に銀の縁取りの強烈な神気が放たれている。そして彼女が目を開くと同時に緑と白を基調とした、金色の縁取りの輝く神衣カムイが装着された。やはり以前とは盟約の効力が比べ物にならない程大きくなっている様だな……。

 血止めをしてから立ち上がり、手を引いて彼女を消えゆく光の柱から解き放つ。


「大丈夫か? ディード…」


「…ああ、やはり…今見た記憶はカーズ様のものだったのですね! こんなわたくしを、二度も救って頂き…、言葉がありません!!」


 大粒の涙を流し、ギュッと抱きしめて来る。いつもなら引き剥がして逃げるんだが、今日は文字通り死ぬまで頑張ったんだしな…、好きにさせてやるか。片手で抱きしめ返して、頭を撫でてやる。 


「ああ、お前はよく頑張った。済まなかったな…、あんなクソ精霊が来るとは思わなかった。悪い、俺のミスだ……。それに盟約でお前を縛ってしまった。もう普通の人としての生を全うできない。ごめんな…」


「いいえ! いいえ…、わたくしが弱かっただけのことなのです! カーズ様との…仲間達との約束も守れずにいたわたくしに、新たな力を与えて蘇生までして頂けるなど…。こんな幸せなことはありません…、うっ…ぐすっ……」


 まだ終わっていない、ぐいっとディードの体を放し、美しく黄緑色に輝く双眸を見て言葉を紡ぐ。


「もう泣くな、お前は一人じゃないんだ、そしてこれからがあの後ろのクソエルフ共を黙らせる時間だ。だが…いきなり神衣が纏えるとは。やはり以前とは何か違うのか…?」


 神衣が装着された自分の姿を見て、驚きながらも状況を説明し始めるディード。


「この世界に来てからのカーズ様の記憶を、あの盟約の儀式の際に一瞬で知識として追体験したのです。その為、神格の扱いや神気のコントロールをまるで自分が今迄してきたことがあるかの様に、自然な形でできたのです。そうか…、これが自らの神気に神衣、そして心の奥底で感じる途轍もない力の輝き…、これが神格なのですね……」


 自分の胸元の神衣に手を当てて、それを確認する様に感じ入っている。


「そうか…、アヤのときは俺もまだ神格に目覚めたばかりで知らないことばかりだったしな。でも今回はその後にできるようになったことも知識として伝わったのか…。だが、武器が問題だ…。一応試してみたいことがある。ライトローズ・ウイングはどこにある?」


「はい、ここに…」


 ディードから少し離れた場所に連接剣の状態で転がっていたLRWライトローズ・ウイング。ディードはレイピア状態に戻し、普通に手にして持って来た。

 やはりか…、これまでの経験から地上の鉱石では使えないとは聞いて来た。だがディードが手にしている俺の創造武器は形を保っている……。俺の魔力とイメージで創造した、これらエリック達の武器は所謂概念武装。形ある素材から創ってはいない。無から創造したものだ。

 ならば…俺が神気を最大限につぎ込んで、ニルヴァーナと同じ波長で創造し直せば、あるいはこの状態でも使えるのではないだろうか…? 散々創って来た御陰で今では武具・魔法創造はSSランク、できない道理はない…はずだ。

 いざとなればニルヴァーナを貸せばいいし、このクソ精霊を屈服させて召喚獣と同様にすれば、精霊武器として使えるかも知れないしな。だが最後のはぶっちゃけ却下だ。仲間の仇を迎え入れるとか、冗談じゃない。

 さて、まあ兎も角試しにやってみますか。


 ガシッ!


 レイピアの柄を持つ。やはり壊れない。


「ディード、鞘も貸してくれ。今からこの武器を神器レベルにまで引き上げる」


「えっ…?! は、はい、わかりました。カーズ様の思う通りにして下さい。ではこれを」


 ディードが腰から抜いた鞘も受け取った。さあ神気を全力で放った状態での創り直しだ!


「はああああ……、いくぜ! 俺の神気よ、ニルヴァーナと同様の力でこの剣に集え!!!」


 カッ!!! ピキィイイイイイイン!!!


「来い、ニルヴァーナ!」


 バシッ!


(この剣に波長を合わせて神気をつぎ込んでくれ、俺と魔力の波長は同じだ、いくぞ)


(相変わらず面白いことを考え付くものよ。いいだろう、神器を超えるものを創ってやろうではないか!)


 カカアアアアッーー!!! ジャキィイイインン!!!


 ニルヴァーナと重ねて持ち、同調させる!


