第一章 12 本登録からの報酬計算
「では、本登録に進みますね」
マリーさんがガサゴソと奥のデスクで何やら作業している。俺の両隣にはエリックとユズリハ、周りに他の冒険者達もわらわらと集まっている。狭いんだけど。しかもこんな地味な作業なのに何でみんなが来るんだよ。別に珍しくないだろ。初心者の登録なんて。
そうこうしているうちにマリーさんが小さなカードを持ってきた。これがギルド証か? 見たところ何も書かれてないが……。
「それに魔力を通して下さい。軽くでいいですから」
「わかりました」
そう言って、渡された小さなカードに魔力を通す。すると見る見るうちに色々な情報が浮かんでくる。しかも俺の顔が写真のように付いている。名前とランク、Fか。てか何だこの技術! すげーよ! こんなんオーバーテクノロジーだろ? 何でこれが良くてカップ麺はダメなんだよ! 設定がガバガバ過ぎてもはや謎だよ!
「すごい……、何だこの技術……」
「これは世界でも最高峰の魔導士達が編み出した技術の結晶です。これには刻印された本人にしか情報が開示できないようになっていて、クエストの確認や身分証明としても使用します。絶対に失くしちゃダメ! っですよ。いいですね」
「はあ、分かりました。大事に保管しておきます」
「良かったなカーズ! これで一緒に冒険できるぜ。いやー目出てえ!!」
バンバンと背中を叩かれる。エリック痛いぞ。
「素敵な仲間が加わったわね、私もワクワクするわ!」
頭をよしよしと撫でてくるユズリハ。いつの間にか仲間になってるし、何でこんなに気に入られたんだ?
「それではクエストの受注と達成報酬等ですが、そこのボードにあるものを受注するときにその貼ってある依頼書をカウンターまでお持ちくださいね。そうすればクエスト受注です。中には期限付きのものや高ランクの依頼もありますが、1ランク上の依頼以上になると、受注できるかは要相談になります。失敗した場合の違約金が発生することもありますから注意して下さいね。クエストの達成回数や達成難易度などで貯めた
カウンター越しにギュムーっと顔を腕で抱きしめられる。ヤバい、おっぱいが凶悪で息が出来ない! 周りからは、おおお――!!!! って声が聞こえるし、嫉妬っぽい視線も刺さる、ありがたいけど、素直に喜べない。
「あーマリーさん! ずるーい!!」
ユズリハか? 良かった助けてって、ムギュー!!! お前もかよ!!!
「あー私も私もー!」
「カーズマジ可愛いー-!!!」
「超いい匂いするー!!!」
なんかワイワイと他の冒険者の女性も集まって来たみたいだ、収拾が付かん。とりあえず息をさせてくれ!!!
・
・
・
ようやく落ち着いたが、俺はもうへとへとだ。おっぱいで窒息するところだった。ありがたいけど、それはさすがに危ない。もう転生したくないぞ。危うくヤヴァルヴァーナに旅立つとこだったぜ。まあとりあえずみなさんおっぱいの感触ありがとう。心の中で拝んでおくよ。なむなむ……。
さて落ち着いたところで、質問か。うーん、そうだなあ。
「あのですねー。ここに来る前に訓練がてら結構な数の魔物を狩ったんですよ、ギルドで売れるって聞いて。後、偶然盗賊団みたいなのにも出くわしたので殲滅して捕まえて来たんです。もし狩った魔物とかで今達成可能な依頼があれば纏めて報告してもいいですか?」
「? はい、もちろん構いませんが。ってどこに捕まえてるの? 物証がないと……」
「あ、はいここに」
俺は上を指差す。マリーさんや他の冒険者もポカーンだ。まあいいか、今更だし、さっさとやってしまおう。
「悪いみんな、そこ場所空けてくれないかな? 物証を出すから」
みんな??? って顔をしながらもスペースを空けてくれた。俺はそのスペースの真上に
ドサササササササササ――――――――ッ!!!!
空間に開いた大きな魔法陣のような所から、ここ2日で狩った魔物達の新鮮な死体が落ちてくる。うむ、山が出来てしまったし、スペースが足りなくて何人か巻き込んでしまった、ごめんよ。意外に結構狩ってたんだな。数百はある。そして最後に殲滅した盗賊団の氷漬けを隣に、ガシャーン! と出した。
「今のは
「いや、飛んでたから魔法の練習に丁度良かったので、何発か当てたら落ちてきましたよ? そんなにヤバいのそれ?」
「ああー、この子は……。規格外過ぎてもう……。それに氷漬けのそいつらが盗賊?」
「はい、えーと何だっけ、暁とか言ってたな。名前負け感が半端ない雑魚連中でした」
「こいつは暁の盗賊団の首領! 指名手配犯じゃない! 他にも指名手配の部下達まで……。中々捕まえられなくて困ってたってのに……。これは、忙しくなるわ。カーズさん、ギルド証を!」
よく分からないがとりあえず処理に必要なのだろう。マリーさんに手渡した。
「お前マジで半端ないな……。さすがにビビったぜ」
エリックが俺の肩をポンと叩く。
「この非常識がこれから日常になるのね……」
もう一方にユズリハが手を置く。
「? そうなのか?」
うーむ、分からんがまた何かやらかしたのだろうか? アリアが持って行けって言ったんだしな。俺は悪くないはずだ。
「ハハハ! とにかくさすがカーズだ! 俺の目に狂いはなかったぜ!」
「何でアンタが威張ってんのよ! ていうかカーズ? ここ2日ほどほとんど魔物が見えなかったのはアンタが根こそぎ狩ってたってことね、おいで、カーズ?」
おいでおいでと手を動かしているのに迫って来る。
「いや、なんか怖いし、怒りながら笑ってんじゃん!」
ぐりぐりぐりぐり!!! またかよ、痛い!!!
「アンタのせいでこっちは商売あがったりよ――!! ソロでこんなに狩り尽くすんじゃないわよ――!!!」
ぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐり!!!! 本気で痛い!!!
「悪かったよ!! もし報酬がたくさん出たらみんなに奢るからさ!! ここ飲食もできるんだろ!? だからぐりぐりすんの止めてくれ! ほら、おっぱいも当たってるって!」
痛い痛い!! しかもほぼ体の正面に頭を抱えられているから、おっぱいで窒息する、ご褒美なのか罰則なのかもうわけわからん!
「アンタみたいなカワイイ顔した子におっぱいが当たろうと別に何ともないわよ~~~!!」
ぐりぐりぐりぐりぐりんぐりん!!! 痛い、今ねじっただろ!
「と、とにかくギルマスに相談と魔物の買い取り、犯罪者の報告、それに伴うGPの加算でランクアップなどの計算をしますから、待っていてくださいね!」
マリーさんはそう言うと、他の職員や、生産ギルド、商人ギルドにも声をかけて周り、素材の買取やら何やらで他のギルド職員もバタバタと、とにかくみんな忙しそうだった。多くの人が立ち合い、暇な冒険者も手伝っていた。なんかごめん。
ワイバーンは珍しい素材が多いので、オークションに回されるらしい。そして賞金首は衛兵達が来て引き渡されていた。俺はエリックとユズリハの三人でテーブルを囲み軽い軽食を取っていた。
「ここまで規格外だともう笑うしかねーな!」
「しかも
うーん、また色々と注目されてるなあー。でも
俺は二人とともに作業が終わるのをしばし待つのだった。
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一話ごとの文字数が多いので、その回一話でがっつり進むように構成しております。
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