花が咲くまで初見月。
惟風
デス・フラワー
綾音
久しぶりに踏み入った裏山は、昔と変わらず私を受け入れてくれた。
冬の終わりの寒々とした日差しが木々の間から降り注ぎ、子供の頃に鬼ごっこや隠れんぼをした思い出が風と共に私の隣を抜けていった。
カサついた葉がいくつも舞っている。
疎らに散った落ち葉が足元で乾いた音を立てた。
ザクザクと踏みしめながら、私は真っ直ぐに頂上を目指した。
山といっても、大人が軽装で数十分で登れるほどの小山だ。
この島に一つしかない小学校では、遠足の定番コースだった。
頂上は公園になっており、大型遊具やバーベキュー場、広場が備えられている。
春から秋にかけては観光客や地元民で賑わうその場所は、今はどこかくすんでいて、寂寞としている。
私はただ無言で、広場の端にある木にロープをかけた。
輪を作り、頭を通す。
「さよなら」
薄れゆく意識の中で最後に目にしたのは、足下で白く咲いている名も知らぬ小さな花だった。
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