第2話 邪神の血をひく癒し手の人

シャルは、不思議な手を持っていた。白く長い指を持つ手は、頼りなげであるが、傷や疲れた身体を癒す力があった。気付いたのは、やはり、一番の線お会いであった。

「何を隠しているの?」

シャルが隠れて子猫の世話をしているのを、見つけた。カラスに突かれた目が痛々しく、もう、その目は、二度と開かないだろうと誰もが思っていた。

「大丈夫。大丈夫」

シャルは、呪文の様に唱え、子猫の手当てをしていた。来る日も、来る日も。気が付くと、子猫の目は、開き、いつの間にか、外で遊びまわる様になっていた。

「もしかして・・・」

先輩達が連れていったのは、負傷した若い兵の元だった。傷口は、広がり、ただれ、腐り始めている。半ば、自暴破棄する若い兵の傷の処置をシャルに任せた。幼いシャルは、来る日も、来る日も、若い兵の傷の処置を行い、いつの間にか、傷は、綺麗に治っていた。

「不思議な事があるものね」

だが、その後、シャルは、何日も眠り続けてしまった。力が、尽きてしまったのだろうか。先輩は、シャルの身体を考え、あまり、無理をさせないように、他の修道女に他言しないように口を止めた。

「もしかして・・・」

先輩は、考えた。シャルの胸にある小さな星型の痣を。祝福を受けた子なのか、癒しの手を持つ奇跡の子なのか。若い兵は、元気になり、また、召集され、戦地へと赴いていった。元気になった子猫は、修道院を離れ、仲間の所へと去っていった。そして、最後に、亡くなっていった。また、過酷な運命が待っており、両方とも、結局、命を亡くしていった。若い兵は、怪我をしていれば、生き続ける事ができたかもしれないし、子猫は、片目でも、修道院の中で、生きる事ができたかもしれない。シャルの癒し手は、本当に、奇跡の力なのか。

「あの子の親は、邪神なのよ」

心無い噂が立った事があった。明らかに、シャルへの嫉妬だった。美しく成長したシャルは、癒しの手を使う事はせず、負傷兵の治療を手伝っていた。

 ある強い雨の降る日だった。雨が、入り込まないように、裏戸を閉めにいったシャルh、人影に気が付き、声をあげそうになったが、大きな人影に、

「騒ぐな」

口を押さえられてしまった。

「怖がっているよ。兄さん。やめて」

怪我をしている兄を気遣い弟が、声を上げた。みると、薄汚れボロを纏った兄弟を思しき2人が、やっと立っているのが目に入った。

「何も、言わないから」

シャルは、手で伝えて、2人の顔をよく見ようとした。

「あまり、見るな!」

手で、顔を隠そうとする兄。弟は、今にも、倒れそうで、同じく怪我をしていた。

「ここなら、大丈夫。助けてくれるから」

そう聞くと、弟は、安心したのか、気を失ってしまった。

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