ダンジョンと石になるスキル(仮)

ミンイチ

第1話

 子供の頃、僕は事故に巻き込まれて右手首から先がなくなった。


 それによって日常生活は大きく変わったが、そこまで不便だと感じることはなかった。


 というのも、鉛筆を本格的に使い始める前に右手がなくなったから、左利きに矯正するのが大人に比べると簡単だったからだ。


 それでも、その腕のことで周りの人からかわいそうだと言われたり、同じ歳の子に揶揄われたりもした。


 僕はそんなことを言われても気にしなかったが、先生に言われたりして揶揄ってきた子とかが謝ってくることもあった。


 最初の頃はそれも鬱陶しいかったけれど、今はどうでもよくなっている。


 そんな生活を続けて、高校生になってから少しして世界が変わった。


 世界中で、それぞれの地域の標準時で10時になった時に震度4〜5ほどの地震が起こり、不思議な力を持つ人と、ダンジョンと呼ばれるものが現れた。


 本来の意味の『監獄』や『地下牢』としてのダンジョンではなく、怪物がいる迷宮のようなものとしてのダンジョンだ。


 ダンジョンにいる化け物──モンスターは銃火器でも倒すことができたが、ダンジョンの奥に進むほどそこにいるモンスターは強くなり、銃が効かなくっていった。


 しかし、銃を使ってモンスターを倒した人と持っていた武器は強くなり、生身でも対抗しうることがわかった。


 ちなみに、銃が強化されても使っている火薬と弾の大きさは変わらないので、銃の威力は変わらなかったようだ。


 次に、不思議な力を持つ人についてだ。


 不思議な力を持つ人は最初の頃は少なかったが、時間が経つにつれて多くなっていき、世界中の人が不思議な力を持つようになった。


 力が強くなったり、早く動けるようになったりするような身体能力的なものもあれば、火や水などを操ることができるという魔法のような力もあるし、体が変化するようなものもあった。


 僕の不思議な力は、魔法のような力と体が変化する力の二つが混ざったものが発現した。


 なかったはずの右手がのだ。


 右手がのではなく、のだ。


 見た目は黒くてとても硬い石のようなものでできていて、ボール状のものが指の関節の代わりに動く。


 そして、手首とその手はつながっておらず、1〜2センチほどの隙間があり、そこは紙や他のものを普通に通すのだ。


 さらには、手の感覚が備わってもいた。


 これでずっと手が残るのかと考えていたがそう簡単にはいかず、定期的にモンスターの化け物を倒さないと右手は消えてしまうようだ。


 同じような境遇の人は他にもたくさんいたようで、新たに設置された協会で「冒険者」としての資格をもらい、ダンジョン内どんな怪我をしても自己責任だという契約書にサインをすればダンジョンに入ることができるようになった。


 そうして強くなった人々はダンジョン内のモンスターを倒すと手に入れることができるアイテムを得ることでお金を稼ぐようになっていった。

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