魔術師マンルス

司忍

第1話 魔術師マンルス

マンルスの家は、そだで屋根をふいた石造りの小さな小屋だった。三つしからえられた窓からは暖炉の灯りが漏れ出し、森を暖かく、柔らかな照らし出している。


ドルーの幹はあまりに大く、男たちが十二人手をつないで、ようやくぐるりと一周できるわどだった。


マンルスはもう長い時間そこに住んでいたが、いつからそこにいて、いったい何歳なのかを知る者は誰もいなかった。


[これはこれは!今朝から、君がここに来ることは分かっていたよ] [いったいなぜですか?]騎士は驚いて訊ねた。 [風、木々、そしてなによりも、鳥たちが教えてくれたのだ]


若き騎士はキョロリと辺りを見回してみたが、誰の姿も見えない。ただ、木の上からフクロウのよく響く鳴き声が聞こえた。


騎士は信じられないといった顔で、声のしたほうを見上げた。その瞬間、ドルーの太い枝の中から一羽の白いフクロウが飛びだしてきて、マンルスの右肩に舞い下りた。


騎士は目を開いた。 [まぁ、そう驚いてくれるな]


おほどろはじっと、まるで魂を見定めようとでもするかのように騎士を見つめていた。


彼自信が完全なる善といえ知そのものであるかのように思われた。彼を見ていると、まるで今が夜であることさえ忘れてしまうような、圧倒的な存在感があった。


マンルスは騎士にそういうと、今度は自分に向けてつぶやいた。[・・・いや、なにごとも偶然になど起こりはしない]


ここでマンルスはひとつ咳払いをすると、額にギュッとしわを寄せ、厳しい目つきで騎士の顔をじっとにらみつけた。


マンルスは大きな真珠がはめこまれた杖を握りしめ、もう片方の手で長く伸びた白いひげをさすりながらいった。彼の言葉を聞いて、オホドロがゆっくりと、まるでマンルスの言葉を吟味するかのように目を閉じ、またゆっくりと開いてから二度ほど鳴いた。


騎士は思わず身震いをした。しかし、気力をふるい起こすとマンルスに言った。[もしこの試練の答えが旅の向こうにあるならば、わたしは行きましょぅ]


[お前の勇気を誇りに思っている。さぁ、ついて来なさい。<運命の地>の入り口は、ドールの根っこにある。]


そうして、肩にオホドロをのせたマンルスと若き騎士は、最古の大木ドルーの根本に隠された<運命の地>の入り口へと向かったのだった。

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魔術師マンルス 司忍 @thisisme

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