第34話 投稿作1
嬉しい誤算があった。
筆が未だかつてなく早い。
ネット小説から学んだことがある。
それは展開の速さと細かなプロット。
ネット小説は前にも言った通り一話が短い。
そして、その一話で読者を満足させなければならない。だから、その毎話ごとにプロットを立てなければならないのだ。
それはアイディアを次から次へと出さなければならない大変さを伴う反面、それさえ乗り越えてしまえば次から次へと執筆が進む速筆への道でもあった。というか、それをした結果、筆が早くなったのか。うん、卵が先か鶏が先か。
理由はさておき、こうなると十月まで待つのはもったいない。
ということで八月中旬のKODAIラノベ大賞の応募に切り替えた。
◇◇◇
異世界転生物って生まれ変わってから初めて読んだけど、凄く面白い。ワクワクするし、没入感が凄い。
主人公が読者に近いから感情移入しやすい。異世界に転生したらどうやって生活するか自分も考える。現在の知識を活かして活躍しやすい。
いろんな様子があると思うけど、要素がテンプレ化してるから再現度が高い。
ただ、それは同時に他の作品に埋没しやすいという側面と、自分の書きたいものじゃなくて既存のものをなぞるという側面も伴う。
『両立してください。二作目の読者のニーズを汲み取るプロの技巧と、一作目のHazuki先生ならではの感性を』
Akitoさんのアドバイスを思い出して、私は笑った。
そうだ。どちらかを選ぶ必要なんてない。両立すればいいんだ。
私ならどうだろう?
異世界に転生したらどう思うんだろう?
間違いなくワクワクする。期待に胸躍らせるだろう。
でも反面。きっと寂しいし、不安に思うだろう。
見知らぬ世界に見知らぬ人。知り合いが一人もいない。単純に一人で転生するのは心細いし、怖いなと思った。
だったら、どうしよう?
よし。物は試しだ。誰かと一緒に転生するものを書いてみよう。
となると一緒に転生するキャラクターが凄く重要で、それが誰かって話になるけど少女漫画的に考えればそれってやっぱりヒーローだよね!
異世界転生はそれを異世界先の住人に求めるけど、私は幼馴染に憧れがあったりする。多分、前世で読んだ少女漫画の影響。あと前世で幼馴染もいなければ、親戚も遠方で従兄とかもいなかったから、そういう昔から見知ってる仲のいい存在に憧れがあったのかもしれない。友達はそんないいもんじゃないよって言ってたけど、私は憧れてるんだ。
ということで、格好いい幼馴染君! 君をヒーロー兼パートナーに抜擢だ!
主人公は高校生。
家が近所で一緒に通学してる幼馴染も男の子がいる。
通学中に襲い来る異世界トラック! 幼馴染君が庇ってくれるけど、二人はあえなく異世界トラックの餌食に。
異世界転移で勇者と聖女になる二人。助け合い、冒険していく中で縮まる二人の距離。そして現世では近すぎて超えられなかった幼馴染という壁を、二人はついに越えていく! ああ、なんて素敵なロマンス!
止まらない妄想……もとい執筆。
気付けば朝チュン。ああ、幼馴染と朝チュンしたい人生だった。
そんなこんなな朝ごはん。
「葉月。あなた最近ちゃんと寝てる」
お母さんの声に半分寝てる頭を上げる。
「うん。だいじょーぶ、だいじょーV」
ヴィクトリー、と私はピースサイン。
そんな私の反応にママンとパパンは顔を見合わせる。
「……どこのオッサンからそんなの覚えた」
パパンの発言に衝撃を受けた。そっか、これオッサンの反応ですか、そうでしたか。
「じゃなくて、本当に大丈夫なの?」
お母さんが仕切り直す。
「うん。寝てるから本当に大丈夫」
主に授業中に。
「ならいいけど、無理はするなよ」
お父さんがどこか呆れたように、あるいは諦めたように苦笑していた。
うん、ありがとう。優しい両親をもって私は幸せです。
オッサン発言は許さないけどね、パパン!
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