世直し姫の冒険〜プリンセスオブジャスティス〜
トガクシ シノブ
世直し1〜正義の世直し仮面その名も…〜
「きゃあああ!いや、助けてパパ!ママ〜〜〜!!」
少女の悲鳴が町に響きわたる。
「へへへ、恨むならおまえのパパとママを恨むんだな」
人相の悪い男たちが少女と両親を引き離そうとしていた。
少女の父親は黙ってうつむきながら目を瞑り、拳をギュッと握り締めている。そして少女の母親は目に涙を浮かべながらずっと少女の名前を叫んでいた。
「可愛いそうに。もうあの子の人生はお終いだな…」
「ゴスワルド一味に目をつけられたらおしまいだよ…」
「チクショー、あいつらまた好き勝手しやがって!」
「アイツらのせいで俺たちの暮らしは無茶苦茶だ」
「この世の正義は、もう死んでしまったのか…」
町の人々は口々にそう言っていた。
「まあ仕方ないよな〜。そうだろアルベルト?おまえさんのバカな弟が、俺たちに金を返さずに自殺しちまうもんだからよ〜。ホントはな、こっちだってこんな手荒なことはしたくないのよ。まあでも文句があるってならよ〜、いつでも言ってくれていいんだぜぇ?」
すると黙っていた少女の父親が、ボスの男の前に歩みより懇願する。
「弟を騙して多額の借金をさせたのは、お前たちだろうッ!弟のアルベールの遺言書にすべて書いてあったぞぉ!…借金は必ず俺がなんとかする!だからお願いだ…娘は、娘のアナスタシアだけは……ッ!俺はどうなっても構わない!頼むこの通りだぁ…!!」
「んー、そうだなぁ~。じゃあこの場でオレ様の足でも舐めてもらおうかな〜?できるだろアルベルト〜。愛する娘のためにならな!ギャハハハ!!」
「アナタ…」
「ああ、大丈夫だよナターシャ。…舐めるとも!だから頼む…アナスタシアにだけは……!もう乱暴な真似はやめてくれッ!!」
そう言い少女の父アルベルトは要求どおり、ボスの男の靴を舐めようとする。すると突然、ボスの男はアルベルトの顔面を勢いよく蹴りあげた。
「きゃぁあああ!アナタ〜〜〜!!」
「パパーーーーー!いやあああああ!!お願いします、パパに乱暴はしないでください!…なんでも、なんでも言うことを聞きますから、だからもうやめて〜〜〜〜〜!!!」
「ぐうううっ…どうか娘だけは……」
「いや〜スカあッとしたぜぇ〜!…さて、そろそろずらかるぞ!しっかしこの娘、…かなりの上玉だなぁ!コイツは高く売れるぞ!こりゃアニキも大喜びだぜ〜、ん〜アニキに献上する前に、このオレ様が内緒で『味見』してやっても……」
とその時である!空を切り一枚のカードがボスの男の手に突き刺さる。
「ぎゃああああああああッ!イテ〜〜〜〜〜!!なんだぁ!?なんだこのカードはあっ!!!」
部下の男たちが慌ててボスの男の元に駆け寄ると、その手には「M」のイニシャルの書かれた一枚のカードが刺さっていた。そして次の瞬間、今度はカードが爆発し、男たちは大パニックになる。
「おい!娘がいないぞ!どこだ、どこにいったあっ!?探せ、探せぇ〜〜〜!!」
「ハハハハハ!ハーッハハハハハハハハハハハハハハハ!!」突然周囲に響きわたる笑い声。
「だ、誰だぁ!」
男たちは周囲を警戒し辺りを見回す。
「娘さんは安全なところに避難させてもらったよ!」
「どこだ!どこから声がするう!!」
「いたぞ!あそこだ!教会の屋根の上を見ろ!おのれ〜何者だ貴様!え〜い、名を名乗れ!!」
「悪党どもに名乗る名前は、生憎持ち合わせていないんだけどね。でも特別に教えてやろう!悪しき者には正義の刃を!正しき者には愛のくちづけを!人呼んで正義の使者、世直し仮面マモリーナ・エクスタシールド見ざぁん!!」
