第3話 寝たから色々理解しました
次に目が覚めた時は、一人だった。
どうやら王都の、俺たち【黒蝙蝠】の部屋らしい。
男三人の部屋で久しぶりに見たが相変わらず汚い。
「……ベッドかてえ」
「起きて第一声が、それかよ、大将」
首をゆっくりと左に動かすと青紫髪の男が呆れたように笑っている。
「グリ……おはよう」
「随分と寝坊しやがったな、大将」
「何日寝てた?」
「一週間、だ」
「マジかよ。まだそんだけ?」
「大将、いつから寝てなかったんだよ」
「一か月」
「言えよ」
「『いや、俺全然寝てないわー力でないわー』ってか、ダサいだろ?」
「……アンタらしいよ」
青紫髪のグリはニヤリと笑うと立ち上がる。そして、部屋を出ようとする。
「大将……もう、大丈夫だよな」
「ああ、寝たからな」
「手短に言う。アイツ等それぞれ純潔以外の七光に連れていかれた。迎えに行ってやってくれ。できるよな?」
「ああ、寝たからな。お前は?」
「オレは、グラのところに行く。あんなでも妹だからな、大将も来てくれよ」
「ああ、寝たからな」
「足音……純潔とあのバカ王子だな。オレは窓から行くぜ。大将はあの二人如きどうとでもなるか」
「ああ、寝たからな」
グリは笑うと身体をしならせて窓から飛び出していく。
「さて……大分頭もスッキリしてきたし、お話ししますか」
そして、ノックも何もなく王子がズカズカと入り込んでくる。ノックもなく入り込んでおきながら臭そうに顔を顰め鼻をつまむ。
隣には、『純潔』。そして、その背後には十数人の兵だ。
純潔が前に出る。そして、鋭い目つきのまま口を開く。
「ネズ……ようやく目を覚ましたようですね。よいですか」
「ああ、寝たからな」
眉を少しだけ、純潔はピクリと動かすが、口は開かず、後ろに道を譲り頭を下げる。
そして、鼻になんか詰めてる豚が前に出てきて腹立つ顔で俺を指さした。
いや、これ人か。
「『黒蝙蝠』隊長、ネズよ! お前をこの国から追放する!」
目の前の小太りのくるくる金髪男が叫んだ。
ああ、違う。この国の第一王子、ユーダケデス王子だ。
めちゃくちゃ愉快そうな目でこっちを見ている。
そのニヤケ面王子の、隣にいる純潔が睨みながら前へと進む。
「ネズ、貴方の罪状は理解していますね。仲間殺しをしたのです」
殺してはないらしいけどな。
「今まで、貴方のその凶悪顔に違わぬ、ある時は短絡的に、ある時は傍若無人に、ある時は怒りのままに、とにかく好き勝手暴れる貴方たちの尻拭いを私たちがやってきました!」
そうかなあ。
「しかし! 魔人討伐という大作戦の栄えある一番槍を任されたにも関わらず、魔人は逃がし、その上、仲間殺しという大罪。最早庇いきれるものではなありません」
物は言い様だし、逃がしたかったわけじゃないし、仲間殺してないし、庇ってもらった覚えないし。
「地位は勿論はく奪。貴方の財産等は全て没収させてもらいます。そして、三日以内に国を出なさい! 以上!」
おいおい、ここから三日で国を出るって馬でもギリだ。っていうか、俺財産ないから徒歩なんですけど。いや、しかし、でも……。
「ぶひゃひゃひゃ! みじめだなあ! ネズ! どうだ! 今の気分はどうだ!?」
「やっ……」
「んんんん~? なんだ、声がちいさいぞぉお~?」
「やっ……たああああああ! これで思いっきり寝られるぅううううう!!!!!」
俺は歓喜した。
ようやく、ようやく俺は眠ることが出来るんだ!
ん? 純血が目を見開いてる。驚く事か?
思い切り寝られるんだぞ? 最高じゃねえか。
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