幾星霜

母のスキル

魔界で力（スキル）が覚醒した、ボク。

それが何なのかは、大きな声では言えないけれど。

驚くことに、

母にも能力（スキル）があったとは！

それを知ったのは、

母と魔王と、ピクニックに出かけた時だ。

お花畑へピクニック。

お弁当持ってピクニック。

そんな

はたから見たら親子水入らずな状況で。

父である魔王が、やらかした。

浮かれ過ぎていたんだね、きっと。

そうしたら、

母が、魔王のケガを癒（いや）していたのさ。

動転する魔王の部下達、魔王が外出するとなるとお付きの者も必須なんだって。

魔王に何かあってはいけないと、あわてる部下達に優しく声を掛け、

魔王をいさめ、

キズを癒した。

見事だった。

その手腕。我が母ながら、あっぱれ！　とは、魔王の台詞（せりふ）からもらった言葉。

魔王は、「我が妻ならば、あっぱれ！」と言ったんだったけ。

とにかく、

ものすごく、ほめていたんだ、母のこと。

ほめていた、というより、のろけていたって感じかな。

母と魔王、すごく仲が良いみたい。

それにしても、

魔界（こっち）の世界の者でもないのに、

能力（スキル）をもってる母って、すごい。

……この時のボクは、単純に、すごいとしか思わなかった。