「同じく世直しナイト1号参上!」
「おっと、世直しナイト2号もよろしくな!!」
そこには仮面を付け帽子を被ったマント姿の少女と2人の男が立っていた。
「なにィ!?世直し仮面だと?…まさか今巷で騒がれているあの「正義の義賊」を自称しているいけすかないヤツか!!」
「キミたちの悪事もここまでだ!痛い目にあいたくなかったら、黙ってこの町を去ることだね!!」
「う、うるせえ!世直し仮面がなんだ!こっちは手下が13人もいるんだぜぇ!おう、やっちまえ!!」
「…やれやれ、そんじゃちょっと懲らしめてやりますか!1号、2号、準備はオーケイ?」
「マモリーナ様、この世直しナイト1号、いつでもいけます…」
「おう!任しときな姫さ…マモリーナさんよ。この世直しナイト2号様が、悪党どもをギッタンギッタンのメッタンメッタンにしてやるからなぁ~ッ!」
「…ふふ、今日も頼りしてるよ。さあイッツショータイムだあッ!!」
そう世直し仮面が叫ぶと3人は教会から勢いよく飛び降りる。そして散開しそれぞれ戦闘を開始する。
「野郎ぶっ殺してやるぅぅぅッ!!」
男3人が勢いよく1号に斬りかかる。
「ふむ、ずいぶんと大振りな攻撃ですね。そんな攻撃、避けるまでもありませんよ」
1号は剣ですべての攻撃を軽々と受け流すと鋭い斬撃を連続で繰り出す。
凄まじい斬撃音とともに、男たちは地面に次々と倒れる。
「テメー!よくも仲間を!」
続けて2人の男が襲いかかる。
「こんな悪党たちにも仲間を思いやる気持ちがあるとはな…ならばこの正義の一撃をもってして、私がアナタたちを改心させ、正しき道へと誘って差し上げましょう!」
1号は男たちの攻撃を捌くと、少し間合いをとり剣を天高く掲げる。すると刃に魔力をどんどん蓄積されていき、魔力を纏ったその刃は勢いよく伸びると天高くそびえ立つ。
「な、なんだよ、アレ…」
男たちはその眼前の圧倒的な力を前にして凍りついた。
「さあ、覚悟はいいですか…?」
「う、うわあああああああああっ!!!」
男たちの断末魔が辺りにこだまする。
「唸れ!ガーディアンズソード!!」
〈ズガーーーン!〉
凄まじい轟音とともに振り下ろされたその一撃は、男たちを激しく吹き飛ばした。
「ううう、なんだか心のモヤモヤが晴れてスッキリしました…。ありがとうございま……」(ガクッ)
「も、もう二度と悪いことはしません…改心いたしました……ゆるし…て」(ガクッ)
改心した男2人は仲良く気絶した。
「これからは人々を苦しめるのではなく、人々から感謝されるような生き方をしなさい。…この私(正義)がある限り、この世に悪は栄えない…成敗!」
「おうおう、1号のヤツ、今日も張り切ってんじゃないの〜。よっしゃ!この俺も負けてらんねーぜ!!」
そう言うと2号は斬りかかって1人の男を掴み、勢いよく壁めがけて投げつける。
〈ドガーーーン!〉
男は物凄い音とともに壁に激突すると、そのまま気絶した。
「野郎…こうなったら一斉に仕掛けるぜ!いくぞーーーーー!!」
1人の男の号令のもと、5人の男たちが一斉に2号に襲いかかる。
〈ガキン!ガキーン!〉
辺りに鋭い金属音が響きわたると同時に、5本の剣の刃が2号を捉える。
「や、やったかぁ!?」
しかしその直後、男たちは絶望する。たしかにそれぞれ剣の一本一本の刃が、2号を確実に捉えている…が!なんと彼の体から血が噴き出すことはなく、それどころか傷ひとつついていなかったのだ!!
