第6話 3人の影
どこかから貰って来たのか、派手な色調の縦ストライプの、目の痛くなる様なデスクトップの下部に、アプリなどのアイコンが並んでいる。数少ないフォルダや書類は右側に行儀良く置かれていた。
「あらぁ、真夏ったら、そんなサイトに出入りしてるの〜?」
「たまぁにね。それよりも、っと」
茉夏はワイヤレスのマウスを操作し、検索窓にカーソルを合わせると、そこにリズミカルに「
一般に
茉夏が左クリックで1番目のページを表示する。するとやはりそれは掲示板のスレッドだった。茉夏はいくつかページを戻り、親記事を表示させる。タイトルは「
「うわ、本名がタイトルになってるて、相当恨み買ってんやな、こいつ」
「こんなとこに書かれるぐらいやから、褒められてるっちゅうことは無いやね。えーっと」
茉夏がゆっくとページをスクロールして行く。春眞たちは記事を追って行った。
タイトル:楠画廊の田渕浩志
投稿者 :
大阪にある楠画廊の田渕浩志という男は、デート商法をしています。
私も
本当に腹が立ちます。仕返ししてやりたい。
レス1・投稿者:匿名
騙される方が悪いって。ウケる。
レス2・投稿者:匿名
男に飢えてるんだろ草
レス3・投稿者:匿名
大草原
レス4・投稿者:匿名
私も絵を買わされました。
仕返しするなら私も乗りたい。
レス5・投稿者:匿名
女こえー
俺も気をつけよ
レス6・投稿者:匿名
オメーなんかに女寄ってこねーよ草
レス7・投稿者:匿名
その男知ってる。
最近声を掛けられた。
1回だけお茶した。
もう会うの止める。
レス8・投稿者:匿名
被害に
私も買わされた。
それから連絡が取れなくなった。
デート商法だったって気付いて凄い腹立った。
私も仕返ししてやりたい!
スレ主さん、4さん、どうですか?
レス9:投稿者:匿名
うは やる気だ
レス10・投稿者:スレ主
是非やりたいです。
相談はチャットで。
パスはメッセで送ります。
4さん来られるのならレスください。
レス11・投稿者:4
4です。
私も話聞きたいので、パスください。
よろしくお願いします。
レス12・投稿者:匿名
うわ、田渕っての死んだって?
こわw
スレ主なんかした?
「……3人、女性よね〜? これってあれやんね? うちに3日連続で来てたって人数とも合うわねぇ〜」
「田渕に騙し取られた女性って、この3人だけなんかな」
「判らへん」
春眞の独り言の様な疑問に
「うちって女性客が多いから、騙そうとする女性連れて来るんにちょうど良かったんかな。腹立つな! 女性騙すんにうちを使うなんて!」
茉夏が
「よし、とりあえずこの3人の女性の身元を洗おう。サイバー隊に同期がおるから、朝いちにこっそり頼んでみるわ」
サイバーセキュリティ対策課は、冬暉と夕子が勤める警察署にも設置されている。
「ほなこのページのアドレス、夕子さんのチャットアプリに送ったらええ?」
言いながら茉夏はアプリを立ち上げる。夕子とのトーク画面に移り、ブラウザから長ったらしいアドレスをコピーして、メッセージ欄に貼り付け、エンターキィを押した。
「うん、ありがと」
夕子がソファに置いてあるバッグからスマートフォンを取り出すのとほぼ同時に、何かの着信を知らせるバイブレーションが働いた。恐らく送ったばかりの茉夏からの掲示板アドレスだろう。
夕子は早速開いて、スマートフォンを慣れた様子で操作した。
「うん、オッケー」
夕子は頷くと、スマートフォンをブラックアウトさせてバッグに放り込んだ。
「身元が判ったら、話訊きに行ってみるわ」
「何か判ったら教えてね!」
茉夏が楽しそうな表情で言うと、夕子はにっこりと笑って「うん」と頷いた。
「あ、そろそろニュースやっとるかも」
春眞がテーブルに置いてあったテレビのリモコンを手にし、電源を入れ、チャンネルをローカルニュースを放送しているはずの局に合わせた。
ダークスーツをきっちりと着込んだ男性アナウンサが、地域の行事や事件を簡潔に読み上げて行き、春眞たちのお目当てのニュースは数分後に訪れた。
「……と見ています。では次のニュースです。昨日朝、大阪市東住吉区の長居公園で発見された男性の遺体の身元が判明しました。名前は田渕浩志、24歳。警察では自殺と断定しています。次のニュースです。今朝……」
ニュースを見て、冬暉と夕子は大きな溜め息を吐いた。
「あーあ、報道までされてもたし……」
「しゃあ無いね。でも私らはやれる事をやらんと。放っておかれへん」
「っすね」
冬暉は決意を固める様に頷いた。
「大丈夫やで、ユキちゃん夕子さん、ここまで判ったんやから、あと少しやわ!」
「うん、やとええな」
夕子は微笑を浮かべる。茉夏の言葉は楽観的であったが、確かにその方が良い事は事実なのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます