第一章 9 中立都市でのギルド登録
濃い、濃ゆ~い1日+半日。やっとのことで街だ。アーヤは公務に1週間。時間はある。俺はもっと自己研鑽して強くなりたい。魔力コントロール、剣術、魔法の加減など、上げればきりがない。まずは冒険者ギルドだ。
(なーんかギルドって絡まれそうなイメージなんだよねー)
《ん? どうしてです?》
(そうだなー、結構お約束として、お前みたいな弱そうな奴が冒険者になれるかよーって感じでいかつい荒くれな見せかけのかませ犬マッチョに絡まれる。んでまずパターン①、実は結構いいやつでこっちに色々親切にしてくれるってやつ)
《じゃあパターン②があるんですね?》
(そうそう、②は見た通りの雑魚いチンピラで露骨に絡んで勇者的な主人公にボコられる。かな?)
《ほー、じゃあ他にもパターンが?》
(そうだなー、転生したばっかりでこっちの通貨がなくてギルド登録できないで右往左往する情けない主人公パターンかな。って俺はこの世界のお金持ってるのかアリア様よー?)
《一応
(おおーさすがにそういうとこは抜かりないね。ってこの世界の通貨って何て言うの?)
《当ててみて下さいー》
(えー?)
《だからー、当ててみて下さいよー》
あ、これはめんどくさくなるやつだわ。当たるわけないだろ、こいつめ。
(あーあー、なんか耳が急に聞こえなくなったぞ、耳鼻科行かないとーやばーい(棒))
《あー! めんどくさいと思ったんでしょうカーズさん!》
(いやー何も聞こえない、ヤバいなーこれはー(棒))
《ちょっとー! カーズさんってばー!》
俺はアリアをあしらいながら街の中を歩く。お、屋台が並んでていい匂いがするぞ。
(そういえば何も口にしてないし、そろそろ何か食べた方がいいな。美味そうな匂いもするし)
《そうですねー、そろそろ補給した方がいいですよー》
肉の串焼きを売っている店を発見。ビッグ・ボアの串焼きかー。ここにしよう、少し補給するだけだし。
「すいません、このビッグ・ボアの串焼きを3つ下さい。それに果実ジュースっていうのも1つ」
恰幅のいい店のオヤジが威勢よく応える。
「へいらっしゃい! ボア串3つに果実ジュースね、お嬢ちゃん可愛いから1本はサービスだ。150ギールな!」
異次元倉庫から財布を出す。今時がま口とは……詰め込み過ぎてパンパンだし、NA○UTO財布かよ。そして中から丁度の額の貨幣を渡した。もう嬢ちゃんと言われても否定するのがめんどくさい。気にしないようにする。そして『へいらっしゃい』は、どの世界でも共通語なのかね(笑)?
「そこいらにベンチがあるから適当に座って食べな! また来てくれよー!」
「ありがとう、また来るよ」
店のある広場には確かにベンチやテーブルつきの椅子もある。せっかくだしテーブルつきの椅子に座ろう。焼いた肉の匂い、いいね旨そうだ。早速ボア串にかぶりつく、お、美味い!
「美味いなーこれ、空っぽの腹に染み渡る。歯応え的にも丁度いいし、肉汁ジューシーなのにくどくないし、うんとりあえず美味いからいい!」
《食レポ、壊滅的ですねカーズさん(笑) 視聴者もがっかりですよw》
(いや、視聴者おらんだろ。誰に配信してるんだよ? それに美味いんだしそれで充分だろ。美味いは正義だ、可愛いと同じなんだよ)
《私の心のメモリーカードにこう、焼き付けておこうかなと。そして『カーズ戦記』という本を出すのです!》
平常運転過ぎる。そして相変わらず意味わからんことばっかり言ってる。なんだよ『カーズ戦記』って? 誰得だよ?
(いや、マジ絶対やめてくれよ。絶対脚色してネタ本みたくするだろ? 俺の黒歴史本にするに決まってる)
《しませんよー、カーズさんと私の姉妹愛溢れる作品にするのです( ー`дー´)キリッ!》
(それ戦記じゃねーよ。ネタ本だろ、そして俺は男だ)
2本目の串を食べ終えてから、果実ジュースを飲む。さっぱりしててうまい。
「おーこのジュースもこう甘すぎず、さっぱりとしててー、もう何て言えばいいんだろう、うんうまい」
美味ければいい、美味いのがジャスティス。
《ププッ、やっぱり食レポ壊滅ですねー(笑) いまの面白食レポは私の心のメモリーカードに永久保存しておきますから(笑)》
(早く消去しろ。てかアリアは何か食べたりしないのか? 神様でも腹は空くだろ?)
