寝たら解決しました!~国を追放された『不眠将軍』ですがちゃんと寝たらちゃんと働けました。元居た国が戻って来いとか寝言言ってるけどもう遅いので寝ます~(熟睡編)
第25話 寝たら口が回るようになりました
第25話 寝たら口が回るようになりました
「ネズ様、私も……」
といいながら俺を抱きしめて離れてくれないのはクレア。
元盗賊のアジトに向かうとすっかり戦いは終わったようで、戻って宴をしているキンたち。
隙あらば、俺にキスを求めてくるクレアはうっとりとした表情を浮かべている。
「おい、止めろって……本当にシスターじゃないってことを実感してるわ」
「ふふっ……ネズ様、私の神はネズ様です……なので、ついていく事をお許し……」
「ダメだ」
俺はクレアの言葉を遮る。
「な、何故ですか!?」
「まず、次の相手がとんでもなく強い。お前を守りながら戦える自信がない」
いつもならスロウが提案しない限り突っ込んでいきあたりばったりなんだが、流石に頭が働きすぎると、なんとアホな戦い方だったんだろうと反省。
俺の状態が今何割くらいなのかは分からないが、油断して女傷つけるなんて自分が許せない。
「だから、待っててほしい。それに、昨日の戦闘で傷ついた奴や、掴まっていた奴らの治療も頼みたい」
シューセンドは結局やられたらしい。キン達貧民街の数が多かったことも理由の一つだが、メジマソクがシューセンドと対立したらしい。アイツの悪事が明らかになり、メジマソクは怒って拘束し、後任には正しい管理をさせることを約束し帰って行ったそうだ。相変わらずのくそ真面目。
そして、シューセンドがこきつかっていた人々が見つかり、今、街では回復魔法の使い手が必要とされていた。
「でも……」
「俺は、必ずお前を連れて行く。だからよ、頼む。これでも俺はお前を信用してるし、お前に頼りたいんだ……」
そう言うと、クレアは顔を輝かせ始める。
「も、もう! ネズ様ったらそう言えば女が折れると思って……わ、わかりました。一生懸命皆様の為に頑張りますので、必ず私も連れて行って下さいね」
クレアに見送られながら、俺とエンは娯楽の街、アルトを目指す。
「何か言いたそうだな、エン」
「ネズ様、そんなに口が回る人だっけ?」
じとーっと見るエンがそう言ってくるが、結局これもちゃんと寝て頭が働いてるからだろう。
「まあ、前は、『うるせえ、眠い』しか言ってなかったからな」
「あの女、誑かして……」
エンの視線が怖い。突き刺さっているような気がする。
「誑かしてるつもりはねえよ。ただ、好きだと言ってくれるイイ女には俺も出来る限り応えたいってだけだよ……お前も含めてな、エン」
俺がそういうとエンは長い前髪で顔を隠してぶつぶつ言い始める。
「そういうのがズルい……けど、悪くない、ふひ……」
ずっとなんか言ってるエンを連れながら次の街へと向かう。
道中、魔物に襲われたりしたんだが、
「邪魔」
エンが魔法を放つとあっさり倒してしまった。元々強かったが一撃で倒すとは……。
「やっぱり強いな」
「ネズ様のお陰で、強くなったんですよ」
エンはそう言って微笑む。隈が薄くなったエンの顔には生気がみなぎっていた。
それに、やっぱり俺と寝ることで色んな力が増しているらしい。
俺自身もどんどん力が増している気がする。やっぱりこの力は……。
「でも、あまり無理はするなよ」
「大丈夫です。怪我をしても、ネズ様が治してくれるでしょう?」
「まあ、そうだが……」
「なら問題ありません。ひひ、むしろ治してもらいたい」
エンはまたにやりと笑う。
そう、俺はクレアの身体を重ねたことで回復魔法を覚えていた。
誰とでも寝ればこうなるわけではなさそうだが、このまま俺が寝続けたら、どこまでいってしまうんだろうか……。
そんな事を考えてると、エンに声を掛けられる。
「ネズ様、着きましたよ」
娯楽の街、アルト。歌と踊りと劇の盛んな街らしく街は活気に溢れている様子だ。
そして、顔の良いのが揃っている気がする。
俺みたいなのが珍しいのかジロジロ見られている。
「そんなに不細工が珍しいかよ」
「いや、というより、むしろ……」
エンが何か言いかけたので、そっちに向くとエンは俯いてごにょごにょ言ってる。
聞こえねえ……。
「エン、俺はラスティを探すから、お前も街の中で情報取集を」
「えっ……一緒に居たいです。寂しいよぉ……。一人にしないでぇ……」
エンがへばりついてきた。めんどくせえ。
身体重ねたせいかお願いがどんどんひどくなってねえか。
「分かった! じゃあ、探してくれ。そしたら、お前の傍にいるから!」
「はい!」
エンは笑顔で、闇魔法を展開する。ゴーストを呼び出し、命令する。
「ラスティっていう色ボケババア、私の思念で確認して。そして、探してきて」
ゴーストが散っていく。見つかるまでは、どうするかな。寝るかなー。
「見つけました」
「はええな!」
エンは得意げな顔をしている。やっぱり魔法のレベルが上がったせいだろうか。これだけ広くてにぎわっている街の中でこんな短時間で見つけるとは。
「案内します」
エンは歩き出す。そして、すぐに止まった。
一軒の店の前。看板には『渡り鳥の水飲み場』と書かれている。
「ここですね」
「間違いなさそうだな。声が聞こえるわ」
ドアを開けると、そこは酒場で派手な酒盛りが行われていた。
その中心にいたのは桃色髪の豊満な身体の美女。ラスティだ。
「もうやけ酒よ~! 隊長のばか! アタシを置いて死んでいくなんて!」
こいつ、掴まってたんじゃねえのか?
黒蝙蝠の中でも派手で五月蠅い賑やかな女、ラスティが酒に呑まれて泣いていた。
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