「おうおう、その程度かい?そんじゃ…」
そう言うと2号は体に力を込める。すると次の瞬間、男たちの剣の刃が粉々に砕け散ってしまった…。
「バ、バケモノだぁああああああああっ!!!」
「んだよ〜、バケモノなんて失礼なこと言ってくれちゃってさ。さてと…お仕置きの時間だな……」
「た、助けてくれ〜〜〜〜〜!!!」
「ん〜、ダーメ♡」
2号は背中の大剣を抜刀し大きく振りかぶる。
「ちょっ、待っ……」
「みんな仲良く吹き飛びなぁッ!崩荒爆烈怒(ほうこうばくれつど)!!」
〈トゴオォオオオオン!!!〉
凄まじいパワーの剣撃から放たれたその衝撃波は、男たちを容赦なく飲み込むと遥か遠くへと吹き飛ばしてしまった…。
「へへへ、まっ、こんなもんか~…」
「1号も2号もホンットに仕事が早いな~!よしボクだって!そりゃ!はあっ!いやああああッ!!」
「ちょこまかしやがって!こっちの攻撃が全然当たらない、ぐあっ!!」
「コイツ女の癖に手強い…ぎゃあああっ!」
マモリーナは2人の男を素早い動きと鋭い剣術で撃退する。
「さて、残りはキミだけだよ!さあ観念するんだ!!」
「おのれー、コイツをくらえ!」
ボスの男は懐に隠していた魔光銃「スコアガ(スフィアコネクトアームガン)」を取り出すと、マモリーナに向かって発砲する。
「くぅっ!?」
マモリーナは咄嗟に体を反らしてかわすも、魔光銃の光線が頬をかすめる。そして頬から血が流れる。
「なっ!?姫さまぁ!」
「おいおい、マジかよ…」
「動くんじゃねえ!おかしなマネしてみろ〜。少しでも妙な動きをした瞬間、コイツでズドンだ!この銃はな~、どんな防御魔術でも簡単に貫ぬけるほどの威力をもった、すんげーシロモノだぜぇ!ははは、ヒヒ、ぎゃあはははッ!形勢逆転だなおいっ!まずテメーらを殺す!!そしたら今度は、この町の人間達もだぁああああッ!!皆殺し、皆殺しにしてやるぅううッ!!!」
「…ボクとしたことが油断したよ…ガーディ、リガード、ごめんなさい……」
とその時でする!
「うおーーーーーーッ!ワール・ゴスワルドォオオオオオオッ!!」
一瞬の隙をつき、アルベルトがボスの男こと、ワール•ゴスワルドに対し渾身の鉄拳をお見舞いする。
「うぎゃああああああああッ!ぐふうっ!お、おのれ~アルベルトォ〜〜〜ッ!!」
ワールは激しく吹き飛び教会の壁に激突する。しかしフラフラになりながらも、再び立ち上がると銃口をアルベルトに向ける。
「こ、殺してや…」
「おじさんナイスゥ!…あとは任せて。さあ悪党、懺悔の時間だよ!!」
マモリーナは魔法で自分のスピードを加速させると、ワールとの距離を一気に詰める。
「なあっ!?は、はや……」
「とあぁぁぁぁぁッ!必殺ジャスティス•サインッ!!」
〈シャキィイイインッ!!〉
マモリーナは目にも止まらぬ速さでワールをMの字に斬りつける。
「がはぁッ…!このオレ様が……バカな、そ、そんなことありえね~…ごふっ!!」
ワールはそう言い残し気絶した。
「この世の正義はボクと共にあるのさ!…皆さんお怪我はありませんか?悪党たちは我々が成敗いたしました!だからもう安心してください!!」
すると辺りで歓声が湧き起こる。
「ありがとうお嬢ちゃんたち!」
「わ〜〜〜ありがとう!是非お礼をさせてください!!」
「ありがとう!本当にありがとう!!」
「きゃあああ!マモリーナさま、ステキ〜〜〜!!」
マモリーナは歓声に答えるように、投げキッスをする。
「正義のくちづけ!ジャスティス・キッス!!」
「は、はううううっ!マモリーナさま……ステキでしゅ~♡」(ガクッ)
投げキッスの直撃を受けた若い娘たちの数人が、頬を赤らめながら気絶した。
「じゃあ皆さん!ピンチになった時は、遠慮なくボクの名を叫んでください。正義の名のもとに、必ず参上いたします!それではさらばぁぁぁッ!!」
