幸せ溢れるみんなの空を

アルタイル

神殺し衆

ー極東の島国・倭の国ー

十、二十人の大名が集合し、ある建物の中で会議が行われていた。議題は、宣教師クラウスを中心としている異郷集団パライソが生み出したタタリ神「十二聖者」についてである。「十二聖者」は棄て去られた古代の神、ヒルコの魂の欠片の遺骸を埋め込まれた人工的な偽りの神だ。

「十二聖者の進行は治まらないか?」

「そうだな。最近はタタリ神による被害が絶えない。もう以前話していた方法で食い止めるしかないのではないか?」

「じゃあ、前回提案された意見で賛成の者は挙手をしろ。」

スッと大名全員の手が挙がる。

「決定だな。全員手が挙がったから、これから十二聖者討伐、そして、ヒルコの遺骸を収集する「神殺し衆」の組織を正式に承諾する。」

こうして、「神殺し衆」の組織結成が行われた。


朱霊村しゅれいむら

華やかな屋台が並び楽しむ人々。その中にある少女がいた。

「う~ん。美味しい~!美味しいよお婆ちゃん。もう一個もらえる?」

「よく食べるね。いいよ。ちょっと待っていて。」

「ありがとう。ん~。やっぱり美味しいな。」

箸を片手に焼きそばをカプッと美味しそうに食べている。少女の名前はヤクモ。神殺し衆の戦士として組織で育てられたのだ。ヤクモは組織の任務のため、色々な場所へ旅をしていた。

「焼きそばできたよ。出来立てだから美味しいと思うよ。」

「ありがとう。それじゃあ、いただきます。」

ヤクモはそう言うと、お婆さんが持ってきた焼きそばをあっという間に食べてしまった。

「ご馳走さまでした。」

「はい、お粗末様。美味しそうに食べてくれて嬉しいよ。」

「本当に美味しいですから。じゃあね、お婆ちゃん。」

ヤクモはお婆さんに手を振り歩いていった。

「お祭りはやっぱり楽しいな。美味しいものが食べられるし。みんなも楽しそうだし。あっ、あんなところに美味しそうな屋台がある。」

ヤクモは屋台でりんご飴とチョコバナナを買ってまた歩いていく。頭のお面を揺らし、お祭りを楽しんでいた。周りにはたくさんの幸せがヤクモには見えていた。楽しそうな家族、友達と遊ぶ姿。全てが輝いていた。


お祭りも終わり、屋台が少しずつ下りていった。ヤクモは泊まっている宿屋へ向かった。部屋に入り、ヤクモは机の上にお面を置いた。

「楽しいことはあっという間に過ぎてっちゃうな。」

楽しいことは永遠には続かない。ヤクモ自信が一番よく分かっていた。しかし、ヤクモに寂しさと悲しさが襲う。机の前にしゃがんだ時、あることに気がついた。

「あれっ?そういえばヒルコの欠片がない。どこかで落としてきちゃったかな?お祭りの間はあったと思うけど…。」

ヤクモは必死に記憶を遡った。一つだけ可能性のある場所を思い出した。山の山頂だ。最後に祭りの全体の風景を見たいと、村の近くの山へ登ったのだ。ヤクモは急いで山の山頂に向かった。


山頂についた。周りを探していると、薄っすら輝くものが見えた。探していたヒルコの欠片だ。

「良かった。これからは気を付けなきゃ。」

そう自分に反省し、ヤクモは村へ戻るため山を下ろうとしていた。突然村から大きな音と振動が響いた。同時に村が赤く輝き始めた。

「もしかして…。」

ヤクモは急いで村に向かおうとした。山を降りるとき、村が見えた。ヤクモの目に写ったのは、村が火の海によって飲み込まれているところだった。

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