《さっきカップ麺を食べましたよ。やっぱり地球の食べ物は美味しいですねぇ》
こいつ……カップ麺だと? 俺が食べてーよ。何食ってんだよ。てか俺にもくれ!
(マジかー、世界観壊れるなあー。俺の異次元倉庫にも入れてくれよ。さっきの問題に答えるから、ギール! お金の呼び方、正解だろ? うえーい、カップ麺ゲットー!)
《汚い……。くぅー、やりますねカーズさん。まさか買い物した後に答えるとは。卑怯過ぎて笑えます。しかしカップ麺はそちらではオーバーテクノロジーですので送れません。 ああ、本当は一緒に食べたいのに!》
(カップ麺がオーバーテクノロジーって、どんな基準なんだよ。こっそり街の外で食うならいいだろ?)
《いやー実に残念ですぅ。カップ麺食べて『
こいつめ、人を煽る才能はピカいちだな。
(まあ、カップ麺でそんなの勘弁してもらいたいけどさ。どこまでが超発展なんだよ、もうかなり設定ガバガバだぞ)
3本目の串を食べて、ごみを始末する。少しは腹の足しになったし、ギルドに行くかな。
《ふむ……、確かに肉汁ジューシーですねぇー。くどくないし。ジュースも中々グッドです》
なんで俺が食べたものの感覚がわかるんだ?
(アリア俺が食べたものを食べてるのか?どういうこと?)
《えーとですねー、カーズさんの因子は私と同じなのでー、五感を同調させて感覚を共有してるんですよ。だから今後も美味しいものを食べてくださいねー》
(そんなことができるのか。なら俺にもカップ麺の感覚を共有してくれよ。ていうかその要領で結界とか張ってたんだな)
《んー、逆からだとかなり魔力を使うのでオススメできませんねー。また女の子になりたいですかー?》
(あ、いいやもう。何となく察しはついた。因子? の母体がアリアだから俺がその力を使うにはアリアの力をこっちに引っ張らないといけないってことだろ? だから俺が同じことをするにはかなり力を使うってとこだろ?)
《そうでーす。だからお勧めしませーん。いざというときはあるかもしれませんけどねー》
(やっぱな。当たらずも遠からずだ。そんないざというときは想定してない。そんなヤバそうなことには関わらないよ。はいはい、ギルド行くぞー)
《あははー、絶対今のフラグですよー(笑)》
(はいはい、もういいってば)
アリアが笑いこけている間にさっさと行こう。しかし、こういった街並みは何だか懐かしい気がする。何でだ? 幼い頃の感覚を思い出すというか……。俺はこんなとこには来たことはないはずだ。何も思い出せないし……。
「ぐっ……!? 何だ、頭が痛い?!」
《カーズさん、無理矢理記憶をこじ開けてはダメです!精神が傷つきますよ!!!》
「くっ、わかった……」
思い出そうとするのを止めると、頭痛はすぐに消えた。何だったんだ今のは……?
《カーズさんが無意識に忘れたいと思っている記憶を封印しているんです。だから無理矢理こじ開けるには相応のダメージが返って来ますよ。だから無理しないでくださいね》
(わかった、気を付けよう。また精神を壊すなんて嫌だしな)
《カーズさんの精神が強くなるに連れて徐々に鍵が外れるようにしてあります。時期が来れば視えるようになりますから》
(そうか、ならいい。俺自身がそう望んでた記憶なら猶更見たくない)
ギルドへ向かおう。確か来た時に通った南口の方に総合組合とかいうのがあったはずだ。今までは景色に気を取られていたが、道行く人々に目をやると、人間ではない種族もいることに気づく。確かに色々な種族がいる。ケモ耳の人々は獣人か、頭に角が生えているようなのは魔族か、耳の長いのはエルフ、おぉ…すげえ。これぞファンタジーって感じだ。羽が生えている人、天使(有翼人と言うらしい)、もいる。頭に輪っかはないのか…なるほど。
程なくしてギルドに着く。総合組合って一体何なんだろう? 冒険者ギルドって言うのとは何か違うんだろうか? 入る前にアリアに聞いてみよう。
(なあアリア、何でギルドが総合組合なんだ? 冒険者ギルドっていうものじゃないのか? まあファンタジーにも色々設定があるんだろうけどさ。詳しく教えてくれ)
《はいはーい、アリア先生にお・ま・か・せー!》
毎回うぜえ……いいから早く教えてくれ。
《総合組合と言うのは、冒険者だけでなく、生産者、商人などそういう国の中の仕事の受付を国が行っているってことですね》
(ほうほう、他の職種の人たちも依頼を受けたり出したりできるってことか?)