そう言い残すと世直し仮面と二人のナイトたちは姿を消してしまった…。
「世直し仮面マモリーナ•エクスタシールド…。一体何者なんだろうか?…いや、正体なんてどうでも良い話か、彼女によって俺たち家族だけでなく、町の人々全員が救われたのだ。これからは、これからはもっと俺も家族のために頑張らないとな……ありがとう世直し仮面」
アルベルトは謎の仮面のヒーローたちに感謝すると同時に、愛する家族を守るため、自分も今まで以上に強く生きていくことを改めて誓うのであった…。
「ふう〜、今日もいい仕事をしたわね!ニ人ともお疲れ様ぁ!!」
マモリーナは1号と2号にそう言うと仮面を外した。すると仮面の下から可愛いらしい少女の顔が出てきた。
「姫さま!もう私はとてもヒヤヒヤしましたよ!!アルベルトさんの勇気ある行動がなければどうなっていたことか…。いくら戦闘前に、身体強化魔術や防御魔術がかけてあるとはいえ、くれぐれも無茶だけはしないでください!もし姫さまの身に何かあったら私は、私は……」
1号はそう言いながら仮面を外すと、仮面の下から顔立ちの整った若い青年の顔が出てきた。
「うふふ、相変わらず『しんぱいしょー』だな。ダイジョーブ!なんたってワタシには、こんなにも頼れる強くてカッコいいナイト様が二人も付いているだもん!だからこれからもずぅぅぅっと守って……ねっ!ガーディ♪」
「はあ〜やれやれ…はい!このガーディ•アンスロット、マモリア姫さまの守る剣として、また盾として、これからも日々精進させていただきたいと思います!でも姫さまも、その、もう少しですね……」
「おいおい、ガーディ!もうその辺にしときな〜。戦闘ってのはな、いつ何が起こるかわからねぇ〜もんなんだからよお!まあ大丈夫だって!!俺たちの姫さんはどんな困難も、『熱い正義の魂』と『生まれもったその強運』で粉砕しちまうさ!!」
そう言いながら2号は仮面を外すと、仮面の下から大きな傷のある男の顔が出てくる。
「リガードの言う通りだよガーディ!ワタシには、必ず勝利の女神さまが微笑むのよ!!…とりあえずこのワールとかいう悪党を最寄りの騎士団に引き渡しましょ!」
「そうですね。この男には然るべき罰が下るでしょう!…そういえばこの男には、兄がいるみたいですが…。知らべたところ、『ズール』という名前だそうです。なんでも弟以上の悪党のようで、この男のせいで人生を壊された人たちも多いとか…。もしこのままこの危険な男を野放しにしてしまったら、またいずれあの町の人々に危害を加えるのではないでしょうか?」
「…おいおいガーディ。そんなこと当たり前だろ?…ならわかるだろ?『俺たちの姫さん』が何をしようとしているか、がなぁっ!!」
「…そうですね!ならこの男を引き渡してから、早速準備をしましょうか!!」
「ガーディ、リガード、ほんとうにいつもありがとう…。……うんっ!悪者はみんな叩きつぶしてあげましょう!愛のため、正義のため、そしてこの世に生きるすべての人たちの笑顔を守るため!!世直し仮面マモリーナ•エクスタシールドとして、ワタシ、これからも頑張るわぁっ!!!」
「へへっ、どこまでもオトモしますぜぇ~姫さん」
「このガーディ•アンスロット、たとえこの体が砕けようとも、全力でマモリア姫さまをお守りいたします!!」
「じゃあ今日も『いつものやつ』いくわよみんな!せ〜の!!」
『ジ〜ャスティィィス・ビクトリ〜〜〜〜〜!!!』
愛のため、正義のため、そして悪に苦しむ人々の幸せのため。世直し姫とその仲間たちの冒険はこれからも続く…。(つづく)
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