overdose.

月見トモ

第1話 幽霊

 いつの間に、君は”幽霊”を卒業したんだ。

 薄暗い地下ハウスで、キラキラなメイクを施し、白花のワンピースを着た彼女の姿を見て、僕は思った。目の前で輝く彼女の姿に群衆が歓喜し、緑のペンライトを振る。その騒音に、僕は思わず耳を塞ぎたくなった。

 ガラス玉の様な瞳と、品のある顔。その癖、肩で切られた髪の毛はあらゆる方向に伸びていて、いつも誰かの背後に隠れるように立っている。それが高校時代、”幽霊”と呼ばれた彼女の姿だった。決して明るい子とは言えなかったけれど、僕だけに見せるくしゃっとした笑顔とか、安心する様な声色が僕は好きだった。高校時代、僕らは親友であり、お互いを信用しきった恋仲だった。

 だから今、彼女が目の前のステージで踊り、笑顔を振り撒くのは、とても現実のものとは思えなくて、僕は悲しみに打ちひしがれた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る