快晴
ぬくずなつろう
第1話 2人占め
「梅雨が明けるまであとどれくらいだろうね。今日は梅雨中だけど、空は快晴。いや、機械観測になったから快晴は観測できないんだっけな?まあいいや、今年も行こうか。」
サントリーニ島の梅雨は日本とは違って一週間程度で終わる。
僕らが同居しているサントリーニ島のイアの街は、茶色の崖に白い色をした家と青色のドームが密集している。まるで雪が被っているようだ。
今日が梅雨が始まって6日目なので、あと数日で梅雨が終わるだろう
雨が嫌いな君は梅雨が終わることを楽しみにしていた。
早朝の4時。まだ少し外は暗い。薄明るいと言うのだろうか?
早起きが得意な君は、少し早い僕ら二人だけの夏を迎えに行こうと急かした。
急かされながら僕は支度をし、玄関の戸を開ける。彼女は机の引き出しになにかを仕込み、玄関を出る。一体なにを仕込んだのだろうか?家に帰ったら確認してみることにする。今日の最高気温最低気温は27℃、雨が降っていたからだろうか。いつもより少し気温が低い。
花壇に植えた紫陽花は火山灰土壌を使用している為、青色をしていた。
「今日は少し寒いねぇ...これだから雨は嫌いなんだ」
口を少し尖らせて君は言った。
苦笑しながら僕は言う
「相変わらず君は雨が嫌いなんだね」
僕のレスポンスに対して君は梅雨について愚痴をこぼす。
「夏場の雨なんて最悪じゃないか、雨が降った後はちょっと寒くなるけど薄手の長袖を着るほどの寒さじゃないけど、かと言って半袖じゃ物足りない、中途半端なんだよね」
ちょっとムカッとしている君も僕は愛おしかった。
「まあまあ。もう少しで終わるだろうから我慢しなよ。それよりさ、いつもの場所。何処だっけ?道覚えるの、苦手なんだよね」
やれやれという顔をして君は僕の手首を掴み引っ張る
「しょうがないな。ちゃんと君も道を覚えてね。今回ばかりは特別に私が連れて行ってあげよう」
今回ばかりというかいつもなんですが、と思ったのは口に出さずに素直にお礼を言っておく。
「誠にありがとうございます。」
一応僕らはカップルである。付き合い始めて五年の月日が経つ。
億劫な僕はなかなかプロポーズが出来ずにいる。
一度日和り散らかしていることを謝ったが、彼女曰く、プロポーズはしなくていい。との事。何故なのだろうか?
「こっち。」
「次はこっち」
君に補導されたまま路地を抜け、坂を超え、虹をも超える。
まるでこれじゃ僕が子供みたいじゃないか。
君が歩みを止めた先は、僕が一番強く記憶に残っている場所だった。
僕らが初めて出会った教会前の広場。
教会前の広場には、円状の白い屋根付きのベンチがあった。
君は先に座り、座りなよ。と言うかのようにベンチを手でペシペシした。
可愛いな。と思いつつも僕は彼女の隣に座る。
「周り、誰もいないね?」
彼女はそう言い、続けて言葉を放つ。
「今だけこの空、私たち二人だけのものだね。いつか、私たちだけの空が来るといいね。」
不意に僕はドキッとした。言葉選びが巧みすぎる。そう言うところに僕は惚れたんだが。顔が熱くなっていくのがわかる。
「ヘヘ、ドキッとしちゃったのかなあ?きみはあ?」
ニヤっとしながら彼女は言った。
「は?全くしてないですが?なに言ってるんだか」
彼女に向かって僕は言う。もちろん照れ隠しだ。
「正直に白状しちゃいなよ〜彼女が可愛すぎて照れちゃう♡って」
「はいはい可愛い可愛い」
本心で言っていることを悟られるのが怖い(絶対イジられる)ので
よくある煽りの定型文で返す。
「ふん。よろしい」
少し嬉しそうに、少し悲しそうな表情をしていた。
少しの沈黙が続き彼女が切り出した
「私ね、もう... くないんだ」
「んえ?なんて?」
教会の方が起きてきたようで朝一の鐘を鳴らしたため全く聞き取れなかった。
「ううん。なんでもない。とりあえず今日、帰ったら君の机の中に手紙入れといたから読んでほしいな。」
彼女は笑顔でそう言った。正直聞き取れなかった部分が気になって仕方がない。
「わかった。見てみるよ」
「うん。ありがとう。私は用事があるから先に帰ってて。」
僕は彼女と通った道を頑張って思い出しながら家に帰った。
作者から
orangestar様の楽曲。「快晴」をモチーフとした2次創作のようなものです。
めっちゃいい曲だから是非聴いて欲しい
快晴 ぬくずなつろう @natukun
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