ミナと松野くん

那智

ミナ視点の朝

 あたしはミナ。少し前に好きになった松野くんと付き合えることになって、今日は初めてのデート! もう楽しみ過ぎて眠れなかった。

 起きたのは7時。自室から一階のリビングに降りる。お父さんとお母さんはすでに起きていた。

「おはよー」

「おはようミナ。朝ご飯、パンとスープだけどいい?」

「うん!」

「父さんコーヒー淹れるけど飲むか?」

「のむー」

 弟のミオは、朝練でもうすでに家を出たらしい。朝ご飯を食べながら、うきうきが隠しきれなくて、お母さんがにこにこしながらあたしのことを見ている。

「……どうしたんだミナ? なんだかうれしそうだな」

 お父さんが怪訝そうな顔でこちらを見る。実は、お母さんには松野くんのことを話しているんだけど、お父さんには言っていない。なんだか恥ずかしいし。お父さん、心配しちゃうかも、なんて。

「ミナは今日、友達と遊びにいくのよね?」

「え!? う、うん! またマナミと街にいくんだよ、ねー」

「……そうか。気をつけていくんだよ」

 お父さんはあまり気にせず、置いていた新聞を手に取った。まだお父さんには、言わなくていいよね……?

 両親とゆっくり話したりテレビを見ているうちに、いつの間にか8時を過ぎていた。あわてて歯磨きをして、身だしなみを整え、自室で服を選ぶ。うーん、昨日のうちにコーデを決めてたけど、少しかわいすぎかなぁ……ちょっと大人びたパンツにする? でもせっかくの初デートだからお気に入りのスカート履きたいし…。子どもっぽいって思われちゃうかなぁ……。

 いつの間にか、朝のファッションショーが始まってしまい、気付いたら9時を過ぎてしまっていた。集合は10時だから、そろそろキリをつけなくては。結局、昨日に決めたコーデのままで行くことにした。

 松野くんは少し同級生よりも背が高いし、顔も大人びている。かわいく決めすぎた気はするけど…あたしは背が低いし、大人っぽい服を着ても、なんだかちんちくりんになるし、いいよね。

「ミナ、いってらっしゃーい。もし遅くなるなら連絡だけはちょうだいね」

「はーい。じゃあいってきまーす!」


 朝10時。駅前のベンチで待ち合わせ。なんとかぎりぎり間に合った。

 駅を降りると、もう松野くんはすでに着いていた。待たせてごめん、と謝りにいかなきゃいけないけど、遠目で見る松野くんもかっこいいなぁ、と見惚れてしまっていた。かっこいい……。

 はっ、として駆寄る。近づくと彼も気付いていたみたいで、手を振ってくれた。

「おはよう! ごめん待たせて!」

「おはようミナさん。俺もさっきついたとこだから大丈夫」

「そっかーよかった。……へへ」

「? どうしたの?」

「松野くんの私服、はじめてみた。かっこいいな……へへ」

 彼はおしゃれなTシャツに薄いカーディガンを羽織っていて、パンツもきれいなベージュのものだった。シルエットもすらっとしており、高身長なのが相まって大人っぽく見える。恥ずかしいけれど、あたしと同い年には見えないぐらいだった。大学生と言っても通用しそう。

「……ありがと。それじゃいこうか」

「うん! 松野くんはどこに行きたいとかある?」

「ミナさんはどう?」

「えーっとあたしはー、市の動物園が近くにあるからいいかなーって。でもあっこの映画館で映画みてもいいし、気になるカフェもいっぱいあるんだよねー」

「動物園だったらここから近いし、先にそこいこうか? それから時間見ながら、次いきたいところ考えよう」

「おっけー!」

 あたしはとにかく、松野くんのとなりを歩いてることがうれしくって、舞い上がっていた。

 今日一日、本当にたのしみ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る