第30話 寝たら真実が現れました
「なっ! ラスティ!? 一体どうやって……」
「だから、幻術だって幻術。まったく、顔と身体にしか興味がなくて知らなかったんだろうけど。それも残念、アタシの顔と身体と、心はネズ隊長のものなのー★」
……うん、そうだな。もう覚悟はしてるよ。
ただ、言葉に出されると色んな意味でクるものがあるなあ。
「くっ、ラスティ……君も僕の邪魔をするのか!」
「当たり前じゃん♪ ネズ隊長はアタシのものなんだから」
ニュアンスが変わってきたぞ。
「ふざけるなぁああ!!!」
「あ~ら、怒った? でも、アンタみたいな雑魚がいくら怒っても怖かないわ」
ラスティは挑発するようにナルシィを馬鹿にする。
だが、それも作戦。
ラスティの使う幻術は相手の心が乱れれば乱れる程効果がある。
アイツの煽情的な恰好もその為らしい。
幻術なしで昔すごく迫られた記憶があるけど、あれは関係ないらしい。
挑発に苛立ったナルシィは顔を真っ赤にして怒り狂う。
さっきまでの余裕のある態度は消え失せた。
「な、何故だ!? 確かに、今のネズは悔しいが、それなりの見た目だ! だが、それでも僕の方が」
「本気で言ってる? アタシがネズ隊長を好きになったのは、強さとか外見とかじゃない。ネズ隊長の心に惹かれたの。ネズ隊長は強くて優しくてカッコよくて、ちょっとエッチで可愛いところもあって……。とにかく、もうネズ隊長以外考えられないの」
「ラスティ……」
「だから、ネズ隊長が困ってたら助けるのは当然だし、ネズ隊長が幸せになるためなら何でもしてあげる。それがアタシの愛なの」
そう言ってラスティは俺の幻を作り出し、うっとり見つめ始める。
俺の幻がすっげー気障な顔でラスティの頬に手を当てている。それはマジで勘弁してほしい。
「色々言いたいことはあるが。おい! ナルシィ、もう無理だろ。降参しろ」
俺はナルシィに向き直り、剣を構える。
「僕はナルシィ・ライアレットだぞ! 王国の七光の一人だ! そんな僕が降参なんてかっこわるい真似許されるわけがないだろう!」
ナルシィもまた、俺をキッと睨み返す。
「知らねーよ。お前のプライドの話なんて死ぬほどどうでもいいわ。あと、俺もう王国関係ねーからお前の立場とか本気でどうでもいいから」
「そ、そんな……」
「まあ、ただこれは俺の後片付けだ。お前ら王国の人間に目を覚まさせてもらわないとな。民がかわいそうだろ」
「……」
ナルシィは黙り込む。痛いところ突かれたって顔だな。やっぱりこいつも……。
「お前も上辺だけに惑わされんな、目を覚ませ」
「う、うわああああああ!!」
「! ち! ラスティ離れろ! 暴走してる!」
ナルシィの足元から黒い魔法陣が現れ、ナルシィの全身を包み込み、黒い球体となる。
そして、その球は爆発したように弾け飛ぶ。
その衝撃で吹き飛ばされそうになり、咄嵯にラスティを抱き寄せて守る。
ラスティは驚き、とろけたような表情をしてるが無視する。
「あ、ありがとうございます……」
「礼はいい! まだ終わってねえぞ!」
ラスティから離れ、警戒態勢に入る。
すると、目の前には黒い髪の朴訥そうな青年が立っていた。
目は虚ろ、口元からは唾液が流れ出ている。
まるで正気ではない。
「ナルシィ……なんですか?」
「ああ、あれが本当のヤツの姿だよ。色んな魔法で飾り立ててたみたいだが、精神的に追い詰められたのと、戦闘全振りにした結果、元の姿に戻ったみたいだ」
「ああああああ!!!」
叫び声を上げながら、俺に向かって拳を振るってくるのを受け止める。
いいパンチだ。思わずにやけてしまう。
「くっ……くはははは! そうだな! お前はそうなんだよ! お前が七光最強だろうが! ナルシィよ! なりふり構わずかかってこい! その上で俺はお前をぶっとばす! 全力でぶっとばす! お前より上だって分からせるためにぶっとばす!」
「なんで、三回言うんだよぉおおお!」
ナルシィが黒い魔力を放ちながら、咆哮する。
「大事なことは三度言えって教えてやっただろうがあ!」
俺は、『教え子』であるナルシィに向かって叫び返し、大きく手を広げた。
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