第542話 2016/08/16 ㈮ お盆の残響
1章
お盆明けの午前、夏の名残が空気に漂う。私はスーパーマーケットに向かっていた。買い物リストには、冷蔵庫の中身を充実させるための食材がずらりと並ぶ。買い物を急いで済ませる必要があった。二時までに宅配を頼み、昼過ぎから会社に行く予定だったからだ。会社に行く時間が近づくにつれ、心の中でイライラが募っていく。パソコンの前でじっとしていると、不安と焦燥感が混ざり合って、心の中がぐちゃぐちゃになっていく。マネージャーや同僚たちの会話が耳に入っても、面白さを感じる余裕はない。まるで心にフィルターがかかっているかのようだった。
2章
仕事が終わると、私はまたスーパーに向かった。今度は自分のためのご褒美だ。アイスキャンディをいくつか手に取り、家路を急ぐ。家に着くと、母が待っていた。彼女は私のアイスキャンディへの執着に気づいており、「一日一本にしなさい」と忠告してくる。だが、そんな忠告は無視する。今日はもう四本も食べているのだ。まるで自分の意思を示すかのように、「ざまあみろ」と心の中で呟く。
3章
夜の九時ごろ、眠気が襲ってきた。私は薬を飲んで、すぐに布団に入った。目を覚ましたのは午前一時半。真夜中の静けさの中、父の独り言が聞こえてきた。父は最近、悟りを開きたいと言い出して、小乗仏教の本を読み漁っている。彼は、「すべてのものはブツブツでできている」と言う。私はそれに対して、「でも、腕を切ったら痛いよね」と問いかける。父はしばらく黙り込んだ後、深く考え込んでいた。
4章
私はキッチンに向かい、父の日に贈ったシーバス・リーガルのボトルを手に取った。グラスに少しだけ注ぎ、ゆっくりと味わう。アルコールの香りが鼻腔をくすぐり、心がほっと和らいだ。今日はこれで終わりにしようと思った。日々の喧騒から一歩離れ、自分自身と向き合う時間が必要なのかもしれない。そう思いながら、再び布団に戻り、静かな夜の中に身を委ねた。
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