第48話 加護枠が三つ

 ギルドに行き、水晶玉を使わせてもらう。

 クラリッサの無謀なレベル上げの成果を確認するのだ。



――――――

名前 :クラリッサ

職業 :剣士

レベル:25

HP :215

MP :19

攻撃力:92

魔力 :15

防御力:60

敏捷性:101

――――――



 前に測ったときは21だったので、一気に4も上がった。

 クラリッサは大喜びだ。


 それから二人で大通りをぶらついた。

 家はまだ殺風景だ。なにか彩りを添えるものがあれば買いたい。

 あと小さなアクセサリーなども見逃せない。「こんなものに」と思うような品に加護枠があったりする。

 アオイは露店で小物を物色する。


「なぁに、アオイくん。もっと可愛くなりたいの? それとも私に買ってくれるとか?」


「はい。クラリッサさんのを選んでます」


「なっ! アオイくんが私に贈り物を……いや待て、落ち着け。この可愛い顔した朴念仁に期待しちゃいかん。きっとロマンスの欠片もない理由に違いない」


「なにをブツブツと……」


 クラリッサは難しい顔で自分の世界に入り込んでしまった。

 アオイはそれを放置してアクセサリー探しに集中する。


「ん? これは……凄いんじゃないか!?」



――――――

名前 :ガラス玉の指輪

説明 :鉄のリングに色ガラスをはめただけの安物。

加護枠:残り3

――――――



 加護枠が三つもある。

 アオイはゲームでもこの世界でも、二つまでしか見たことがない。

 一応、仕様上は三つのもあったらしい。が、何年もプレイしたのに、ついぞお目にかかれなかった。それだけドロップしにくいのである。


 もしゲームの露店だったら、とんでもない価格で出してもすぐ売れるだろう。

 なのに、この世界ではタダみたいな値札がつけられている。

 迷わず買う。


「指輪! アオイくん。男の子が女の子に指輪を贈るというのは……かなりの意味を持つのですよ!」


「ああ、求婚的な」


「知ってるんかい! 知ってるのに、そんな、あわわ……アオイくんが大胆……お姉ちゃんをからかう気だな!」


「違いますよ。求婚でもありませんけど。クラリッサさんが騒ぐから注目を集めちゃったな……移動しましょう」


 人気のない公園に引っ張っていく。


「人気のないところに連れ込まれた……な、なにをされるんだろう。ドキドキ……」


「前から思ってたんですけど、クラリッサさんってラブコメ好きなんですか?」


 そう尋ねてから、この世界にラブコメなんてジャンルの物語があるのかと思い直したが、


「ラブコメって、恋愛しつつドタバタ大騒ぎみたいな小説でしょ? あんまり好みじゃないなぁ」


 クラリッサは当然という顔で答えてきた。どうやらこの世界にもラブコメがあるらしい。


「その割にラブコメ的なものをボクに要求してくるような……」


「き、気のせい気のせい」


「そうですか。まあ、いいです。ボクもラブコメはあまり読まないので、誤解があったかもしれませんね。そんなのより……好きなパラメーターを伸ばせるとしたら、どれを伸ばしたいですか? 三つ選んでください」


「どゆこと?」


 アオイは加護枠の説明をする。


「ああ。私のユニコーンソードを強化してくれたアオイくんの能力の話か」


「はい。それでこの指輪はボクのスキルで強化するのに、もの凄く向いてるんです。三つ選べます」


「へえ! それを私にくれるの!?」


「はい。いつもお世話になってるお礼です」


「そんな。私のほうがお世話になってるのに……けれど、ここは素直にもらっておきましょう。お礼は戦闘中の働きでお返しする!」


「話が早くて助かります」


 そしてクラリッサはどのパラメーターがいいかなぁと悩む。

 頭を使うが、楽しい時間だ。


「よし。まずは攻撃力」


「剣士なら必須ですね」


「次は……敏捷性!」


「素早い動きで戦うクラリッサさんにピッタリです」


「その次も……敏捷性!」


「待ってください。HPか防御力に振るべきでは?」


「敵の攻撃を全て避ければ問題なし!」


「理屈ではそうですけど……」


「今までだって全部回避するつもりで戦ってたし。敏捷性が400も上がれば、私は無敵! のはずだ!」


 クラリッサの言葉に、アオイは悩む。

 速く動ければ回避率が上がるだろうし、殲滅力だって向上するだろう。

 アクションゲームであれば、プレイヤースキルが高い者向けのステ振りといえる。

 だが、ここは現実だ。ミスしたらロードしてやり直すというわけにはいかない。


 とはいえ、クラリッサが卓越した反射神経や剣技を有しているのは事実。

 敏捷性に振れば、あれがもっと強化されるわけだ。

 半端にHPや防御力を上げるより、生存確率が上がる気がする。

 本人が望んでいる。直感は大切だ。

 なにより、更に速くなったクラリッサの剣を見たい――アオイはそう思った。



――――――

名前 :ガラス玉の指輪

説明 :鉄のリングに色ガラスをはめただけの安物だが、アオイからクラリッサへの感謝の気持ちが込められている。

加護枠:攻撃力+200 敏捷性+200 敏捷性+200

――――――

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