春のトンネル
詩季
第1話ベール
13:17
ジジジジジジ ジジジジジジ
煌煌と照らす太陽、耳障りな音で鳴く時計、遠くから聞こえる電車の音、散らばった本、弦が切れたギター。
いつからこんなふうになったのだろう、そんなことを考えることから逃げ1日、また1日が過ぎてゆく。
久しぶりに外で散歩でもしよう。珍しく、外に出る決心のついた僕は着替えることにした。引きこもりの服なんて寝巻きと大差無いのだが。
「寒っ」
外に出た瞬間思わずそう声が出た。もう3月の上旬だと言うのにまだこんなにも寒いのか。
子供の頃はもう少し暖かかった様な気がするのだが。これが俗に言う環境問題、というやつなのか。
手を繋いで歩くカップル、肩車されている小さい子供、孫と一緒に歩く老夫婦、ベビーカーを押す女性、2人乗りしている高校生。
僕にはあまりに眩しすぎる、帰ろうかな、そんなことを思っているとポケットのスマホが鳴った。
「もしもし」
「みんな!湊やっと出た!練習こないの?」
「行かないよ」
「みんな待ってる!」
「嬉しいけど、もう僕はいいかな。」
「ちょ、え?いいかなってな
ツー ツー
取り敢えず今日は帰ろう。妙な吐き気を抑えながら僕は家路へついた。
真っ先に目に入ってきたギターに不快感を覚えながらその日は休んだ。
「お前はそんな馬鹿みたいな夢だけを追って、現実をみろ!お前の成績ならニ橋大学だって夢じゃない!」
うるさいうるさいうるさいうるさい
「湊、よく考え直して、、?ね?お母さんも応援するから進学して」
うるさいうるさいうるさい
「僕の人生だ、僕は上京してギターをする。
手助けなんていらない、責任は自分で取る」
夢、か
その日はその後嫌に寝れなかった。
春のトンネル 詩季 @yuheiiii
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