(主カーズよ、我らが神気の波長をこの剣に送った。それでも破損はしておらん。見事だ)


(ああ、感謝するぞ、ニルヴァーナ)


 更に輝きを増したライトローズ・ウイング。いや、これは寧ろ……


「受け取れディード、これなら神器にも後れを取らん、生まれ変わった神剣ライトローズ・ウイングだ!」


 鞘に納めたままディードへと渡す。


「これは…、カーズ様の神気を感じる。それになんて強い力…。これなら全力で振るえます!」


「死者をこの世に喚び覚ますとは…、ネ、ネクロマンサーか……」


 おーおー、好き勝手言ってくれるじゃねえか、このジジイは…。


「ネクロマンサーはアンデッド使いだろうが、馬鹿なのか? これは俺の神格を譲渡し、新たなる生を与えた蘇生だ。引き籠りはそんなこともわからないのか……。まあいい、時間の無駄だ。行け、ディード!!」


「はい!」


 ドウッ!!!


 おー速い速い。もう更新されたスキル光歩を使ってるな。俺は新生ディードの闘いを高みの見物させて貰おう。神衣を纏った以上、あんなクズ精霊に負けることなど万に一つもないからな。

 クレア達騎士団は避難して貰うか。念話を飛ばして、離れておくように伝える。エルフ達は今はどうでもいい、放っておくか。






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「さあさあ、ボクの仲間に酷いことをした分をやり返させてもらうのさ。さっきカーズの神格の爆発と、神気を間近で感じたときに自分の中の神格が反応したのさ…。まだ神衣は無理そうだけど、これくらいはできるのさ……、スゥー、ハァーーーーーーーーーッ、リミット・ブレイク限界突破!!! ビースト・モード猛獣形態!!!」


 ゴオオオオオゥッ!!!


 イヴァリースのポニーテールの黒髪が白、いや輝く銀色に変化し、体から強烈な闘気と、まだ全開ではないが僅かに神気が放たれる!


「フッ、たかが獣人が粋がるな! さっきの特異点よりは神気も小さい。受けろ! デッドエンド・フレイムトルネード!!!」


聖剣技せいけんぎ水龍演武すいりゅうえんぶ


 ズヴァシャアアアアア!!!


 放たれた炎の竜巻を水龍のオーラを纏った聖剣ライトブリンガーが鮮やかに斬り裂く!


 シュウウウウウゥゥゥ……


「なにィっ……、ただの水の剣技で精霊力をかき消すとは…」


 纏っていたタリヒマーレの炎のオーラまでも消火される程の威力!


「アガリアレプトとか言ったかなー。お前の霊力は魔力と混じり合って安定していないのさ。特異点のアヤの方が切り替えが格段に上手かったのさ。そして精霊武器は神気に耐えられる強度でも、霊力は所詮魔力とは逆の流れを持つ、同レベルのモノ。今は僅かでも、神気に纏われたボクの闘気の方が上ということなのさ。じゃあカーズの言いつけ通り、少し遊んでやるのさー。ほらほらーかかって来るのさー」


「おのれ…、馬鹿にしてくれる…。貴様、名は何という?」


「ん、ボクはイヴァリースなのさー」


「イヴァリース…、なにっ……?! 神魔大戦で天上の神々を苦しめたと言われる、呪われた元剣聖の魔神と同じだと…?!」


「記憶はないけど、多分それなのさー。それにカーズが呪いを解いてくれたから、今は剣聖に戻ったのさー」


「面白い…、伝説の剣聖の実力、試してやろう。いくぞタリヒマーレ!」


 アガリアレプトが再び炎の化身となり、装備も炎の様に赤く変化する。


 ゴガンッ!


 だが突き出したランスの一撃はライトブリンガーの柄の底のみで叩き落とされる。


「ニャハハ、軽いのさー。じゃあボクもこの剣のもう一つの形を見せてやるのさ。『一つ目の扉を開け・ライトブリンガー』」


 ピキィイン!! ジャキッ!


 イヴァリースの持っていた直剣が両剣に変化する。

 両剣、双刃刀そうじんとうやツーブレーデッド・ソード、ツーヘッド・ソードにダブル・セイバーと様々な呼ばれ方がある。その形状は柄の両端に刃が付いており、2本の剣が両手持ち状態となる。また、一般形式の剣の柄尻を合体させ、この形態を取る場合も存在する。

 別称として双頭刃式そうとうじんしき(槍等の穂先の部分は『頭』と別称される為)とも呼ばれる。これは剣だけではなく斧や槍等、他の武器(特に長柄武器の穂先=頭を両端に付け双頭刃式にする場合が多い)でもこの形式を取る物が存在する為である。

 実物を目にするのは非常に稀だが、中国には同形式の槍が存在する他、中世にインドの中西部で『ハラディ』と呼ばれる双刃の短剣(シリアンナイフ)が存在し、古代ローマでは『ピルム・ムルス』と呼ばれる木製の槍も存在したとも言われる。だが実際には所謂ファンタジー武器とされ、実用性に乏しい浪漫武器と言われる代物だ。


「何だ…? その武器は…、両端に刃が付いているだと?! 馬鹿め、そんな武器がまともに振るえるものか! 次はこれを喰らえ、デスペラード・フレア荒れ狂い揺らめく太陽の炎!!!」


 ゴアアアアッ!!!