《まあ概ねそういう認識で大丈夫ですー。冒険者は国、生産者、商人や一般の方が出す依頼に至るまで、幅広い任務をこなします。生産者はもの創りのために必要な素材を冒険者ギルドに頼みますし、商人は生産者が創作したものの価値を管理したり、下請けして街のお店に流したり、他国へ輸出したり、輸入したり、商品の関税や適正価格などを国と決めたりします。国が経営しているのは、どの国、どの種族が運営していても一定の基準をその国々が管理することによって暴利や独占を禁止し、無茶な値上げや値下げが起こらないように決めているからです。あまりにも希少なものなどはオークションに出されますけどねー。どれも国にとっては必要なものなので別々にそれぞれのギルドを建てるよりも1か所に纏めてしまおうってわけです。国営なのはどこも同じですからねー》
なるほど、どこからでも依頼を出したり受けたり出来るし、不平等が起こりにくくなるように国営にして独占などを防ぐのか。国家経営のお膝元でそんな行為はできないもんな、中世の封建社会とは思えない経営の仕方だ。よし、大体は分かった。基本的に俺は冒険者ギルドの窓口で問題ないだろう。
(OK、じゃあ行こうか)
《ぶらじゃー(笑)》
……俺はそういう下ネタはスルーするよ? 神様のくせにとんでもねーわ。
大きな扉を引いて開ける。人が多いな。明らかに冒険者って感じのいで立ちの人や、生産者や商人って感じの人もいる。窓口がここだけだし、そりゃあ人は多いよな。しかも中で飲食ができるようにもなっている。食事や飲酒してる人もいるし、結構便利だな。
さてさて冒険者の受付はっと。右手の奥の方だ、結構荒くれな奴らがたくさんいる。どう見ても生産や商業に携わっているとは思えない。さっさと終わらせて売るものを売ろう。窓口のカウンターへ俺はすたすたと歩く。いやー、視線が刺さるなー、女性の冒険者も結構いるんだけどなあ。とりあえず居心地が悪い、手早く要件を伝えよう。カウンターのメイドっぽい恰好をしたお姉さんに尋ねる。
「あのー、冒険者の登録をしたいんですが。すぐにできますか?」
「いらっしゃいませ、私は受付代表のマリアンナと申します。初めての方ですか?」
「はい、そうですね。今日この街に着いたところです」
「では書類などの処理をするので、お名前をお願いします」
(アリア、
《そうです、それを名乗れるのは貴族階級になってからです。一般の人が名乗ると問題になります》
どんな問題だよ? と思いながら答える。
「カーズです」
「カーズさんですね。それではこちらに書類を用意したので、そちらのテーブルで記入をお願いします」
マリアンナは手慣れた手つきで書類を用意し、テーブルに案内してくれた。
「それでは記入出来たら此方へ持って来て下さいね」
ウインクされた。愛想のいい女性だ。美人で綺麗な長い金髪、これは荒くれ共に人気あるだろうな。おっぱいも大きいし。そう、おっぱいは世界遺産。尊いものなのだ。
(普通に記入したらいいのか? この世界の文字なんて書けないぞ)
《大丈夫です、『言語理解S』でカーズさんの読める言語に変換されますし、書いた文字も伝わるように変化します》
(マジか、すごいなこのスキル! そう言えば街中の文字もあまりにも普通に読めたから気にも留めなかった。外国語を教えてた身としては複雑だわー)
確かに言語理解の効果が出ている。日本語やら英語やらが混ざったように見える。謎!
「えーと、名前: カーズ、性別: 男、 ジョブ:
《ふあああああぁ――。食べたら眠くなってきましたー、ムニュムニュ……》
こいつ、面倒なんだな。寝やがった! まあいいか。これくらい自分で書ける。
(ステータス・オープン)
・
・
・
「出来ました」
カウンターのマリアンナのところに持っていく。取り合えず埋めるところは全部埋めた。
「え、えーと、カーズさん?」
ん? 何だろう書類と俺を交互に見て、不思議そうな顔をされる。
「どうかしましたか?」
よくわからんが聞いてみる。
「だ、男性なんですか!!!???」
「「「「「ええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!」」」」
「??」
おおっとこれは……、どのパターンなんだろうかね?
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これは、どのパターンかな?
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一話ごとの文字数が多いので、その回一話でがっつり進むように構成しております。
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