6月30日(木)

いよいよ今日で全ての決着がつく。彼女も僕も新興宗教やセミナーから逃れ、二人で幸せに暮らす。この三日間で何度も妄想してきたことだ。今はまだ僕のことがそんなに好きでなくても、救い出すことによって好感度が上がるに違いない。

セミナー会場に着く。彼女と目が合い、彼女が優しくこちらに微笑みかけてくれた。僕はその熱にほだされて彼女の元に駆け寄り叫ぶ。


「このセミナーは新興宗教が開いているものだ。こんなところに君がいるのは危ない。だから僕と一緒に暮らして、幸せになりませんか?」


何度も考えてきたこのセリフを、花束と共に捧げる。彼女の頬が赤く染まる。照れている姿も可愛いなと思った刹那、予想だにしない返答が返ってきた。


「はぁ?何を言っているの?新興宗教?そんなの知ってるわよ。でもね、私はあくまで運営側。あなたのような勘違い野郎から搾取さくしゅする側なの。それに何?『僕と一緒に暮らして、幸せになりませんか?』って、バカにしてるの?一回寝ただけでそこまで勘違いするとかほんとキモい。お金は納めてくれただけありがたいわ。わかったらさっさと帰って」


僕は花束をおとし、床に崩れ落ちる。

彼女が顔を赤らめたのは、怒りによるものだと数秒遅れて気がつく。


花びらとともに、僕の初恋は散っていった。

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