 炎でできたランスから辺り一帯を炎の海にする様な一撃が放たれる!


「太陽の表面にある黒点周辺で起こる大規模な爆発を太陽フレアと言う。本来それは太陽の彩層の一部で爆発によって起こる閃光現象。強い太陽風を発し、大気上層や地磁気の攪乱を起こすものだが、これらは通常上空の磁気圏や大気圏を通過する際にほとんどすべてが減衰してしまう。だが、それがこの地上で起こるとどうなると思う? 太陽風が爆発的に放出され、それに含まれる電磁波・粒子線・粒子などが、この大地に甚大な被害をもたらす現象、太陽嵐が遮るもの無く発生するのだ。そして人族の体には微弱だが電気が流れている。それはこの大地も同じ、遮るもののない太陽フレアに太陽嵐で1000万℃を超す高温のガスが作られ、狂った磁場によってお前達の動きにも異常をきたす。さあ、その荒れ狂う小型の太陽の様な炎の大地を渡って来れるか?」


 ガキィイン!!!


「聖剣技・氷龍舞台ひょうりゅうぶたい


 ビシッ…ビキキキキィイイイイイイン!!!


 イヴァリースが大地に突き立てた剣が炎を吸い上げ、両刃となった上部分の刃から凍てつく嵐が巻き起こる! デスペラード・フレア荒れ狂い揺らめく太陽の炎を完全に無効化し、地面は凍結した。


「なっ、何だと?! あの高熱の磁場を全て凍りつかせるなど……、どうなっているんだ?!」


「一々説明が長いのさ。要はそこを凍らせたら終わりなのさ。じゃあ次はお前が凍り付く番なのさ…。舞え! ライトブリンガー!」


 両刃となったライトブリンガーを投擲すると、まるで糸の付いた手裏剣の様に回転して自在に動き回り、アガリアレプトに襲い掛かる!


 ギィン! ガギィイイン!!!


「ぐっ…?!」 


 受けたランスの部分が凍結する!


「『二つ目の扉を開け・ライトブリンガー』!」


 ヴヴッブブブゥンッ!!!


 一本の両刃刀が分裂し、10個の手裏剣の様になって放たれる!


 ガギギギィイイイン!! ギィイイン!! ガガガッ!!


「ぐあ…っ…!? 何なんだこの武器は?!」


 片刃からは凍気、その逆からは吸収した高熱の炎が放たれる!


 バシッ!


 手元に返って来たライトブリンガーの一つを掴むと、残りは消え一本の両刃刀へと戻った。そしてそのタイミングでバサトが声を掛けて来る。


「回復にパワーアップ完了だ、猫耳ちゃんよ。ちょっと嬢ちゃんの闘いに見入っちまって遅れたぜ」


「クンクン…、おおー何故か神気を感じるのさー。じゃあバサト交代するのさー、アイツつまんないのさー」


「貴様…、馬鹿にしやがって…! 我が身を纏え、エレーロギャップ!」


 アガリアレプトが水流を纏い、ランスが巨大な水で構成された大剣へと変わる。


「マジかよ、アレがつまんねえのか? すげえな…。まあ俺もさっきの借りは返してやりてえしな」


「何をこそこそと話している、もう一度受けろ! ポイゾナス・メロウ!!!」


 振るった水剣から先程と同じ、体へ無理矢理吸収される大量の水流が発射される!


「聖剣技・土龍壁どりゅうへき


 ドゴガアアアッ!!! バシャアアアア!!!


 前方の巨大な規模の大地が剥がれて、分厚い壁の様にめくれ上がり、ポイゾナス・メロウの水分を吸収、無効化する。


「水を撒くのは花壇だけで充分なのさー」


「お、おお…、すげえな猫耳嬢ちゃん…、俺らはアレにやられったてのに」


「攻撃は基本的に喰らわないことが鉄則なのさー。一発が致命傷になる可能性もあるのさー。防げないなら躱せばいいのさー」


「簡単に言ってくれるぜ…。剣聖ってのはすげーんだな」


「ニャハハ―、どうやってなったのかはもう昔過ぎて覚えてないのさー。じゃあバサトー、後はよろしくなのさー。ディードも復活したみたいでこっちに向かってるのさー。ボクはカーズの膝の上に座っとくのさー。きっと褒めてくれるのさー」


 そう言って踵を返し、歩き始めたイヴァリースの横を猛スピードでディードが通過して行った。


「お?? おおー、凄いのさディード。あれなら楽勝なのさー!」




 少し離れたところの岩の上に座って、闘いの行方を見ているカーズの下へとイヴァリースは駆け出した。




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新生ディードの闘いは、

エルフの森はどうなるのか?


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