第13話 寝たら技術を手に入れました
スロウの言う通り、三姉妹は確かに美しいし、よかった。
何がとは言わないがよかった。
しかし、俺の体力は一度限界を迎えた。
特に長女のマリーはスタミナが尋常ではなく、俺が何度攻めたててもまだ元気いっぱいだったのだ。
流石ドワーフ。底なしの体力。
一先ず、全速力で全員を満足させ死んだように眠ると、昼になっていた。
「隊長、お疲れ様」
「ああ、うん……」
マリー三姉妹は満足そうにキャッキャはしゃいでる。昼飯も用意してくれたらしい。
お肌もツヤツヤだ。
俺はベッドに寝転がりながら天井を見つめていた。
体力は戻ってる。だけど、なんだろう……この切なさは……。
「じゃあ、行きましょうか。ブタカに」
「ああ、うん……」
コイツ絶対許さねえ。
俺はスロウを睨むがスロウは知らん顔。
ガナイは同情の目を向けてくる。しかし、仮面の女二人が距離をとりながら俺を見る目が冷たいんだが。
俺のせいじゃねえだろ! 大体、スロウが面倒見れば良かったんじゃねえの?
「僕、体力ないですし~。彼女達は強い者の種が欲しいので。ま、隊長は覚えてないでしょうけど、ブタカで武器製作を強要されていたドワーフ含めた鍛冶職人の集団に彼女達もいたんですよ」
「心読むなよ。……ああ、眠いでしょうから適当に暴れるだけでいいって言われたあの時か」
前にブタカに来た時に無理やり武器を作らされてる集団がいてそれを救ったらしい。その時も眠すぎて記憶がない。
「まあ、きっちり隊長はみんな救ってましたけどね」
と言われても、悪そうなヤツ殴って、良いヤツっぽいのは避けた。それだけだった。
あとは、みんながうまくやってくれると思って。
「ま、というわけで彼女達は隊長に抱かれたがっていたわけです」
「まあ、向こうがそれでいいならいいさ。じゃあ、行くか」
「はいはい。ああ、隊長、これ隊長用の剣です」
ショートソードか。中々いい剣だ。
そういや今の相棒はかなりボロボロだった。
一振りして、音の鋭さに笑いがこみあげてくるほどに、軽い。いい剣だ。
「彼女達が、助けられた時に見た隊長を想いながら作っていた至高の一品です。彼女達、それを最後に生活道具しか作ってないんで貴重ですよ~」
「いい剣だ。綺麗だな」
「も~、隊長は、そう言って、また誑かして~」
誑かしてない。
ないから、マリーよ。もう一回戦? みたいな目で見てこないでくれ。
「それより、どうです~? 昨日の移動中に話していたアレは?」
「ああ、やっぱり、お前の推測通りみたいだわ」
ブタカから此処に来るまでの途中で、スロウには俺の睡眠の話をしておいた。
その話をガナイに背負われながら聞いていたスロウは、またニコニコ思考に入り、こう言った。
『寝る、という行為や言葉自体に加護が掛けられてるんじゃないですかね~。隊長、多分、ライカさんやイリアさんの魔法使えるんじゃないです~、ちょっと視たところ、そんな感じなんですが』
そう、そこで俺は気づいた。ライカ達のスキルが使えるようになっているのだ。
とはいえ、使いこなせてないので、練習が必要だが。
普通に睡眠として寝るだけでなく、そっち関係の寝るにも加護が掛かっていたらしい。
ちなみに、マリー三姉妹と寝た事で、【鍛冶術】【料理】【武器の心得】なんて技能を手に入れていた。
「いやあ、それにしても、隊長が与えられたこの力すごいですねえ! 黒蝙蝠全員が恩恵を受けているのか、それとも何かしらの信頼関係なのか。ガナイさんもすっきりしてるって言ってましたから、恐らく意識の問題でしょうけど、あんな短時間でこれだけ体力と魔力、それに心が癒されるとは」
「……神の加護だと思うか?」
「う~ん、恐らく。いやはや、参りましたね、あれが神だったとは」
俺は神など信じていない。
だが、あの時、あいつが俺の前で言った事が本当であれば……。
まあいいか。
俺は過去を振り払うように頭を振る。
今は、隊員たちの事だ。それ以外は今の所どうでもいい。
短い時間で沢山寝れるのならラッキーだし。
「じゃあ、行くか」
「な、なあ本当にこの性欲モンスターに任せて大丈夫なのか?」
遠くからミア? メア? どっちかが声をかけてくる。
性欲モンスターにされた。心外だ。俺は必要に応じてしかやってない。
「人間性はともかく、能力的に大丈夫であることを分かっているのは貴方達帝国側では?ねえ、ガナイさん」
おい、味方。
「ええ。大丈夫ですよ。彼ら『黒蝙蝠』ほど手厚く敵を、我々帝国兵を葬ってくれた者達はいません。その隊長であるあの男は、十分に信頼に値する人物です」
「わかった……だけど、絶対に必要以上に私達に近寄るなよ」
俺は素直に頷く。そもそも、俺も求められなければ寝たりしない。
普通に寝たい。なんだろうか、十分睡眠とれ始めたはずなんだが、まだまだ寝たいと思い始めている。
「じゃあ、スロウ、アレやるか。どうせお前の事だ。向こうには準備してんだろ」
「勿論。楽ですから」
俺とスロウは向かい合って陣を組む。これは、あまりにも難しく俺とスロウの頭が万全の状態でなければ出来ないとっておきだ。
「こ、これは……転移の魔法!? そんな古代魔法まで……」
発動と操作はスロウ、俺はただの魔力タンクだ。とはいえ、最近はずっとほぼ空だったからやるのは久しぶりだ。これ、楽なんだけどなあ。だが、眠すぎて使う余裕がなかった。
「じゃあ、行こうぜ!ブタカの中まで」
そして、光に包まれ、俺達はブタカの中に潜入成功する。だが……
「おい、敵が待ち構えているなんて聞いてねえぞ」
目の前には最近主戦力として投入された王国の最新兵器、魔導機兵が並んでいた。
「はっはっは、壮観壮観。これ全部使えるようになったら楽ですかね~」
「寝言言ってんじゃねーぞ。やれやれ、まあ、眠気覚ましには丁度いいか」
俺は、一歩前に出て、魔導機兵と睨み合った。
でも、便利だよな。寝なくていいんだもんな。
そんな事を考えていたら、魔導機兵が一斉に襲い掛かってきた。
「よっしゃああ! 寝て元気だからな! てめーらに勝てる要素はねーぞ!」
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